27 『異能学校対校戦争』
そして……対校戦争当日。
開会式も終わり……選手たちは控え室に移動していた。
ーー鷹聖学園、選手控え室。
神宮コロシアム内に設置された選手の控え室は、闘技場側の一面が透明な壁となっており、相手の控え室まで互いに見通せるようになっている。
鷹聖学園側の控え室では鷹聖学園の選抜メンバー達が、相手高校の面々を遠目に眺めつつ、会話をしていた。
「あれが…帝変高校ね…なんでよりによって私達…最上ランクのエリート校、鷹聖の対戦相手があんなゴミ高校なのかしら…」
「最低評価の万年Fランクの国立高校……なんであんな高校が存在するんだ?税金の無駄じゃないか!潰して仕舞えばいいのに。」
「いや、今日の対校戦争で負けたら、実際、廃校らしいぜ?あいつら。」
「ぎゃっは!!!そりゃあいいぜ!!今日はあいつらの超面白な泣き顔が観れるってワケ!?撮り逃さねえようにスマホ充電しとかねえと!!」
「…でも廃校って…?廃校したらどうなるの?あいつら?」
「さあ?軍の下働きにでも出されるか…自宅で引きこもりでもするんじゃない?もともと授業料も払えない底辺が集まるところでしょ?」
「そんなの知ったこっちゃないっしょ。俺、ちゃっちゃと終わらせて帰って新作のVRMMOやりたいんだけど〜?」
「そうだな。相手の都合なんて関係ないさ。俺たち選ばれた人間…鷹聖学園のスペックを下民に思い知らせてやるだけだ。」
◇◇◇
一方、帝変高校側の選手控え室。
「おい、見えるか?」
「ああ…調整良好。しかと見えるね。試してみるかい?」
「……なあ、あの一番手前のこっち観てる女子………でけえな!」
「フフ……そこに目をつけたか。植木くん。でもね、最後列右から二番目、ブロンドのショートカットの子を観てごらん?…僕は彼女に一番の可能性を感じるね。」
「お前何言ってんだよ?……そうそうあの子に勝る子なんて………………………うわホントだ!!スゲェ!制服がもうはち切れそうじゃん!?」
「しかも…彼女はまだ、成長中と見た。今後が楽しみな逸材だよ……!」
二人で交互に双眼鏡を覗き込み、最高に頭の悪い会話をしているのは……植木ヒトシと御堂スグル。彼らも帝変高校の選抜メンバーである。
「アイツら…最ッ低…!気持ち悪いわ…!…ここで殺してもいいかしら…?」
彼らを蔑んだ目で見ながらそう呟くのは弓野ミハル。
「まあいいんじゃないの〜?男子ってああいうもんさね〜」
対しておおらかな姿勢で構える土取マユミ。
「あの…今日は、大事な試合の日なんじゃないでしょうか?彼ら、あんなに緩んでいて大丈夫でしょうか?」
そう心配そうに呟くのは音無サヤカ。
「まあ、緊張するだけがコンディションの整え方じゃないさ。普段通り、リラックスする事も大事だぞ。」
巨体に貫禄を漂わせながら、そう言うのは堅田ケンタロウ。それに後ろでコクコクと頷いている黄泉比良ミリアと香川リカ。二人とも手にはお菓子を持っている。
「まあ、何にしても……もうすぐ僕たちの運命の試合が始まるわけだ」
そこに、1-Bのクラス委員長、泊シュウヘイが黒メガネを押し上げつつ、言葉を挟む。
「泣いても笑っても、今日の試合で全てが決まる…二度目はないんだ…!」
そして彼は拳に力を入れ…
「そう、今日が正念場だ!!!!!皆、気合い入れていくぞッ!!!!!」
泊シュウヘイは高らかに拳を突き上げた。
「…」
「お〜」
「…」
「はーい」
「おう」
「………ポリポリ(お菓子を食べる音)」
「……サクサクサクサク(お菓子を食べる音)」
「…………うわ!あの子もデケェな!?」
帝変高校の控え室は非常にフリーダムであった。
◇◇◇
『『まもなく、団体戦タクティカルウォーズ第一試合 Aブロックの対戦が始まります。選手は闘技場に入場してください。』』
コリシアムに競技開始を告げるアナウンスが響き渡り、闘技場の上部に設置された巨大ディスプレイに対戦カードの概要が表示される。
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異能学校対校戦争 春の部
第一部 団体戦
「タクティカルウォーズ」
対戦表
帝変高校 鷹聖学園
Aブロック 5名 - Aブロック 8名
Bブロック 6名 - Bブロック 7名
Cブロック 9名 - Cブロック 8名
Dブロック 6名 - Dブロック 7名
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それを見た観客席がざわつく。
「おい…Fランクの帝変高校、格上相手に4試合中の3試合がすでに人数で負けてるぞ?」
「いや、ちょっと待て……帝変高校のメンバー数…足しても30にならないぞ?」
「ほんとだ…全部で26人?まさか…揃えられなかったのか?そんなことがあるのか?」
「おいおい……鷹聖学園なんて参加候補者が100人以上いる中でのメンバー選抜だったって聞いたぞ?」
「それ、『週刊異能』の鷹聖の監督インタビューに出てたな。昨年に比べても今年の一年生は豊作だったって。」
「これ…話にならなくないか?どう見ても鷹聖の圧勝じゃん」
「まあ、そんなの観る前からわかってるけどな。俺ら鷹聖学園目当てで観戦しにきたわけだし」
「ああ…Fランクの帝変がAランクの鷹聖学園にどれだけ持ちこたえられるかって話だろ?」
「チケット代も安くなかったんだし…せいぜい、鷹聖の見せ場を多く用意してくれよな……」
そうして、選手が闘技場に入場してきた。
「おい、あの子……小さくないか?」
「え?ほんとだ…みたとこ、中学生か…いや、小学生?それぐらいに見えるぞ?」
「あれが選手か?しかもチームは5人だろ?対する鷹聖はメンバー8人だぞ」
「帝変高校は本気で勝負する気があるのかな?対校戦争をナメてるとしか思えないんだけど」
「捨て試合、か…?」
「それにしては中途半端な人数だろ、5人って……何考えてるんだ?奴らは」
◇◇◇
そして…闘技場内部。
両高校の選手たちは、開始位置につき…お互い睨み合っていた。
その中で、鷹聖学園側の髪を茶色く染めて髪の毛を上にツンツン立てた生徒が笑い声を上げ大声で言った。
「ぎゃはははっ!!!おいおいおい!!!そんなちっちゃな子まで戦闘に駆り出されてんのかァ?人材不足も甚だしいなァ!!帝変さんよぉ!?ホント面白えな!!」
100メートルほど互いの選手が離れている開始位置でもよく聞こえるほどの声で、帝変高校の選手達を指差して笑っている。
対する帝変高校側、土取マユミは横にいる黄泉比良ミリアに向かって、話しかける。
「ありゃ〜、ヨモちゃん?目一杯煽られてるよ〜?どう?……怒った?」
「………ううん……全然」
黄泉比良ミリアは小さく首を振りーー
「だって…………あの人たち全員、潰されるから」
そう小さく、呟いた。
『『では、時間です。競技を始めます。タクティカルウォーズ Aブロック…』』
コロシアム全体を、束の間の静寂が包む。
『『試合、開始!!!』』
そうしてーー
『異能学校対校戦争』、第1戦目の火蓋が切られたのであった。





