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32 Dブロック ドラゴンの猛威

『異能学校対校戦争』の団体戦(タクティカルウォーズ)Cブロックの試合が終わり、会場は昼食休憩の時間となっていた。


 帝変高校の生徒たちは皆、試合期間中ビュッフェ形式の料理が無料で食べられる食堂で昼食を取っており、Dブロックの主要メンバー、堅田ケンタロウと弓野ミハル、泊シュウヘイが同じテーブルで食事をとっていた。


「Cブロックは残念ながらダメだったが、次の試合で俺たちが勝てば3勝…序盤で大きくリードすることになる。代表選のみんなもやりやすいだろう」

「そんなに簡単に行くかしら?うちは実質五人(・・・・)のチームじゃない?」

「まあ、そう言うなよ。植木くんもきっと色々考えてるのさ。合同練習には全然出てこなかったし、連携もアレだけど……」


 1-Bのクラス委員長の泊シュウヘイがチームの自主練習にろくに出てこなかった植木ヒトシのことをフォロー(?)していると、隣のテーブルに代表選メンバーの赤井ツバサと霧島カナメ、そして神楽マイが食事を持って座って来た。


「やったー!これ無料ってすごいよね?能力使いすぎてお腹空いたんだ〜!いただきま〜す!」


 そう言うのは神楽舞。帝変高校はCブロックでは惨敗したものの、控え室にヒーラーの神楽がいたおかげで、チームの面々は皆、元気に昼食にありついている。その影の労働を取り戻そうかとでもうように、神楽マイの皿の上は山盛りのお肉で溢れている。


「太るぞ。そりゃ幾らなんでも…」


 と、赤井ツバサ。


 霧島さんはそれを横目にお皿に上品に盛られた料理に口をつけている。


「そういえばアイツ…芹澤はどこ行ったんだ?今日も見かけねェが…」


 赤井はかなりの勢いでお肉を平らげつつある神楽マイを眺めながら…独り言のように呟く。それには霧島カナメがすぐに反応した。


「うん。私も朝気になって鶴見先生に聞いたんだけど…まだ「帰って来てない」って。」

「……ん?帰って来てない?どこかに行ってるの?彼?」


 お肉を咀嚼しながら神楽マイは器用に会話に割り込む。


「ええ。私も突然のことだったから本人には聞きそびれたんだけど……どこかの()で校長先生と一緒に特別訓練してるって聞いたの。」

「…あれ?霧島さんってそんなに芹澤くんと仲よかったの?もしかして同じ中学だったとか?」


 神楽マイの素朴なツッコミに、霧島カナメは一瞬、硬直し……若干頬が赤くなる。


「…えっ?いえ、違うんだけど……あ、あの……うん。ちょっとね。」

「…ふ〜ん??ちょっと、ねぇ…?」


 ジト目でニヤニヤしながらお肉を次々に口に放り込むと言う器用な芸当をやってのけながら、神楽マイは肘で霧島カナメをちょいちょいとつつく。一方の霧島カナメは顔を赤くし、若干うつむきながら、神楽のされるがままになっている。


