20 校内選抜
4/6 団体戦「タクティカルウォーズ」の仕様を4チーム戦に変更しました。
「校内選抜…ですか?メリア先生」
私は、今朝明らかになったことを「1-A」のクラス担任、鶴見チハヤ先生に伝えるところだった。
「ええ、毎年恒例の春の『異能学校対抗戦争』なんだけど…今年は、4月の第2週に開催されることになっているらしいの…つまり、来週ね。」
「そんな!?例年は2ヶ月は先ですよ!?」
「そうね…私も、つい今朝知ったばかりなの。」
「そんな重要な情報がなぜ今頃……!?」
「うん、ちょっと校長がね……」
「………あ、そうですか」
ちょっと校長が…で通じてしまう辺り何かやるせなさを感じるが、今はそれどころではない。
「だから、緊急で対策を取りたいんです。お願いできますか?チハヤ先生」
「わかりました!それでは早速、明日から動く準備をしなきゃですね…!」
チハヤ先生は「対校戦争」には協力的だ。毎年、森本先生と共に、いつも張り切って準備をしてくれる心強い先生だ。
でも、結果次第では廃校になる、ということはまだ他の先生達には伝えないでおく。
そして、対戦相手の高校の情報も。
今伝えれば、もしかして…いやもしかしなくても大きく士気に影響するはずだ。
それに例の誘拐事件の首謀者の記憶から引き出した情報。それを辿った調査結果が今日出ることになっている。もし、私の予想通りならば…これも今回の件に大いに関わる話になるはずだ。
だから、然るべきタイミング…校内選抜が終わった、明日の時点で私から皆に打ち明けるつもりだ。
◇◇◇
「「「校内選抜?」」」
朝のクラスルームで、チハヤ先生はそう言った。
「ええ、だから今日から一週間ほど、授業はお休みよ」
チハヤ先生の言葉に、クラスのいろんな場所から歓喜の声が挙がる。
「はいはい、静かに!代わりに校内選抜と特別強化練習があるんだからね?まず、知らない人も多いと思うから、『異能学校対抗戦争』のルールを説明するわね!今配ったプリントを見てもらえるかしら?」
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〜『異能学校対抗戦争』開催のおしらせ〜
異能学校対抗戦争、略して「対校戦争」は異能高等学校の生徒同士を戦わせ、生徒達にちょうど良い「戦闘の機会」を提供することを目的とした行事です。
来週、二つの学校が、互いのプライドを賭けて、以下の種目で対戦することになります。
◆第一部 タクティカルウォーズ (参加者 計30名)
◇Aブロック 前半30分+後半30分
◇Bブロック 前半30分+後半30分
◇Cブロック 前半30分+後半30分
◇Dブロック 前半30分+後半30分
◆第二部 代表戦(参加者 3名)
◇代表一戦目
◇代表二戦目
◇代表三戦目
※代表戦は制限時間60分
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「まず、「タクティカルウォーズ」の説明からするわね。タクティカルウォーズはいわゆる団体戦。出場校の生徒は、合計で30名でこの種目を戦うことになるわ。」
チハヤ先生は黒板に「30人」という数字を書き込んだ。
「ちょっと競技として変わっているのは、タクティカルウォーズはA・B・C・Dの四つのブロックに分かれて戦い、その全部の参加者の合計が30名となるように選手を配置するの。Aブロック7人+Bブロック8人+Cブロック7人+Dブロック8人とか、Aブロック10人+Bブロック10人+Cブロック5人+Dブロック5人ということもできるわ。あまりないけど、A24人+B3人+C2人+D1人なんて極端な構成も認められてるわ。」
先生はまた、黒板に「A7+B8+C7+D8」「A10+B10+C5+D5」「A24+B3+C2+D1」と書き込んだ。
「こんな風にチームメンバーの相性や戦術次第で、自由な配分ができる。それがタクティカルウォーズよ。対戦する学校は4チームそれぞれで競い」
続けて、先生はルールの説明をした。
「試合時間は前半30分、インターバルを挟んでまた後半30分の合計60分よ。それまでに全員倒されたり、審査員が戦闘続行不能と判断したら試合終了よ。」
そして先生は「戦闘不能」の文字を太字で書き、脇に矢印を伸ばし、ケガ、重傷、戦意喪失、と書いた。
「戦闘不能とみなされるのは、ケガしたり重傷を負ったり…動けなくなることかしら。戦意を喪失していると審判が判断しても戦闘不能、失格になるわ。まあ、安心してね?試合場には優秀な救護班や蘇生班がいるから少しぐらいのケガなら大丈夫だから!」
クラスの後ろの方で小さく「蘇生班?」…という不安そうな声が聞こえた。
「次に、代表選。これはつまり、個人戦ね。簡単に言うと、その学校で一番強い生徒が学校の錦の旗をかけて一対一で戦うの。言わば、デスマッチね。」
