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45 温泉の魔物《ベヒーモス》

4/28 詰め込みすぎてちょっとテンポが悪いと感じたので44話と45話に分割しました。(内容に変更ありません)

4/28 あとがきに設定資料DATA:『異能種別【第1種】〜【第5種】(【特種】)』を追記しました。

4/28 先ほど一度「00 プロローグ」を上げたのですが、書き直したいが為に一旦消しています。読んでくださった方、すみません。(間を置いて復活すると思います)

「それで用事って何?芹澤くん。」


 俺は今、学校の保健室にいる。


 大事な、とても大事なことを話し合うためだ。

 間違ってもあのゴリラに邪魔をされない為、ここで待ち合わせをしたのだ。


「あのですね。前にもらったこれ…」


 そうして俺は、我が校が誇る金髪眼鏡でかつ超絶美人の保健室の先生……玄野メリア先生に話を切り出そうと、少し緊張しながら例の手紙をポケットから出した。


「この手紙(メモ)のことなんですけど…」


 そこにはこう書かれていた。



 ◇◇◇


 追伸


 本当に、突然のお願いでごめんなさい。

 もし、貴方が帰ってきたらちゃんとお詫びさせてね?

 貴方が帰ってきたら、したい事なら自由に何でもさせてあげたいと思います。


 ◇◇◇



 そう、特訓プログラムと称しあのゴリラに地球の裏側に拉致られた時に渡された超重要(キー)アイテム。

 「何でも自由にさせてあげる」と書かれた、ドリームチケット。俺はコレのために今まで頑張ってきたといっても過言ではない。


「ふふ、芹澤くん…その手紙、大事にとっておいてくれたのね?ほんとうに頑張ってくれたものね。いいわよ。なにか、したい事はある?何でも、私に出来る事なら言ってね?」


 その言葉に俺は力を得て……少しためらいつつも、勇気を振り絞り、ずっと考えていた事を口に出した。


「…お…お…お風呂…ッ!!俺ッ…一緒にお風呂に入りたいですッ!!!」


 言った。ついに言った。

 俺は胸に抱えた野望をついに口にしたのだ。

 そしてメリア先生はしばらく考え込んでいたが…


「そう…お風呂ね。ふふ、わかったわ!それじゃあみんな、とってもいいところに連れてってあげる!」


 なんと!

 先生はまさかの快諾をしてくれたのだった。


「早速、手配をしてくるわね!」


 彼女はそう言うと、足早に保健室を出て行った。


 ……そんな。

 そんなまさか。

 そんなに乗り気になってくれるなんて。


 ……すまない。霧島さん。

 俺は、君の事が好きになりかけている。

 でも、これとそれとは違うものなんだ。

 俺は……約束を果たさねばならないんだ。


 もらった手紙に「何でもさせてあげる」と書いてあったなら、それに対して何としても全身全霊で応えなければならないのが男というものなのだ。

 そう、これは必然、宿命とでも言うべきものなのだ。

 俺はその来たるべき「約束の刻」を胸に、あれやこれやを想定(シミュレーション)し始め……


 …ん?

 ………………「みんな」……?


 みんなってどういうこと………?




 ◇◇◇




 ブオオオオオオオオオオン…


 そして俺は今、左に変態、右に馬鹿という座席順でバスに揺られていた。

 あの後、メリア先生の取り計らいによって、俺たち1-Aと1-Bの面々は『異能学校対抗戦争』の慰労会ということで、みんなで一緒に(・・・・・・・)一泊二日の温泉旅行に行くことになったのだった。


 …

 うん。違うんだ、メリア先生。

 あれは、そういう意味じゃなくってですね…


 俺が少し泣き崩れそうな面持ちで俯いていると…


「どうしたんだい?芹澤くん。今日は絶好の観測日和だというのに…」


 隣の変態(御堂スグル)が話しかけてきた。

 観測?

 一体コイツは何を言っているんだ?


 俺は窓の外に目をやり…風景を眺める。外を流れるのは風光明媚な山々だ。確かに日本的な悠然とした自然は美しい。でも、正直俺はこっちの山々じゃなくってメリア先生の二つの山々をですね…

 そうして、俺はバスの車内を見回した。

 車内では女子生徒に混じってメリア先生やチハヤ先生がワイワイと楽しそうに会話をしている。


 こんな筈では……

 俺のドリームチケットは、この温泉旅行で永久に失われてしまった。

 こんな普通の修学旅行みたいなことしたってさぁ………いいんだけど。いいんだけど…!

