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61 篠崎ユリアの出来心

5/6 結構ばっさり切りました。(それでも長い)

その時、わたしは退屈していた。

そう、とても退屈していたのだ。


(そうだ、こっそり()の中に入ってみよう)


それはふとした悪戯心だった。

単調な授業に退屈し、ちょっとだけ気になるあの人の中身をのぞいてみたくなったのだ。


(ちょっと、彼に悪い気もするけど……)


わたしはこんな能力を持っているが故に、結構プライパシーには気を使う方だ。

普段、あまり理由なく人の中に入ったりはしない。


結局、テレパシーを使っている時に私は嘘はつけないのだ。人の心をのぞくとバレてしまうので気まずくて、普通はできない。


でも彼なら………


(でも……彼には色々みられちゃったもんね……ちょっとぐらい、仕返ししたっていいじゃない?)


私はとても軽い気持ちだったのだ。

ちょっと散歩に行ってくるぞ、ぐらいの。


(ふへへ、なあに。ちょっと観光して帰ってくるだけだから)


(対校戦のあれ、すごかったもんね)

(彼のあの能力の中身……イメージってどんなになってるのか)

(すごく気になるじゃない?)

(そう、ちょっと見るだけ……ちょっとだけだから)


そうして、わたしは彼の中にこっそりと侵入することにして…………


(今日は、体調いいし、上手くできる気がするな)


深く、彼の奥へと潜って行った。


……………………

……………

………

……


…よし……入った。


おーけー、侵入成功。

さあて、お宅拝見っと……


……お?


あったあった、早速見つけた。

これが…彼の異能(ちから)の壁ね。

彼の不思議能力の源泉。


…………うわあ、やっぱり大きいなぁ。

それに密度って言うのかな?…濃い。真っ黒。

外側からじゃぜんぜん奥が見えないよ。


…どれどれ……?

ちょっと中身を見せてもらおうかな…

………ちょっとだけ、ちょっとだけね?


…よし、この壁を抜けて………………

………………


……よっと……


……

………

……………

……………………



……………えっ???


……なに……? この変な空間は…


これは……何??? なんなの??

………おかしい。こんなのは、絶対におかしい。

ここにこんなものがあること自体が……

………とても不自然。ありえない。


これはいくらなんでも巨大すぎる。

これは………一つの宇宙?世界???

ちがう、よく分からないけど…

でも、それぐらい、大きいものに思える。

決して人の中に入っていていいような大きさ(ボリューム)じゃない。


なんで?

なんでこんなところにこんなものがあるの?

芹澤くんの精神(こころ)の奥に広がっているのは……とても巨きな名伏しがたい、何か。


満天の星の浮かぶ空よりも、その奥に広がる暗黒の宇宙よりも深く昏く感じられ…………奥底が全く見えない異様な空間。


……ここはとても冷たい。とても寒い。

あたりに漂うのは……感情の渦?

そこにあるのは……


…身を千回引き裂いても余りあるような…深い絶望。

…孤独という言葉で言い表せないような、無限の孤立。

底なしの奈落に…吐き気を催すような…昏い恐怖。

一瞬でも触れたら、心がはじけてしまいそうな……

張り詰め切った………悲痛の嵐。


それを取り巻くようにして生み出された………

極限まで凝縮された…怒り。憎しみ。

害意に満ちた、殺意と怨念の渦。


そして、眺めるだけで身を焼くような………深い悲しみ。失望の慟哭。

………果てしなく膨大で…………複雑な感情の渦(イメージ)がその世界を満たしていた。


………なんなの……これは一体……なんなの??


これが彼のあの異能の源泉なの??? なんで???

こんなものを内に抱えて、彼は……一体どうやって平気でいられるの?

普通、こんなものを抱えていたら……どんな人間だって……どんなに強い人間だって……精神(こころ)がすぐに喰われ(こわれ)てしまう。


これは………こんなものは、人間が触れていいもの(イメージ)じゃない。

はやく、逃げなきゃ……

離れないと……私まで、きっと………


……………………て…………

……か………………   


……………え?

………なに?


…………………………やめて……

…け………て…


…わたしの中に…入って……来……


…え……て……

………


…来な……い…で

……  


…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………見…………

………………………………………………………………………………………………………………………………

………………………………け……………………………

…………………………………………た……………………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………

………………………………………………………………

…………………………………や……………

……………………………………………………………………………

…………………………見…………………………

……………………………………………………………………………………………………………………

……………け…………

………………………………………………

……………………………た…………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

……………

…………

………………………………………………………………………

……………………こ………………………………

…………………

………こ…

……………………………

………………………………………………………………………

……………………………厭…………

………………………………………………………………………………………………………………

…………ク…………………

…………………………………………

……………………………………ロ……………………………

……………………………………………………………………………………

……………ニ………

……………

………イ…………

………………………………………………………………………

…………………………………………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

………………………………

………だ……………………………………

………………………………………………………………か………

………………………………………………………………………………………………………

…………………こ………

……………………………………………

……………か……………………………………………………………………………

…………

………………………………………

…………………………………ら……………………………………………

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

………………て………………

………………

…………………………………………………………………

………………………………

……………………………………………………

…………………………………………………………

………………………………………

…………………



わたしを通過したイメージの、片鱗。


わたしの精神を壊さんばかりに無理やり入り込んで来たその思念(おもい)は…


…………「 だれか 私を助けて 」…………


そう言っているようにも感じられ…………

……………………

…………


私の意識はそのまま昏い感情の渦に呑み込まれていったのだった。




◇◇◇




 保健室にはメリア先生は不在だった。

 「隣の校長室にいます。御用あればすぐ呼んでください」と書き置きが置いてある。


 私はひとまず本宮先生の手を借りて、保健室のベッドに気を失った篠崎さんを横たえる。世界史の授業中に急に倒れたという篠崎さんはいくら呼びかけても返事がない。呼吸はあるが、単に寝ているわけではないのは明白だ。

 本宮先生は篠崎さんの頭に手を当て、彼の異能で彼女の状態を読み取っている。


「どうです?本宮先生。」

「どうも何も……ひどいことになってますよ〜?? 彼女、『過異能(エクストラ)』化してます」

「それは一体……どういう状況ですか……!?」

「どうもこうも、このままではさっさと異形化してしまいますね〜。それぐらい、と〜ってもまずい状態に見えますけど?」

「なぜ彼女が!?学校の教室の中で?」


「どっかの誰かの異能野でも覗いちゃったんでしょうかね? そんなことしたら、普通の異能帯域(レコードレンジ)の人間じゃ、あっという間に記載過多(オーバーライト)ですよ。変なとこ上書きされてなきゃいいですけど」


「レコードレンジ?オーバーライト?」

「おおっと!!!チハヤ先生、ご興味おありですか!? この先の情報は………知人サービス価格でお買い得。5000億円になりますが……どうします?」


「払えるわけないでしょう!冗談言ってないで、彼女を治療しましょう」

「やれやれ……僕はこれでも真面目にやってるんですよ? あ、はいはい、喜んでやりますよ〜?………もらえるもん、もらえたらね」

「本当に、あなたって人は………」

「では、請求は後でメリア先生に回すことにして……彼女に侵入した異能情報をすべて、破棄させてもらいます。もう時間ないですからね。ちょっとぐらいゴミは残るかもしれませんけど、それは彼女の自己責任ということで……」


「お願いします。私はメリア先生を呼んできますから」

「それ、絶対に売れないと思いますが……」


「その時は、墓の中まで持ってくさ」


///


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