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02 入学式の日

3/26 あとがきに人物ファイルを追加しました。

「え〜、であるからしてぇ〜、みなさんの学校生活はぁ〜」


 今日は入学式だ。


 俺は校長先生の「お話」を聞きながら、少し涙ぐんでいた。


 国立帝変高等学校。

 それが俺が今日から通う学校の名前だ。

 国立というと結構優秀な奴らが集まるイメージがあるが、実際は違う。


 この国が異能者の武力を礎とした軍事大国となってから、若い異能者を養成する学校が多く設立された。

 最初は国によって学校が作られだけだったが、次第に大企業が大金を出した私立学校が出来始めると優秀な教員は皆そちらに流れ始めた。


 今のご時世、資金力のある者は格段に良い教育環境を求めて私立学校に通う。それに「優秀な異能を持つ」と国から判定された者たちも、ほとんど全員が良好な環境である私立学校を選ぶようになった。国から「良い教育環境を選択する権利」が与えられ、学費は完全免除されるからだ。


 そうして、そこからあぶれた者…つまり、「あまり有用でない異能」や「人格や能力に問題がある」生徒が国立に集まるようになった。その中でも、帝変高校は国の学校格付けランクの「F」ランク。数ある異能者養成学校の中で、ぶっちぎりの最低ランクである。


 つまり、「掃き溜め」。

 学校内では行き場のない荒くれ者、腐っても異能力者が暴れまわり、すこぶる治安が悪いらしい。

 ネットの掲示板にそう書かれているのを読んだときは涙が止まらなかった。


 さよなら、俺の初恋の人、さよなら、俺の楽しい高校生活。


 あ、だめだ。

 入学式なのに泣きそう。


 ……にしてもいつまで続くんだこの話?

 体感でもう一時間ぐらい経ってるんだが。


 時計の針ほとんど動いてないぞ?




 ◇◇◇




 永遠に続くかと思われる校長先生のお話が終わり、俺たち新入生たちは解放された。

 体感で四時間ぐらいだったが、実際は5分しか経っていなかった。

 なにこれ、怖い。


 まあとにかく、理解できないことは忘れて、俺は自分の教室に行くことにする。

 今日は担任の先生と顔合わせしたら帰っていいらしいし、さっさと終わらせて帰ろう。

 そう思って廊下を急いでいたところだった。


「ギャハハハハハ!!! 留年だってなァ、黄泉比良(よもひら)ちゃんよぉ!!」


 下品な笑い声が廊下に響き、俺の前の方でとても小柄な黒髪ロングの少女…

 ここにいるってことは高校生だよな?


 にしては小さいな?中学生?下手したら小学生ぐらいか?

 なんか洋人形らしきものを大事そうに抱えている。

 それはさておき、その少女は見るからに世紀末なモヒカンの学生に絡まれているようだった。


「ギャハハハハ!! 勉強がわからなけりゃ教えてやったのによォ!全国偏差値75のこの俺がなぁ!」


 マジで!? このモヒカンそんなに頭いいの!?

 ていうかあんな小さい子に迫ってるの?

 マジか? ロリコンなのコイツ?

 色々と終わってるな……


 じゃなくて。

 絡まれている少女は明らかに怯えている。

 助けに入るべきだろうか?

 そう思っていると俺の隣にいた新入生が驚いたような顔を浮かべた。


「あの特徴的な笑い声……! ア、アイツはもしかして……」


「知ってるのか?」


 隣の新入生があのモヒカンのことを知っているようなので聞いてみることにした。


「ネットの掲示板でな。話題になってるヤバい上級生がいるんだよ……」


「ヤバいって……どれくらいだよ?」


「奴は帝変高校二年の風紀委員、桐崎ノボル。異能評価は【万物を切断する者(ディバイダー)】だ。それも、レベル2。人間なんて簡単に八つ裂きにできるぜ…」


 風紀委員!?あの頭で!?

 いやそれよりも……物を切断する能力!?


 ヤバい。

 あの性格と能力が噛み合わさってヤバい。


 …駄目だな。

 俺に何とかできる相手じゃない!

 ここは、様子を見よう…


「ギャハハハ!! いいから俺の彼女になれよォ、な?悪いようにはしねェから。」


「…っ!」


 頬を赤らめたモヒカンが少女の腕を掴む。

 うろたえた彼女は手に持っていた人形を落としてしまった。


「うーん?汚ねえ人形だなァ?高校生にもなってお人形遊びかぁ?ギャハハハ!!」


 そう言いながら、その男、桐崎ノボルは床に落ちた人形を思い切り踏みつけた。


「…っ!!!」


 少女は、明らかに狼狽した。

 前髪で顔が隠れてよくは見えないが、目にいっぱいの涙をためているのがわかる。

 人形を足蹴にしながら、桐崎は言った。


「相変わらずくだらねえ趣味だなぁ。だから友達も出来ねえんだよ。俺が、もっといい趣味を教えてやるぜ?」


 ……くだらない趣味?


 ああそうか、あいつは彼女の人形のことをくだらない趣味と言ったのか。

 そうか、くだらない趣味……ほう。ほほう……成る程。


 かくいう俺も、石仏めぐりという趣味があってだな…


 あのご尊顔、見ているだけでもほっこりする。

 各地域に独特の特色があって…どれも温かみがあるものだ。

 そうそう、あの女の子の人形もなかなか、造形的に興味深いものがある。

 きっとセンスのある造形師が魂を込めて作ったものなのであろう。

 どことなく、石仏に通じる詫びた風情を感じさせる。


 それが、今、足蹴にされて……踏みつけられている?


 誰に?

 なんで?


 ……『くだらない趣味』?


 プツン


 頭の中で、何かが切れた音がした。

 俺はゆっくりとモヒカン上級生、桐崎ノボルの前に歩み出た。


「なンだぁ?お前。俺の邪魔すんの?死にたいのか?」


「……人の……趣味を……」


「あん?何だあ、聞こえねえよ、クソガキ。」


 俺は拳を握り、思い切り息を吸い込み、叫んでいた。


「人の趣味をッ……馬鹿に、すんじゃねええええええええ!!!!!!」


 温度を変える異能 【温度を変える者(サーモオペレーター)】を持つ異能者、芹澤アツシ。

 沸点はとても低い模様。

人物ファイル002


NAME : 桐崎ノボル

CLASS : 【万物を切断する者(ディバイダー)】S-LEVEL 2


帝変高校の二年生。風紀委員会所属。元同級生の黄泉比良さんに想いを寄せる不器用な男。モヒカンは春休みにイメチェンを計った結果である。


<特技>

切裂 ティアー

切断 ディバイド

切出 カットアウト


///


4/6 同時連載でこんなの(↓)初めて見ました。わりと本格(?)ファンタジーの転生モノです。こちらも不定期更新ですがよろしくお願いします。


【超絶美少女】となった俺は自分と結婚したい

https://ncode.syosetu.com/n4293er/

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