「だけどよ……もうそろそろ出番だろ?」


 赤井がビュッフェ形式に似合わない醤油ラーメンをすすりながら、壁に埋め込まれているデジタル時計を見つつ言った。


「さあ、でもまあ間に合わないってことはないんじゃない?彼の試合まであと三時間はあるわけだし…校長先生(・・・・)もついてるんでしょ?」

「まあ、そうだと思うけどよォ…」


 まだ釈然としないらしい赤井に、神楽はお肉を3枚ほど貫通させたフォークをビシッと勢いよく突きつける。


「心配するだけ無駄無駄ッ!アンタはこの次の試合に備えて、ウォームアップでもしてなさいッ!一応代表なんでしょ?」

「チッ…!言われなくても……」


 そうして、赤井はラーメンを一気に食べ終わり……さっさと代表選選手専用の控え室へと向かうのだった。




 ◇◇◇




『『選手は開始位置についてください。まもなく、タクティカルウォーズ第4試合、Dブロックの試合を始めます』』


 アナウンスと共に、各校のDブロックの選手たちが闘技場内に入場し始める。

 堅田ケンタロウは何やら大量の矢の束を肩に載せて闘技場内に運んできた。

 そして、開始位置に着くとそれらは地面にドサッと置かれ…


「弓野さん、ここでいいか?」

「ええ、ありがとう。これぐらいはないとね。」


 長弓を持って佇む弓野ミハルの脇には矢の束が積み上げられ…人の腰の高さ程の山となっている。


「泊くん、アシストを頼むわね。」

「分かってますよ。任せてください」


 泊シュウヘイは弓野の声に、革手袋をギュッギュッとはめながら答える。


『『全選手は開始位置に着きましたか?…準備はいいですね』』


 コロシアム内に再び、熱気が充満する。


『『それでは…タクティカルウォーズ Dブロック、試合(バトル)開始(スタート)!!!』』


 試合開始のアナウンスとほぼ同時に両陣営が動き出す。

 弓野ミハルが手に十数本の矢を構え目一杯に弓を引く。

 そこに泊が彼の能力『【運動を停滞させる者(サスペンダー)】』レベル1を行使し…


「『一時停止(サスペンド)』ッ!」


 限界まで引かれていた弓の張力(・・)が一瞬、停止(・・)し……さらに弓がもう一段階(・・・)引かれる。


「『矢雨(アローレイン)』ッ!」


 泊の一時停止(サスペンド)の効力が切れる絶妙なタイミングで弓野ミハルは弦を解き放ち…十数本の矢を天空に放つ。そして…彼らの動作は機械的に迅速に何度も何度も繰り返され、見る間に闘技場の上空を矢の雨で覆う。


 そしてそれを横目にタンカーの堅田は敵陣へと駆け出した。


「あとは……個別に落ちて貰おうかしら」


 矢の雨を射ち終えた弓野は今度は水平方向(・・・・)の援護射撃の動作に入る。


「『射的(スナイプ)』ッ!」


 弓野は彼女の能力『【見えないものを見る者(シーカー)】S-LEVEL 1』で空気の流れを読み、人の動きを読み、飛び来る相手高校の遠距離攻撃を読み…その合間を縫うように高速の矢を放つ。


 水平に放たれた矢は鷹聖学園の生徒たちに吸い込まれるように向かい、ちょうどそのタイミングで滞空していた矢の雨が敵陣に降り注ぐ。


 空からは大量の矢の雨。

 そして正面からは脚や肩を狙った精密射撃。


 どちらか一方は異能で防いでいる生徒はいるものの、それらを同時に捌ききれず、鷹聖学園の生徒が一人また一人と身体に矢を受けて行動不能になっていく。

 さらに矢の雨は降り続き…

 敵チームが行動を制限される中、堅田ケンタロウは構わずに自らの身体ひとつでそのまま敵に突っ込んだ。


「うおおおおお!!『強靱化(タフネス)』ッ!!!」


 矢雨(アローレイン)で動きを止められていた鷹聖学園の生徒達を異能で強化された堅田の巨体による全身全霊のタックルが襲う。

 彼らは堅田の突進に半ば交通事故のように勢いよく跳ね飛ばされ、宙を舞う。


「ちいッ!後手に回ったかッ!!『焼却(バーン)』ッ!!!」

「集中して攻撃しろ!『重衝撃(ヘヴィーショック)』ッ!!!!」

「行くよッ!!『風刃(ウインドエッジ)』ッ!!!」


 それに対し、残った鷹聖学園アタッカー達は一斉に堅田に中距離からの集中攻撃を繰り出す。そのダメージにも構わず、鬼神のように敵陣で攻撃を繰り出し暴れまわる堅田ケンタロウ。


