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56 裏山の雷神様

5/3 人物ファイル「轟ゴウキ」をあとがきに追記しました。

 のじゃロリ狐に案内された神社の前で、俺は狐につままれたような心持ちで突っ立っていた。


 あれは……なんだったんだ?

 俺はあの子のことをコスプレに情熱を注ぎ過ぎてしまったちょっと頭の痛い子だとばかり思っていたのだが……今、なんか狐の姿になって……森の中に入って行ったような………


 俺の見間違いか?

 そうだよな?

 第一、深い山の中でのじゃロリ狐に出会うとか、そこからしてあまりに荒唐無稽だ。

 ……そもそもが夢だったのか?

 狐に化かされたって奴………???


 そんな風に俺が自分の目で見たことを疑っていると……後ろの方から聞き覚えのある声がした。


「せ、芹澤くんっ?」


 声がした方を振り向くと、そこには俺の方に向かって走ってくる霧島さんがいた。俺からも彼女に向かって歩いて行き、声を掛ける。


「よかった、先についてたか。ごめんな、はぐれちゃって…」

「ううん、私の方こそごめんなさい。私、全然、廻りを見てなくって……!」


 彼女は肩で息をしながら、謝罪の言葉を口にする。


「……本当にごめんなさい……私が、案内役だったはずなのに。置いて行ってしまうなんて……」


 彼女はうつむきながら、さらに謝ってくる。


 ずっと走っていたのだろうか?

 彼女は顎から汗が滴り落ちるぐらい、汗だくになっている。

 はぐれてたのはほんの30分程度だろう。

 もしかして、結構早くに俺がいないことに気がついて探してくれていたのだろうか?


 まあ、俺自身は別にそれほど困ったわけじゃない。

 霧島さんが無事目的地に着いてるかが心配だっただけで。

 まあ、このクソ高いバッテリーのことはあったけど、こんなもん一年生に担がせてる学校が悪いわけで。

 つまり誰が悪いかというと……あのクソゴリラ(校長)が悪いのだ。まあ、結局そういうことだな。


「全然いいって。俺が遅かっただけだし。で、目的の発電施設ってどこにあるんだ?まだもうちょっと歩くのか?」


 本当に俺はなんとも思っていないので、さっさと次の話題に行く。


「……うん。ここからすぐ近くだから。ついてきて」


 なんだか……

 ちょっとさっきより話しやすくなってる気がする。

 あの選択肢の正解はさておき、とりあえず、俺たちの距離は少し縮まったらしい。それだけで遭難した甲斐があると言うものだ。




 ◇◇◇




「着いたわね。ここよ」


 そうして、俺は霧島さんに連れられて、目的としていた場所にたどり着いた。


 俺の目の前には、いつか歴史の教科書で見たような茅を重ねて作られたような建物…「竪穴式住居」みたいな小屋が3つ並んでいる。周りには雑草が生い茂り、春の花を咲かせている。非常にのどかな風景だ。


 でも、俺たちが向かっていたのは発電施設だったはずだけど…?


「ここが目的地……?」

「うん、そう」


 いや……どう見ても発電所っぽくは無いんだけれど……

 どちらかと言うと遺跡とか縄文体験村みたいな観光施設にしか見えない。


 すると縄文住居みたいな家から一人の男が這い出て来た。

 見ればその男はあご髭をたっぷり蓄えた髭モジャの大男。


 ………縄文人?観光施設の職員さん?

 と思ったが、一応、帝変高校の制服を着ている。と言うことは、この人が…?


「お、来たか。いらっしゃい」

「轟先輩、よろしくお願いします」


 霧島さんに轟先輩と呼ばれたその髭モジャ男はゆったりとした動作で手招きし、


「まあ、座ってくれよ。あっちの方が安全だから」


 その男が案内する先には、奇妙な黒いテーブルの脇に一つの金属製の丸い椅子があり、また少し離れた場所にテーブルと同じような黒い素材の椅子が幾つか置いてある、不思議な空間があった。


 その周囲には何かの金属製と思われる3メートルぐらいの柱が立ち並び、テーブルを遠くから円形に囲んでいる。何か、オカルト番組で見たストーンサークルの金属柱版、と言った感じだ。


「じゃあ、そこに座ってくれ」


 彼はそう言うと自分は金属製の丸い椅子に座り、俺たちを黒い椅子に座らせた。


「それで、充電をお願いしに来たのですが……」

「ああ、早速やろう。電池をテーブルの上に置いてくれ」


 俺は言われるがまま、バッテリーをその中央の黒いテーブルに置く。

 テーブルにその重いバッテリーを置いた時、不思議と固い感触はなく、むしろ衝撃を吸収されるような感じだった。何だ?ゴムみたいな感じだな。


「じゃ、またそっちに座ってくれ。あと、ちょっと目をつぶってた方がいいぞ」


 その男はそう言うと、俺の担いできたバッテリーの端子を取り出してつまみ…


 バツンッ!!!!!!!!!!!

