05 ホームルーム
今回ちょっと短いです。
「芹澤アツシです。異能評価は手に触れたものの温度を変える能力、【温度を変える者】です。よろしくどうも。」
ホームルームの自己紹介を速攻で終えた俺は辺りを見回す。
異能者って思ったよりたくさん居るんだな、というのが第一印象だ。
俺のクラスは「1-A」、生徒の人数は30人だ。
一年生は全員で60名、これは全国からここ帝変高校に「集められてきた」奴らだ。そのちょうど半数がうちのクラスににいることになる。
男女比はだいたい半々ぐらいだが、ちょっと女子の方が多いようだ。
意外と美人さんが多く、なかなかグッとくる容姿の女子もちらほら。熱い視線を送ってもなぜか誰も決して目を合わせてくれようとしないが。なぜかなー。
ホームルームでも何かひと騒動あるかと思っていたが、意外と普通で拍子抜けした。
ネットで某匿名掲示板を読んだ限りでは、帝変高校は修羅の国であるかのような書かれ方をしていて内心ビビっていたのだが、あくまでもそれは噂に過ぎなかったらしい。
ただ、俺はどうしても納得いかないことがある。
納得いかないというより、強い不満がある。
男女比は半々だ。むしろ女子の方がちょっと多い。なのに。なのに…
「なんで俺の隣の席がこの変態なんでしょうかねェ!?」
「フッ、いいじゃないか。中学時代からのよしみだろ」
「納得いかねえええ!!!!」
パヒュン。
空気を切り裂く音が、俺の耳元を通り過ぎ、背後に突き抜けていった。
振り向くと、コンクリートの壁には小さな穴が空いている。
「おいそこ、うるさい!静かにしなさい。死にたいの?」
「はい、すみません」
あとちょっと、担任の先生が怖いことぐらいかな。
もの投げた後で警告しないでください、先生。今の当たったらシャレになりませんから。
◇◇◇
「はい、今日はこれでおしまいねー!各自解散。寄り道しないで帰るのよ?」
担任の先生の言葉で、ホームルームは何事もなく終了した。
特段ハプニングもなかったのだが、強いて言えば、異能評価【意思を疎通する者】の女の子が自己紹介で「ひゃわっ!?あわっえわっ!?」とかなりテンパった挙句、『クラスの皆さん…今、貴方たちの心に直接語りかけています』といきなり頭の中に語りかけてきたことぐらいだろうか。てかテレパシー使うとキャラ変わるのな。というか、もしかしてこの人には常時頭の中覗かれたりしてるんだろうか…篠崎ユリアとか言ってたか。ちなみに彼女は小柄な割に、かなり胸が大きかった。ここ、要チェックである。
それと、ホームルームで明らかになったことなのだが、「赤井ツバサ」という男子生徒のことは俺は覚えておかねばならない。
俺は男の名前は必要に迫られない限りあまり覚えないのだが、こいつは別だ。
ネットの掲示板でとある噂があった。数年前、全国ニュースにになり大騒ぎになった横浜の「中学校舎全焼事件」、その中心人物の少年Aこと「赤井ツバサ」がこの学校に入学するという噂だ。その時点では、単なる噂でしかなかったのだが…
それは先生の口ぶりからすると、事実らしい。しかも俺と同じクラスとのことだった。今日は欠席しているということらしいが。なんということだ。問題児が集まるとは聞いていたが、こういうレベルなのね…
ネット情報では赤井ツバサの異能評価はなんと中学生時点で「【炎を発する者】S-LEVEL 3」。そう、異能レベル3<一線級>である。
それって戦争の最前線に行っても一般軍人相手なら無双できるってことだよね?戦車や戦闘機ともガチンコできるレベルなんだよね?
赤井君…恐ろしい子。こいつにだけは絶対に逆らわないようにしようと固く心に決めた。絶対服従。これ大事。
ああ、それともう一人。忘れてはならないと心に刻んだ人物ー
俺が「絶対に逆らってはいけないリスト」に入れた人物がいる。
他ならぬ俺のクラスの担任、チハヤ先生のことだ。
立ち姿がとても絵になる清楚系の美人さんなのだが、今、俺の危機感知センサーはビンビンに反応している。
なぜなら、自己紹介の時にご丁寧にレベル付きで自分の異能を紹介してくれたからだ。
「【万物を投げる者】S-LEVEL 3」。
それが彼女…チハヤ先生の異能だという。
手に触れたものを超高速で飛ばす事の出来る能力で、大小様々、小石程度のものから大型トラックぐらいのものまでなら簡単に飛ばせるらしい。トラックを飛ばせる?異世界転移者でも大量生産するの?
レベル3という戦場で<一線級>の人材がなぜここに?という疑問はさておき、それを開示するというのは問題児の多いと聞くこの高校で、「逆らうな」という警告の意味もあるのだろう。生徒に対しても、先に武力をチラつかせて威圧しておいた方が得策、というわけだ。
…あれ?
やっぱこの学校、修羅の国では?
人物ファイル006
NAME : 鶴見チハヤ
CLASS : 【万物を投げる者】S-LEVEL 3
国語科目、音楽科目を教える教師。主人王のクラスのクラス担任。29歳、独身。
手に触れたものを超高速で飛ばす事の出来る能力を持つ。飛ばせるものは大小様々。小石程度のものから大型トラックぐらいのものまで。地面や建物に繋がれている様なものはダメらしい。
チョークを投げると壁に穴が開く。
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人物ファイル007
NAME : 篠崎ユリア
CLASS : 【意思を疎通する者】S-LEVEL 1
いわゆるテレパシスト。しかし能力が不安定で、相手の思っていることが正確に読み取れなかったり、逆に知らせようと思っていないことを「伝えて」しまったりする。そのためにレベル1評価となっている。引っ込み思案で内気でテンパり屋。ちなみに小柄で痩せ型ではあるが胸がとても大きい。テレパシー時のキャラと普段のキャラが違う。二重人格疑惑と何かに憑依されてる疑惑がある。