「遠距離攻撃ができる奴と飛田(トビタ)はあの弓女と後衛の撃破に回れ!他のアタッカーはこっちの敵タンカーの始末だッ!!」


 号令が飛び交い、戦況がまた動く。

 闘技場内では両高校が凄まじい勢いでの一進一退の攻防を繰り広げていた。




 ◇◇◇




 〜 観客席 〜


「凄えな……団体戦でマトモな戦闘は初めてじゃないか?」

「ああ、真っ向から鷹聖学園とぶつかって……結構ちゃんと勝負になってるのが驚きだぜ」

「さすがに真面目に戦えるチームも一つぐらいあるんだな。まあ、そりゃそうだよな…」


「……いや、見てみろ。帝変高校のフィールドに一人…何もせずに踊ってる奴がいるぞ?」

「は?なんだそれ?…………踊ってる???」

「ホントだ。あの髪の毛ツンツン立ててる奴、その場でぐるぐる回って……何してるんだ?」

「何だアイツは?バッファー?違うか……あれって……マジでただ踊ってるだけ?……全く意味分かんねえ」


「さすが帝変高校。必ず一人は自由な奴が混じってくるな…」




 ◇◇◇




 矢の雨が降り止み……戦闘不能となった鷹聖学園の選手は二人。

 他の選手はダメージを受けながらも戦線に復帰し、攻勢に転じようとしている。


 そして今度は鷹聖学園の遠距離攻撃が帝変高校のフィールドを襲う。

 帝変高校チームの面々は必死でその攻撃をしのいでいるが……その範囲外、遥か後方を見やると遠くで一人の男子生徒が奇怪な動きをして何やら駆け回っている。


「アイツ…何してるの!?こんなの作戦に無いじゃない!?」


 弓野がそれに気がつき、咎めるような目で睨みつける。


「まあ悪いが植木くんはアタッカーとしての攻撃力には期待できない。置いておこう!!!」

「攻撃、来るぞ!!!僕が抑える!!弓野さん、迎撃は頼む!!!」


 泊はそう叫び、


「『一時停止(サスペンド)』ッ!!!」


 味方に当たりそうな遠距離攻撃だけを器用に選んで一時停止させ、味方への被弾を防いでいく。

 そこへ、一陣の風が吹いた。そう思った瞬間、


 ゴッ!


「グエッ!?」


 泊シュウヘイは後方にふっ飛ばされ、後頭部を地面に打ち付けてあっけなく気を失った。


「ヒャハッ!!受け身も取れねえとか、ウケる!!」


 風と思えたのは、人だった。


「じゃあ…続き行くぜ?」


 そしてそのまま、その人影は大きくブレて…帝変高校の生徒に襲い掛かった。


 ボバッ!!

