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18 曇りなき満天の星空

 芹澤くんを家から送り出した後ー


 私は校長室の掃除を終え、いつものように(・・・・・・・)校長室の書類の整理をしているところだった。

 持ち上げた書類の隙間から、一通の赤い封筒がはらりと地面に落ちた。

 私は確認の為、その封筒の中身に目を通して愕然とした。


「お、お父さん!? な、何この手紙!? 私、こんなの知らないわよ!?」

「おう。届いてたなぁそんなの。何て書いてあるんだ?」


 私は頭を抱えながら漢字の読めない(・・・・・・・)お父さんに代わって文書を読み上げる。


 ーーーーーーーーーー


 国立帝変高等学校

 学校長殿


 貴殿に置かれましてはご健勝のことと存じます。


 さて、昨今の厳しい財政難により、毎年恒例で行われる『異能学校対抗戦争』に於いて全戦全敗中の貴校(評定Fランク)にまで回す国家予算が無くなりつつあるのが現状です。


 つきましては誠に遺憾ながら、文武科学省、及び異能学校連盟としましては、次春の対校戦に於ける貴校の成績次第では、貴校に割り当てている教育特別予算の全額没収、及び、貴校を廃校・明け渡し処分と致すこと決定いたしました。


 貴校のご健闘を心よりお祈り申し上げます。


 文武科学省長官・異能学校連盟会長

 伊能直義


 ーーーーーーーーーー


「…で、どういうことなんだ?」


 ただ読んだだけでは理解してくれないだろうことは分かっているので、私は少し要約して伝える。


「要は…次の対校戦争で帝変高校が負けたら、廃校にしますって書いてあるの。差出人はあのイノウよ。」

「そうか。イノウの野郎か…あの野郎、ぶん殴ってやる!!!」


 私は即座にお父さんを制止する。


「ダメよ!!!これは、そう言う手紙じゃないの。文武科学省と異能学校連盟の署名があるわ。これは…公式決定の通告なの。逆らったりしたら国家反逆罪になるわ。」

「じゃあ…何すりゃいいんだ?」

「…」


 春の対校戦は一週間後(・・・・)

 あまりに、時間がない。


「ともかく、対策を練りましょう」




 ◇◇◇




 そして、ひと通り、状況を説明した後に校長(おとうさん)に意見を求めたのだが…


「何だ、要は勝ちゃあいいんじゃねえか」


 私はまた頭を抱えた。


「お父さんはそう簡単に言うけどね…お父さんが戦うんじゃないんだよ?次の春の対校戦は一年生が戦うんだよ?」


 次の春の対校戦は一年生が戦うことになっている。それぞれ、夏は二年生、冬は三年生と、時期が決まっている。

 それにしても、よりによって一年生か…


 してやられた。私は唇を噛む。

 イノウは明らかに狙って、帝変高校が「最も勝てる見込みの無い機会」を条件に設定してきた。明らかにうちを潰そうとしている。


 まあ、お父さんとイノウの関係から言って当然といえば当然、そう言う動きをすることも視野に入れていたのだが…

 急すぎる。事前に知っていればもっと他に打てる手はあったというのに…

 何か、今から出来ることは…!?


「なあ、俺は何すればいいんだ?」


 この人は本当に、闘うこと以外は……

 でも、この時、私の脳裏に一つの可能性が浮かんだ。


「お父さん、ひとつ、お願いがあるんだけど……」


 私は一つの可能性に賭けてみることにした。

 彼…もしかして、彼ならば。

 いいえ。彼と、お父さんなら、きっと…

 不可能を可能にしてくれるはずだから。




 ◇◇◇




「ふふふ、フフフフ、フへへへへへ」


 街行く人が俺の方を振り返る。


 まあそれも仕方がない。

 変な笑いも出ようものだ。

 今日ぐらいは許してほしい。


 なぜならー


 俺はあの子から「ほっぺにチュー」してもらったからである。

 あの霧島さんにである。


 俺がクラスで一番、いや、学校で一番と認める美少女、あの霧島さんのほっぺにチューをゲットしたのである。


 俺としてはいきなりベロチューでもまったく問題は無かったのだが、何事も段階というものがある。

 とにかく俺は本日、あの柔らかく幸せな感触をゲットしたのだ。

 今夜は自然と色々捗ろうと云うものだ。


 さらに。


 さらにッ!


 俺は今日から玄野メリア先生の家にお泊りすることが決定しているのだ!

 今日から俺は花の居候ライフ、言い方を変えれば、ひとつ屋根の下に金髪眼鏡美人ライフだ。


 俺の高校生活、始まったな!!!

 ここから、俺の未来は薔薇色に輝くのだ!!!!


 ああ、今日の晩御飯何かなぁ〜!?

 た〜のしィ〜みだなァ〜!!!


 俺がそんなことを考えてウキウキしていると、気づけば目の前に野生の校長…もとい、玄野家のゴリラが立っていた。


「おう。迎えにきたぞ」


 迎えに?わざわざ?ここは、出迎え御苦労とか言うべきところだろうか?

 でも、もうメリア先生の家までは目と鼻の先だぞ? 律儀なゴリラである。


「じゃあ、ちっとばかし飛ぶぞ(・・・)

「え?」


 そう言うとゴリラはいきなり俺をお姫様抱っこしたかと思うとーー


 遥か上空までジャンプした。


 そのあまりの急加速に俺は気を失い…………




 ◇◇◇




 …………


 ……気がつくと、俺は山の中にいた。


 近くで焚き火がパチパチと音を立て、俺の顔を照らしている。

 隣ではあのゴリラがフゴーフゴーと寝息を立てている。


 俺は奴はあれからてっきり玄野家に帰るものとばかり思っていたのに、ゴリラの帰巣本能に従って、うっかり山まで来てしまったのだろうか?


 ここはどこ???

 そして…愛しのメリア先生はいずこ?


 俺の金髪眼鏡美人と同棲ライフは?

 順風満帆な高校生活は?


 …どこ?


 悲しくなった俺は天を仰ぎ、空を見上げー


 ー 鳥肌が立った。


 頭上には今まで見たこともない、とんでもなく美しい満天の星空が拡がっていたからだ。


「いやマジで…ここ、どこ…?」


 これは悪い夢かな?

 にしては星空きれいだなぁ…


 そんなことを思いつつ…俺は目を閉じ、そのまま睡魔に身を委ねるのだった。

続きが読みたい、と思ってくださったら、ブクマや下からの評価をいただけると、継続のモチベーションに繋がります!気が向いたらよろしくお願いします!

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