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53 生徒会の売電事業

 そうして放課後。

 俺は帝変高校の生徒会室までやって来た。


「ごめんね、急に。荷物持ちなんて……声をかけられる男の人が他にいなくって……」


 そう言って俺に申し訳なさそうに説明するのは、同じクラスの霧島さんだ。


「いや、全然!俺で役に立てるなら何でも言ってよ!」


 社交辞令みたいなセリフだが、これは全くの本心だ。

 わざわざ俺に声をかけてくれたのだ。

 霧島さんのためなら、荷物持ちぐらい余裕で買って出る。


 でも……正直、俺は少し、戸惑っていた。

 彼女はあの時の出来事をどう思っているのだろう?


 聞きたくても聞けない。

 聞く勇気がない。

 彼女が今こうして話しかけて来てくれているだけでも奇跡的なのだ。

 いらぬ詮索をして、古傷を掘り返したくない。


 そう、あの時の……


『『『 ……………何してるの? 』』』


 ………………ァァァァアアアア!!!!!!

 

 い、痛いッ!!!!!!!!

 古傷が痛いィッ!!!!!


「悪いわね〜。芹澤君って言ったっけ?」


 俺が内心悶えているところに声をかけて来たのは、水沢先輩。

 帝変高校生徒会会長の三年生だ。

 すらりとした知的な素敵眼鏡美人さんである。


「いつも運んでくれてる子の手がどうしても空かなくてね。男手が必要だったのよ」


 なんでも、この高校の生徒会は学校から支給される予算の他に、「自家発電」による売電事業によって活動費を捻出しているのだという。

 特殊な発電施設が学校の裏山の頂上付近にあって、1ヶ月に1回、生徒会の人間が充電用のバッテリーを届けに行くことになっている。しかし急な山道はろくに整備されていない為に、徒歩で山登りすることになり、毎回バッテリーが重くて苦労するらしい。


「これがそのバッテリーね。大体、重さは20キロぐらいあるわ」


 目の前にあるのはちょうど人の胴体ぐらいの大きさのバッテリーだ。

 人が持ったり背負ったりする事が出来るように取っ手やベルトが付いている。


 俺は試しに持ち上げてみる。


 うん、結構ずっしりくるな。

 まあ背負えないほどではないが、健康体のつもりの俺でもこれを背負って山道を歩くのは結構しんどいかもしれない。


「あ、それ…すごく高いから扱いには気をつけてね?」

「え?そんな高級品なんですか?これ」


 見た目的には薄汚いコンテナのようにしか見えないんだけど?


「それ一個で、3万世帯に一月分の電力を供給できる超々大容量のモバイルバッテリーよ。世界に10個しかないの。値段は聞かないでおいた方が良いと思うわ。とりあえず、ものすごく高い、とだけ言っておくわね」


 3万世帯の一月分?

 ……世界に……10個?


 単純計算で、1日だけなら100万世帯を賄えるってことだよね?

 ………おかしく無い? その容量。


 ……………一体幾らすんの、これ?

 絶対やばい金額の備品だよね??

 なんで高校の生徒会にこんなものがあるの???


「ちなみに…………億?」

「全然、桁が足りないわ」

「…………」


 俺が戦々恐々としながらそのバッテリーを眺めていると、


「じゃあ、お願いね?後のことは霧島さんに任せてあるから」


 水沢先輩はそう言って立ち去ろうとするが、生徒会室の外に出掛ったところで何かを思い出したように立ち止まった。


「あ、言い忘れてたけど……道中は気をつけてね?あそこの森は深いから。それと強力な電磁波のせいで一切の電子機器が持ち込めないから、遭難したら戻ってこれないと思ってね?」


 一切の電子機器が持ち込めない?

 じゃあ迷ったら連絡も取れないってことか……?


「じゃあ、そう言うことで!ちょっと私は行くとこあるから!よろしくね〜!」


 そうまくし立てると、水沢先輩は風のように部屋から出て行ってしまった。

 後に残されたのは、俺と霧島さんの二人だけ。


「………………………」

「………………………………………」


 気まずい沈黙がその場を支配する。


「…」

「…」


 まずい。

 何か話さなければ。間が持たない。

 何か、良い話題は…


「……………………」

「……………」


 だが、何も思いつかなかった。

 また、沈黙。


「じゃ……じゃあ、今度の土曜日に待ち合わせね?必要な道具は私が準備しておくから!……よろしくね!」


 彼女はそうれだけ言うと、足早に生徒会室を出て行ってしまった。

 今日は割と普通に接してくれてはいたけど、どこかぎこちない感じがする。


 ……ああやっぱ、絶対、あの一件が尾を引いてるな……

 どうしよう……


 俺は少し気分を落ち込ませながらも、

 霧島さんとの二人きりでの登山を楽しみに、次の土曜日まで過ごすのだった。

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