 凄まじい風圧が通り抜けたかと思うと、


「きゃあッ!?」

「うごあッ!!?」


 帝変高校の生徒達は宙を舞い、ものすごい勢いで縦回転し…またもや後頭部を打ち据えてダウンした。

 そしてその勢いのまま、風の塊となった人物は弓野に向かい…


「『射的(スナイプ)』」


 だが高速で飛び来る矢を受けそうになり回避、停止した。


「へえ…俺を目で追えてるのか?」


 興味深そうな表情で、弓野を見つめる男子生徒。

 弓野は無言で次の矢を構え、放つ。


 ヒュヒュヒュヒュヒュ


「おっ!?あぶねッ!!」


 そうは言うものの、危なげなく至近距離で飛んできた矢を全て躱す男。

 弓野は手に持った矢を撃ち尽くすが瞬時に矢を補充し、次の攻撃に備え、また迷いなく放つ。


「だが……肝心の矢の速度(・・)が、それじゃあな」


 しかし、風のように早く動く男…飛田テンタロウは全ての矢をかわしながら…


「遅すぎるぜ。」


 弓野に迫り、瞬時に投げ技(・・・)を使い彼女をノックアウトした。


「終わりか…いや、まだ奥に誰か居る…………なんだありゃ?」


 そこには…

 ひたすらに奇妙な踊りを披露する、ツンツン頭の男子生徒がいた。


 そこへ、帝変高校タンカーの堅田を倒した三人の鷹聖学園の生徒たちが合流してきた。


「あの厄介な弓女は倒せたようだな………残るは…………なんだあいつは?」


 鷹聖学園の生徒たちの目線の先にはずっと不思議な動きで踊っているようにしか見えない男子生徒がいた。

 その生徒……植木ヒトシは視線に気がつくと踊りを止めて鷹聖の生徒たちの方に向き直り…


 両手を大きく広げ、何か意味ありげな直立ポーズ……よくゲーム中盤のボスとかがしてそうなソレをしながらこう言った。


「ようやく来たか。待ちわびたぜ?……ようこそ……我が舞台(ステージ)へ。」


 顔には、何故か余裕の笑みを浮かべている。


「雑魚が、さっさと片付けてやる」


 飛田テンタロウは彼の異能『瞬足(クイック)』を発動させ、人間とは思えないような速度で植木の元へと接近する。


「ヘッ……速いな。だがいいのか?そんなに俺に近づいて」


 だが、迫る豪速の人影を見つめながら………植木ヒトシは落ち着き払って呟いた。


「『対人指向性豆萌(クレイモヤシ)』」


 ボボボボボボボボボボボボッ!!!!!!


「あがグゴッ!!!?」


 飛田は目前に突如大量出現した腕の太さ(・・・・)の2倍ほど(・・・・・)のモヤシ群に全身を撃たれ宙を舞う。

 そして……自らの高速運動が加味されてしまったカウンターの絶大な威力に、一瞬で意識を刈り取られた。


 闘技場内にいきなり出現したモヤシ畑(・・・・)に場内が騒然とする。


 その妙な空気の中…

 植木ヒトシはゆっくりと鷹聖学園の生徒達に向かって腕を伸ばし、グッと親指を立てると……

 それを縦に180度回転させ、真下(・・)に向けた。

 そうして植木ヒトシは言い放つ。


「来いやッ!!鷹聖のクソ雑魚どもッ!!!俺が纏めてぐっちょんぐっちょんに捻り潰してやらああああ!!!!」


 思いっきり見え見えの挑発。

 だが…

 プライドの高い鷹聖学園の選手には敢えてそれに乗る者がいた。


「まあ、そう言われて黙っている程…俺たちは弱くないつもりなんだがね?このド底辺高校が。」


 鷹聖学園Dチームのエース兼リーダー、重川である。


 冷静に現状の状況を見ると「帝変高校1人」対「鷹聖学園5人」。

 一人不意打ちで倒せたからといって、客観的にはどう見ても格上の鷹聖学園が絶対優勢である。

 これが現実。それが分からないなどというのは余程の馬鹿か、過剰な自信家か。或いは両方なのだろう。


「いいぜ、その安い挑発に乗ってやるよ」


 そうして…鷹聖学園の生徒たちは全員でゆっくりと植木との距離を詰めていく。


「はっ!!俺が怖いからって多対一かあッ!?…この臆病者め!」


 植木ヒトシはまた狙っているのかいないのか、さらに挑発を続ける。


「馬鹿め。これは団体戦だ。お前の仲間はもう、さっさと戦闘不能(リタイヤ)したん…」

「だがッ!!お前らがいくら数だけ多くたって……コイツ(・・・)には絶対に敵わないぜ?」


 植木は自分から始めた会話を食い気味に途中でぶった切り、何かを摘んだ(・・・)ような手を突き出す。


「これはいつものとは一味違う。何せコイツは様々なヤバい薬液(・・・・・)に漬け続けて強化した……一週間モノ(・・・・・)だからな」


 そして…


 ピンッ


 植木の指に弾かれた3ミリ程の小さな種が放物線を描き……リーダー重川の足元に着地する。


「!? しまっ…!?」


 それが攻撃の予備動作だという事に気付き、動き出すも…


「遅えよ。『成長促進(グロウアップ)』ッ!!!!』」


 ドンッ!!!!!!!!!!