 バババババババッ!!!!!!!!!


 突然、目の前から雷鳴が鳴り響き、同時に閃光がほとばしった。

 なんのことか分からず目を開けっぱなしだった俺は驚いて体を硬直させた。


「よし、終わったぞ。持ってってくれ」


 その間、10秒足らず。

 あっという間の出来事に俺は目を白黒させていた。


 もしや…………

 もしかして………………

 『発電施設』って………………


 ……この縄文人のこと?


「ありがとうございます。それと、売上のことですが……」


 そう言って霧島さんはあらかじめ準備してきたらしい紙の伝票を轟先輩の前のテーブルに置く。


「先月の売電価格の70%を、この通りの金額で轟先輩の口座に振り込んであります。上2桁以下の端数は、お約束の通り、生徒会の活動費と寄付に回していますので、ご了承ください。」


 轟先輩はあご髭をワシワシやりながらその紙を受け取り、


「ああ、いつも悪いね。とは言っても、俺は口座に入ってる金なんて、ほとんど使えないんだけどな!はははははっ!」


 そのごつい顔に似合わず、快活に笑う轟先輩。

 俺は少しその数字が気になって、回り込んで彼の持っている伝票をのぞき見た。


 そこには、上2桁に12と書いてあって、その次にゼロがいち、に、さんし…………………………………ごお、ろく………………

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………しち。


 ……………ゼロが7つ並んでいた。


「先月………分………??????」

「ああ、ちょっと先月(それ)は少ない方だけどな」


 そうですか…………

 それはそれは。少ない方、ですか。


 それはぜひ………

 ぜひぜひ、お友達になりたい………


 いや、舎弟にならせていただきます。


「轟先輩……………お仕事お疲れ様です。……肩、凝ってませんか?」


 俺はごく自然なコミュニケーションを取ろうと思い、轟先輩の肩に手を伸ばす。


「あっ やめたほうがいいよ」

「………えっ?」


 バチンッ!!!!!!!


 俺が彼の肩に触れようと近づいた瞬間、俺の全身に電流が走り、衝撃が俺を襲う。


「せ、芹澤くんっ!?」


 霧島さんの呼ぶ声を聞いたのを最後に……俺の意識は反転し、そこで気を失ってしまったのだった。

10秒で1億を稼ぐ男、轟。

時給換算ェ…


///


人物ファイル047


NAME : 轟ゴウキ

CLASS : 【雷を宿す者(サンダーホルダー)】S-LEVEL 3


帝変高校の生徒。身体の中で電気を起こす異能を持つ。常に帯電しており触るとバチっとなる。そのような体質の為に一切電子機器は持てず、またガソリンや灯油、ガスなどにも引火してしまう、更に店になど入ろうものならあらゆるものを壊したりしてしまう為に人里への出入りもままならず、山の中で一人、原始時代のような生活をしている。飛行機を含めた乗物にも一切乗ることは出来ない。

いつか車を乗り回し、街でウインドウショッピングをすることを夢見ている。

電気の内包量は凄まじく、通常の計器では底が見えない。エネルギーの量だけで言えば、もし電力網に彼を接続すれば数万世帯以上の電力を賄えるはずだが、電圧の制御はそれほどうまく出来ないので送電網や変電施設ごと壊してしまう恐れがある。

異能の力が強力すぎるが故に潜在的な脅威と見なされ隔離・監視されているが、本人は至って温和である。

本人も知らず知らずのうちに電気で筋肉の動きを強化しているのでとてつもないスピードで動くことができる。本来ならレベル4相当の強力な異能者だが、運用性に強烈な問題があるために差し引きでレベル3評価となっている。

学校に登校できないので、通信教育で単位を取得中。現在、五年目の二年生。


<特技>

感電 ショック

落雷 サンダー

充電 チャージ

放電 ディスチャージ


///


NOTE :

ちなみにバッテリーは校長からのお土産。「拾い物」らしい。


///


男の狐でコメント欄が阿鼻叫喚に… 上級者多すぎ笑


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