そう言いながら、チハヤ先生は黒板に「デスマッチ」と書くとその右上に小さくて可愛いドクロマークを描いた。
学校で一番強い生徒…か。
私は世間で名門とされる霧島家に生まれていながら、今までそんな立ち位置には無縁だった。
でも、今なら…
チハヤ先生は説明を続ける。
「対校戦争の勝敗は、団体戦タクティカルウォーズのABCDの各ブロック、そして3つの代表選、合わせて7試合でより多く勝ち星を得た方が「勝ち」になるわ。団体戦で3勝した後、代表選で1勝すれば勝ちになるし、団体戦で1勝しかできなくても、代表選で全勝すればそれも勝ちよ。ある意味、とっても簡単なルールね。」
とにかく、4勝すればいい。シンプルなルールだ。
「ルールの説明は以上よ。説明した通り、出場する選手は団体戦・個人戦合わせて33名。重複の出場は認められないわ。出場選手は個人がいいか、団体がいいかの相性も含めて、慎重に選ぶ必要があるの。」
個人か、団体か…私は、どちらに適性があるんだろう?
「というわけで…これから出場選手を決める、校内選抜を行いたいと思います!まずは、体力測定から!みんな、体育着に着替えて外に出てね!」
先生の号令でみんなが更衣室に向かう中、私は朝からずっと気になっていたことを先生に聞いてみた。今朝からずっと、あの人がいないのだ。
「チハヤ先生。芹澤くんが…いないみたいなんですけど、今日はお休みなんですか?」
「芹澤くん?ああ、彼は今、校長と一緒に特別訓練をしてるって聞いたわ。今回は彼、特別待遇らしいのよね〜。大丈夫、試合にはちゃんと出場するはずだから。」
「特別訓練?」
「ええ。私も詳しくはわからないけど…どこかの山で合宿してるって聞いたわ。」
「そ、そうですか…」
山で合宿?どこのトレーニング施設だろう…?
「それよりほら!体力測定始まっちゃうわよ!」
「あ、はい。わかりました。ありがとうございます!」
そして私は、急いで更衣室に向かった。
<…体力測定中…>
「ハハハ!!!みんな、もうバテたのかい!?トレーニングが足りんぞ!もっと筋肉をつけよう!」
森本先生の監督のもと、一通りの体力測定が終わった。
みんなが地面に座り込み、肩で息をして居ると、今度はチハヤ先生がジャージ姿で現れて言った。
「はい、体力測定お疲れ様!次は異能測定よ〜!それぞれの担当の先生の指示に従って、異能を発現して見せてね〜!」
今日は、結構忙しいんだなぁ…
<…異能測定中…>
みんなの異能の実演が終わったようだ。
私の実演は結構うまくいったと思う。
私の担当はチハヤ先生だったけれど、私の異能の新しい使い方を見せると彼女はすごく驚いて居るようだった。それも当然よね。私自身、この変化はちょっと信じられないもの。これもみんな彼のおかげよね…
「よ〜し、みんな!異能測定は終わったかな?じゃあ最後に、戦術的思考をテストするから!もう疲れた?文句言わない!!実技とペーパーテストがあるからね〜!」
<…戦術適正実技中…>
「はい、じゃあ教室に移動して、ペーパーテストね〜!ズルしちゃダメよ?」
<…戦術適正ペーパーテスト中…>
「はい、テスト終了!回収するよ〜!じゃあ、あとは結果を集計して、職員で協議するから教室で待機しててね〜!」
<…職員協議中…>
「はい、みんなお疲れ様。測定結果と職員達の話し合いで順位を決めたわ。うちのクラス、「1-A」の上位5名を発表するわね。あくまで今回の対校戦争のための戦闘力を示した学内の評価で、暫定的なものだから、低いからって気にしちゃダメよ?」
ーー 対校戦争校内選抜 ーー
ー 戦力測定結果 上位五名ー
順位 氏名
一位 赤井ツバサ
二位 霧島カナメ
三位 御堂スグル
四位 弓野ミハル
五位 黄泉比良ミリア
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「じゃあ、とりあえず優秀な順から評価を紹介をするわね。まずは一位の赤井くんから。」
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一位 赤井ツバサ
『【炎を発する者】S-LEVEL 3』
体力評価 A+
戦術評価 A
異能評価 S
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「赤井くんはさすがね。全てが高水準。どこに出しても恥ずかしくない逸材ね。代表選のひと枠はほぼあなたで決まりね。でも、連携や団体戦はちょっと苦手みたいね。それは今後の課題というところかしら。」
「次は、二位。霧島カナメさん。」
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二位 霧島カナメ