 重川の足元から突如、直径1メートル(・・・・・・・)はあろうかというごんぶとのモヤシが現れ、それは急激に成長して彼の股間を強打し、上空に打ち上げた。


「お゛う゛ん゛ッ!!!?」


 重川は闘技場の(そら)をきりもみ回転しながら放物線を描き…


 ドサッ

 …そのまま地上に落下した。

 彼は口から泡を吹き……当然意識は飛ばされている。


「俺が開発したコイツは名付けて…重薬漬(ヘビードープ)モヤシ。いや…もはや「重薬漬モヤシ(ドラゴン)」とでも呼んだ方がいいかな…?」


 植木ヒトシは落ち着いた様子で、人差し指を鷹聖学園の生徒たちに向ける。


「次はどいつだ?ビビってないでこっちに来ていいんだぜ……?」


 強者の笑みを浮かべ……鷹聖学園の生徒たちを挑発する。

 だが、指揮官(リーダー)を失ったものの、比較的冷静な鷹聖の生徒は状況を分析し周りに警戒を促す。


「みんな!距離を置いて、奴が飛ばす種に気をつけろ!それさえ見分ければあとは遠距離攻撃で…」


 しかし……その見方も甘かったと言える。


「あ、言い忘れてたが…………この辺はもう全て(・・)俺の領域(テリトリー)なんだぜ?『成長促進(グロウアップ)』ッ!!!」


 ボボボボボボボボボボボボボボボボボボッ!!!!!!!


 今度は彼らの居るフィールド全域に…数にして数十本はあろうかという大量のごんぶと(ドラゴン)モヤシが乱出し、その弾丸のような成長に被弾した鷹聖学園の生徒たちが一人、また一人と空へと打ち上げられた。


「あがあッ!?」

「うげッ!!!?」


「まだまだ行くぜえッ!『成長促進(グロウアップ)』ッ!!!『成長促進(グロウアップ)』ッ!!『成長促進(グロウアップ)』ッ!!!!」


 ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボッ!!!!!!!!!!!


「お゛う゛ん゛ッ!!!?」

「ぐはあッ!?」

「えぐあッ!?」


 彼らは極大もやしに撃たれ嬲られ闘技場の(おおぞら)を舞い…中には運悪く何度もトランポリンのようにモヤシに打ち上げられている生徒もいる。そうして、一人、また一人と地面に落下して行き…意識を手放す。


 そうして……


 一瞬にして、闘技場内はごんぶと巨大モヤシの合間に何人もの前身打撲の人間が倒れ伏す…モヤシ農園(じごくえず)と化した。

 その余りに異様な光景に……会場全体が言葉を失う。


 だが……


「焼谷ッ!!地面を焼き払えッ!!」

「くそッ!奴の逃げ場をなくしてやる!『焼却』ッ!!!!」


 鷹聖学園Dチームにはその猛攻さえ凌ぎ切る猛者(もさ)達もいたのだった。

 焼谷と呼ばれた生徒は手から火炎を放ち、地面に撒かれた種を焼き払いながら、植木ヒトシを炎で包み込む。炎は植木を囲むとさらに燃え上がり、高さ数メートル(・・・・・・・)の炎の壁となった。


「舐めやがって!!そのまま…燃え尽きやがれッ!!!!」


 植木ヒトシは四方を灼熱壁で囲まれてもはや身動きも出来ない……はずだったが、落ち着いた様子を崩さない。


「俺をこの程度の攻撃で倒せると?笑わせるぜッ!!!今日の俺が緊急脱出手段(・・・・・・)ぐらい準備してないとでも思ったか!?」


 そして、植木は地面に種を一粒ポトリと落とし…


「『成長促進(グロウアップ)』!!!!!!!!!」


 力の限り叫んだ。

 途端に植木の足元から直径1メートル(・・・・・・・)はあろうかという巨大モヤシが現れ、それは急激に成長して彼を上空に押し上げた。


「と、飛んだだとッ!?」

「なっ、あの炎の壁を飛び越えやがったッ!?」


 予想外の回避行動に驚く鷹聖の生徒たち。

 そして植木ヒトシは闘技場の(そら)で大の字のポーズを決めながら華麗に飛び上がって放物線を描き…しばらく滞空して地上20(・・・・)メートル(・・・・)ほどの高さから落下…




 グシャッ!!!


 そしてピクリとも動かなくなった。


「……………………え?」

「…………………………………………………は?」


 残された鷹聖学園の選手たちが呆然とする中、場内アナウンスが鳴り響いた。


『『試合(ゲーム)終了(セット)!Dブロック勝者は鷹聖学園チームです!』』

少しでも「面白い」、「続きが読みたいかな」と思ってくださったら、ブクマや下からの評価をいただけると、継続のモチベーションに繋がります!気が向いたらよろしくお願いします!

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