 俺がまた失意の底に沈もうとしていると……


「おい、見ろよあれ」


 馬鹿の指差す先の座席には篠崎さんと弓野さんが横並びに座り、弓野さんはうとうとと寝入っているようだった。篠崎さんは窓の外を見やってなんだか楽しそうだ。


 時折、山道を走るバスは時々ガタン、と揺れ、それと一緒に篠崎さんと隣に座っている弓野さんの4つのお(やま)が仲良く、ぶるるん、と揺れた。


 その時、俺の脳裏に電流が走った。


 ……温泉……だと?


「ハッ!?」

「フフ…やっと……気がついたようだね?僕らが向かう先はとても有名な天然露天風呂のある施設。では…旅館(げんば)に到着次第、同志を集めて作戦会議(ブリーフィング)を始めようじゃないか。」


 馬鹿な!?コイツは何を言っているんだ?高校生一年生にもなって、そんなこと許されるはずもない。

 だが……


「御堂くん。念の為、聞かせて貰おうじゃないか?その作戦(プラン)とやらを…」


 そうして、御堂スグルはあくまでも爽やかに、口の端を吊り上げるのであった。




 ◇◇◇




 温泉旅館のとある一室。

 この一室だけ男子生徒がぎゅうぎゅう詰に集まり、熱気がすごいことになっている。

 彼らの正面に何処からか持ち込まれたホワイトボードの前で、御堂スグルが口を開く。


「では…今までのおさらいといこうか」


 そう言いながら御堂スグルはボード用のペンのキャップを外すと、サラサラとホワイトボードに人の名前を書き込んでいく。


 ———————————————

 大


 篠崎ユリア

 弓野ミハル

 土取ミユキ

 春原ユメカ

 メリア先生


 …


 神楽マイ

 霧島カナメ


 …


 音無サヤカ

 チハヤ先生


 小

 

 ///


 なし 黄泉比良ミリア


 ———————————————



 一通り書き終えると、御堂スグルは聴衆に向きなおり、その板書きの説明をする。


「これは僕の目視(スカウター)による調査によるものだが…概ね大きさの関係性としてはこういう風に並べることが可能だ」


「「おおお…」」


 部屋の中から小さな歓声が上がる。

 そこに一人のツンツン頭の男子生徒が手を挙げる。


「先生!これは…全開時(・・・)のステータスという事でよろしいでしょうか!?」

「良い質問だ、植木くん。その通りだよ。これは全開放時の戦闘力(パワー)を示している。僕の推測するところによると、これはおそらくそれなりの精度まで行っている(チャート)だろう」


「「おおおお…」」


 部屋の中から感嘆するような歓声が上がる。


「だが…誤解しないで欲しい。逆に、あくまで推測でしかない。空想上の番付とも言える。この裏付けを取るためには科学的な実地調査が絶対不可欠なんだよ。その為に、今日という日を活かさない手はない、と僕は思うんだ。」


「「「おおおおお…」」」


 室内にひときわ大きな歓声が上がる。そして、誰が一番大きい、いや違うなどという議論に華を咲かせ始める。

 だが………


 やれやれ…

 一番重要な部分を、奴らは分かっていない。俺はその問題点を指摘する。


「だが、どうだろうな?この話題で最も大事なのは(アマウント)ではない。総合的な(クオリティ)がどうあるか?だ。形状や張り…硬さや肌の美しさ…多角的な評価をしてこそ、こういうランキングには意味がある。………違うか?」


 俺の発言に部屋の中が静まり返る。そこで即座に口を開いたのはやはりあの男だった。


「ご名答だ。芹澤くん。理解ある同志が居てくれて僕も誇らしいよ。全くその通りだ。価値とは一辺倒で決まるわけではない。多様な評価軸があってこそ、その上位も輝こうというもの。だから…」


 その男はサラサラの髪を掻き上げ、宣言する。


「これは偉大なる研究の第一歩。一幕目と捉えてもらいたい。まずは「大きさ」。その一点に絞って確認する為の作戦だよ。作戦名称はこう定めよう。『豊穣の魔物(ベヒーモス)』、と。」