『【物を切断する者】S-LEVEL 1』
体力評価 A
戦術評価 A+
異能評価 A+
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「霧島さんは…驚いたけど、入学前と異能の使い方が随分変わったのね。多分…再鑑定を受ければ最低でもレベル2にはなってるんじゃないかしら。
あなたも体力、戦術的思考、異能、全てが高水準ね。個人戦、団体戦どちらでもいけると思うわ。」
「そして三位は…御堂くんね。」
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三位 御堂スグル
『【姿を隠す者】S-LEVEL 1』
体力評価 A+
戦術評価 A
異能評価 C
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「御堂くん、あなたは…ちょっと何でかよくわからないけれど強いわね。敵の攻撃を回避することにかけては、きっと戦場でも通用するんじゃないかしら…森本先生でも捕まえられないってスゴイことよ?
その点が評価されて三位の評価になったわ。でも、戦闘中の女生徒に対するセクハラは自重しなさい?戦場に行く前に刑務所に行くことになるわよ?」
「次は、弓野さんね。」
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四位 弓野ミハル
『【見えないものを見る者】S-LEVEL 1』
体力評価 A
戦術評価 A+
異能評価 C
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「弓野さんは、遠距離攻撃が得意なスナイパータイプね。異能と組み合わされば、かなりの素質を持っているわ。対校戦争では火器を除いた武器の使用が認められるから、当然弓もOK。あなたは団体戦向きね。」
「そして第五位。 黄泉比良さん。」
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五位 黄泉比良ミリア
『【人形を操る者】S-LEVEL 1』
体力評価 E
戦術評価 B+
異能評価 S
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「ちょっと体力には不安があるけれど、団体戦でのあなたの能力はとても強力ね。ルールは破ってないけど、ほとんどチートといってもいいわ。
というか、あの異能の使い方、今まで誰にも見せたことないの?きっとそれを鑑定官の前で見せてたら、あなた…とっくにレベル3でもおかしくないわよ?」
チハヤ先生からの、上位5人の紹介が終わった。
「以上、1-Aの上位5名と1-Bの上位5名から、代表戦のメンバーが選ばれることになるわ。結果は、今日の夜の先生方の会議で決まると思うから、明日の朝の発表ね。ひと枠は、もう決まったようなものだけれどね。」
そこに手を上げる男子生徒が一人いた。
いつも、芹澤くんと一緒にいる短髪で髪の毛をツンツン立てている男子生徒、植木ヒトシくんだ。
「はいはいはいッ!!!先生!俺はッ!?俺の評価はどうだったんですかッ!?」
「植木くんね…自分の評価が気になるの?ええと君は…」
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二十七位 植木ヒトシ
『【植物を成長させる者】S-LEVEL 1』
体力評価 B
戦術評価 E
異能評価 E
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コメント:あともうちょっとです。頑張りましょう。
戦力評価基準
S 超スゴイ
A スゴイ
B 優秀
C 普通
D ニガテ
E 絶望的
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人物ファイル020
NAME : 弓野ミハル
CLASS : 【見えないものを見る者】S-LEVEL 1
弓道女子。異能は人が見ることの出来ない可視外光や、音、風、温度なども視覚的に「見る」ことの出来る能力。
戦闘には向かない能力とされるが、弓野家は昔から武道に優れた家系であり、その名の通り弓術や剣術、古流武術などを納めており、異能力との相乗効果で対人戦においては無類の強さを発揮する。異能の評価が低いのは、武術の師匠である祖父のアドバイスにより、意図して「あえてそう見える」ように巧妙に偽装している為。銃器、特にスナイパーライフルの扱いも出来る。
ちなみに御堂スグルの天敵である。
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