23 過剰な力
今回短いです。
4/4 前話22を改稿しました。(大筋の変更はありません)
俺は空中で校長に抱えられながら、キノコ雲を眺め呆然とした。
先程まで風光明媚な山々があったはずの場所は、一瞬にして噴煙の立ち上る地獄絵図になった。
「コレは…一体…? な、なにが…」
何が起こった…?
「わかんねえのか?お前だ」
…
俺?
これを…まさか俺が? そんなわけ…
「移動するぞ。上から見られてる」
「え?」
校長はそう言うと、空中でほぼ水平にジャンプしー
ギュン
という音がしそうなほど高速で視界がぶれ、一瞬のうちにキノコ雲が遠ざかっていくのが見えた。
そして、校長は空中跳躍を繰り返し、さらに加速していく。
気を失いそうな程のスピードと、身体ごと押し潰されそうな加速を全身に感じながら地上に見える地形が高速でスクロールするように流れていき…
ーあっという間に別の山…恐らく別の国だろう場所にたどり着いた。何だこのデタラメな速さは?
校長は上空から地上まで降下し、抱えていた俺を地面に降ろして言った。
「…あれは街中で使うなよ」
「言われなくても…」
分かってる。そう言いかけて言葉が詰まった。
俺は混乱していた。いや、正直…理解はしていた。
あれは…俺が温めて放り投げた小石だ。
それがあんな爆発を引き起こしたのだ。
ーそんな力、人が持っていい力じゃ無い。
もし、知らずに街中でアレをやっていたら?
もし、そばに家族や友人…メリア先生や霧島さんがいたら?
俺は背筋が寒くなり、無性に怖くなった。
それにもし、さっきの爆発の時、この校長がいなかったら俺も…
「じゃあ、続けるぞ」
そうゴリラは言う。続ける?何を?
「…あんなことになったんだぞ。もう…」
やめよう。そう言おうと思った。しかし…
「お前はまだ知ったばかりだ。まだまだあんなもんじゃねえよ」
「…あんな…もん…?」
「あれぐらいなら、出来る奴は結構いる。お前はこれから…そういう奴と渡り合っていかなきゃならねえ」
こいつは…なにを言って…
…
いや、本当は分かっていた。メリア先生は「お父さんと同じぐらい強くなれる」と言っていた。
そして俺の目の前にいる校長は、公には秘匿されているものの、現実には「レベル5 」。「核爆弾100発級の脅威」と言われるクラスの異能者。
それと同じくらい?俺が?そんなバカな話あるわけねえだろ!
そんな風に流していた。
というより…頑なに直視しようとしなかったのだ。
認めてしまえば、俺の今までの日常…平穏で何事もなく、たまに友人と馬鹿騒ぎして羽目を外す程度の日常…そんな「ごく普通の生活」が粉々に壊れてしまうような気がして。
ああ俺…英雄とか、無双とか、そんなに望んでなかったのかな。
そんなものより、遠ざかっていく平穏が、日常が…欲しい。
「怖えのか?」
…ふっざけんな!誰が…!
そう言おうと思って……肩が震えて声が出ないのに気がついた。よく見ると、手も、膝も震えている。
「ああ…怖い」
俺は正直に言った。
怖い?
俺は何を恐れているのだろう?
一瞬であの綺麗な山々を粉々にしてしまったこと?
これから俺を利用しようと狙ってくるって奴らのこと?
一歩間違えば、周りの人間みんな蒸発させかねないこと?
ーたぶん、全部だ。
俺はその全部が、怖い。
それにもし、こんな力があることがわかって…誰からも近寄られなくなったら?家族にも…霧島さんにも…あのモヤシ野郎にさえ、離れられたら?
俺は孤独になるのが…怖いのか?
いや…離れられるだけならまだいい。
俺が攻撃されたとばっちりで周囲にも被害が出始めたら?家族が誘拐されたり、死んだりしたら?
もしそうなったら俺は…自分で自分を許せない。
…いろんなことが頭に浮かんでは消え、考えるうちにだんだん…俺は全てのことが怖くなっていって…
「じゃあ、使えるようになれ」
…
簡単に言ってくれる。このゴリラは。
だけど…
「…ああ」
俺はそう返事をする。
きっと、それしかないのだろう。
直視しろ。
怖くても嫌でも、見るんだ。強引にでも前に進め。
「やり方教えてくれよ、校長。簡単に使いこなしてやるから。」
俺は震える声をふり絞り、精一杯の虚勢を張って前に踏み出る。
「おう。任せとけ」
心なしか、いつも無表情な男が少し笑ったように見えた。
4/6 同時連載でこんなの(↓)初めて見ました。わりと本格(?)ファンタジーの転生モノです。こちらも不定期更新ですがよろしくお願いします。
【超絶美少女】となった俺は自分と結婚したい
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