「「「おおおおお…!!!」」」


 作戦コードネーム名の発表に室内の紳士たちが感嘆の声を上げる。


「だが…あらかじめ彼女たちの名誉のためにこれだけは言っておこう。大きいだけが正義ではない。…黄泉比良さんにも…敬意を。」


 御堂スグルは両手を胸に当て、そう祈るように呟く。その様子に倣うようにその場にいる全員が胸に両手を当て、復唱する。


「「「「黄泉比良さんにも敬意を」」」」


 そうして、その変態はここ一帯の地図(マップ)を広げ…


「では…早速具体的な作戦(プラン)の話をしようか」


 作戦(プラン)概要を説明し始めるのであった。

春原ユメカ

「何か…嫌な感じがします。」

弓野ミハル

「私もさっきから妙に………腕が疼くわ。」


///


DATA : 『異能種別【第1種】〜【第5種】(【特種】)』


異能はまだ研究の途上であり不明な部分も多いが、超常レベル「S-LEVEL」による五段階評価とは別に、種別に関しても「5種」(+1種)に分類される。その分類を以下に示す。


【第1種】万物系(ジェネラル)

 異能種別 : あらゆる物に特定の概念を作用させる者


<例>

万物を切断する者(ディバイダー)

万物を投げる者(ジェネラルスロワー)

万物を食べる者(ジェネラルイーター)

万物を破裂させる者(ジェネラルバースター)

万物を動かす者(ジェネラルムーバー)



【第2種】感応系(センス)

 異能種別 : 特定の対象の感覚に作用を及ぼす者


<例>

姿を隠す者(サイトアヴォイダー)

意思を疎通する者(コミュニケーター)

未来を予見する者(プロフェット)

見えないものを見る者(シーカー)



【第3種】操作系(マニュピレイター)

 異能種別 : 特定の対象に操作作用を及ぼす者


<例>

刃を操る者エッジマニュピレイター

人形を操る者ドールマニュピレイター

植物を操る者(プランター)

筋肉を操る者(マッスルビルダー)

粘土を操作する者クレイマニュピレイター

鉱物を操る者(ミネラルバイター)

植物を成長させる者(プラントグロワー)



【第4種 1類】発生系(スターター)

 異能種別 : 特定の概念を元にした現象を発生させる者


<例>

音を発する者(サウンドメイカー)

炎を発する者(ファイアスターター)

暗闇を操る者(シャドウメイカー)

冷気を操る者(コールドメイカー)

風を操る者(ウインドメイカー)

電気を発する者(サンダースターター)



【第4種 2類】創造系(クリエイター)

 異能種別 : 特定の概念を元に、複雑な現象を発生させる者


<例>

病を発する者(モーバスクリエイター)

腕を生やす者(アームクリエイター)

香りを操る者(パフュームメイカー)

料理をする者(ディッシュメイカー)

傷を癒す者(ヒーラー)

姿を変える者(ミューテーター)


NOTE :


発生系と創造系の厳密な区分はなく、「複雑な現象」の定義も実はないが便宜上、相対的に単純なものを1類、複雑なものを2類に分けた上で同じ「【第4種】発生・創造系」としている。区分が曖昧なものは大抵「メイカー」という呼称で呼ばれる。単純な方から順に、「スターター」「メイカー」「クリエイター」。「ヒーラー」も創造的な複雑な現象ということでここに分類されている。



【第5種】干渉系(インターフェラー)

 異能種別 : 特定の法則や概念に干渉する者


<例>

空間を動かす者(スペースシフター)

記憶を操作する者(メモリーエディター)

点と線を結ぶ者ディメンジョンコンバーター

毒を無効化する者(ポイズンイレーサー)

運動を停滞させる者(サスペンダー)




————— 秘匿情報(TOP SECRET)—————


【特種】根源系(プリンシプル)

 異能種別 : 根源となる法則を操作する者


<例>

時を操る者(クロノオペレーター)

温度を変える者(サーモオペレーター)


NOTE :


表向きは【第5種】干渉系(インターフェラー)として表現されるが、その応用の幅に極端な差があり、明確に区別される。その存在を知る者は極一部の軍・政府の上層部と研究者に限定される。



///


戦争の序曲


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