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16 帝変高校の授業風景

 ここで語られるのはーーー


 帝変高校1-Aクラスの、ごくごくありふれた日常の一コマである。



 ◇◇◇



 ー 一時間目 ー


   『国語』




 1時間目。

 記念すべき入学してからの初授業である。


「クラスルームで自己紹介は終わったし、早速授業を進めるわね。あと、授業に集中してないと判断したら、容赦無く私のチョークが飛ぶからね〜!」


「「「は〜い」」」


 担任のチハヤ先生による「国語」の授業が始まった。


 しかし、早速、眠くなって来たな。

 実は、昨日はあのゴリラの寝相のせいでよく眠れなかったのだ。


 俺は何度か、夜中ベッドからゴリラに蹴落とされた。

 諦めて床で寝るという選択肢もあったのだが、何故に人間様がゴリラにベッドを譲らねばならないのだ。俺にも霊長類としてのプライドがある。


 そんなわけでこちらも意地になってベッドで寝てやろうと色々格闘したのだが…

 その結果が、ゴリラの腕枕で朝を迎えるというトラウマ的な朝チュンである。

 しかも俺は昨日、あのダサ迷彩ジャケット野郎と死闘を繰りひろげたのだ。当然その疲れも残っている。


 まあそういうわけで、今すんごく、眠い。

 チハヤ先生も、それは知っているだろうし、ちょっとぐらいの居眠りなら許してくれるだろう…

 そう思って俺は睡魔に身を委ねようと…


 パシュン。


 俺の耳元を何か棒状のものが通過した。

 後ろを振り返ると、コンクリートの壁に小さな丸い穴がひとつ増えている。


「今…寝ようとしてたわね?」


 ブンブンブンブン。


 容赦ねえな、この人!!!

 俺の認識が甘かった。

 この人は「戦場で寝たら死ぬわよ?」とかいうタイプだ。

 ダメだ、ここで寝ることは即、死を意味する。ちょっと別の時まで我慢するとしようか…


 さて、目が覚めたところで俺はチハヤ先生をよく観察してみることにした。

 黒髪をセミロングで切り揃えたチハヤ先生は、いかにも人気出そうな女教師って感じの美女だ。

 ただ、ちょっと胸が小さいというか俎板というか平たいのが勿体n…


 ピシュン。

 ボゴン。


 俺の耳元を何か四角いものが通過した。

 後ろを振り返ると、コンクリートの壁に長方形の穴がひとつ増えている。


「今…なんか失礼なこと考えてなかった?」


 ブンブンブンブン。


 俺は必死で首を横に振った。


「そう?ちゃんと授業に集中してね。」


 先生はにこやかにそう言うと、授業に戻った。


 …

 ふう…死ぬかと思った。俺の心の声が聞こえた?まさかな…多分、視線だ。

 それで分かってしまったのだ。


 俺は視線を教科書と黒板の板書きから外さないようにして思考を続ける。


 先生は確か、未婚の29歳だっていってたっけ?

 恋人は…居なそうだな。

 まあ、この性格じゃあ、仕方がn…


 パシュシュシュシュ。


 俺の耳元を高速で数本の棒状のものが通過した。後ろは…見なくても分かる。


「今………何も思いつかないけど。勘よ」

「すいませんでしたああ!!!!」




 ◇◇◇



 ー 二時間目 ー


   『体育』




 俺達は体育の授業のため、体育着を着てグラウンドに出ている。

 この学校の数少ない良いところは、ここに凝縮すると言っても良いだろう。


 それが何かって?

 体育着である。もちろん、男子用の話ではない。

 ここは古き良き文化、「ブルマー」を継承する数少ない高校なのだ。


 俺が古き良き伝統文化に戸惑う女生徒たちを眺め、悦に入っていると、体育の教師、森本モリ夫先生が集合の合図をした。


 そして、俺たちは綺麗に整列をし、体育すわりで筋骨隆々の先生の自己紹介に望んだ。

 森本先生は開口一番、


「ハハハ!筋肉はいいぞ!筋肉があれば、世の中大抵のことはなんとかなる!私はそういった筋肉の素晴らしさを君達に伝えたい!」


 と、熱い想いを語ってくれた。


「例えば!」


 先生は、「30kg」と書かれた鉄球を手に持ち、


「見ておきなさい!これが筋肉の力だあああああ!!!!」


 そう言うと、思い切りぶん投げた。

 みるみるうちに鉄球は空の中に吸い込まれ、だんだんと小さくなり、そのまま見えなくなった。


「これが、筋肉の力だ!筋肉の良いところってのはな、鍛えれば、これぐらいは平等に誰でもできるってことだよな!!!」


 クラスの皆は体育すわりのまま、遠い目をしている。

 俺は率直な感想を口にした。


「先生!頭の中まで筋肉で出来てるみたいってよく言われません?」


 その質問に森本先生はグッと親指を立て、


「ああ!みんな、そうやって俺のことを褒めてくれるよ!!!」


 爽やかに、満面のグッドスマイルで語ってくれた。

 俺の質問は先生の(きんにく)には届かずに虚空の彼方へ消えて行ったようだった。




 ◇◇◇



 ー 三時間目 ー


   『数学』




「は〜い、ではこの問題、解ける人はいるかなぁ〜」


 数学の時間。教師は、数学と物理と化学兼任の科学系教師、九重デルタ先生だ。

 自己紹介もそこそこに、黒板に問題を書き、分かる人はいるか?と聞いているのだが。


 ーーー全ッ然わかんねえ。


 見たこともない記号が羅列された複雑な数式が黒板に描かれている。

 読み方もさっぱりわかんねえな。


「これはね〜、世界中の学者が百年かかっても解けていない難問なんだよ〜」


 解けるかよ。


 …まあ、こう言うデモンストレーションなんだよな。

 解けない問題を出して、数学にはこう言う世界もあるんだよ?と教える、生徒に興味を持ってもらうための。よくあるやつだな。


「…あの…」


 そこに、手を挙げる生徒が一人いた。

 小柄で長い黒髪の…

 見た目が小中学生にしか見えない、黄泉比良(よもひら)さんだ。


「お、質問かい〜?感心だね〜」


 九重デルタ先生がそう言うと、黄泉比良(よもひら)さんは首を振る。


「…違う…わかった…」


 …


 マジで?


 九重デルタ先生は一瞬、戸惑ったようだが、


「…ほほ〜お!すごいね〜!じゃあ、解いてみて〜!」


 すぐに余裕の表情で、黄泉比良(よもひら)さんに回答を促す。

 きっとどうせ解けるわけがないから、やらせて見て初歩的な間違いを指摘してあげようと言うことだろう。

 まあ、そうだよな。

 そして黄泉比良(よもひら)さんはうなづくと、黒板の前に出て、小さな字でカリカリとみたこともない数式を書いていく。


 最初は、「ほほお〜」「へえ〜」とか、「おお〜よく勉強してるね〜」とか黄泉比良(よもひら)さんに感心している風のデルタ先生だったが、だんだん、無言になり、「そんな馬鹿な」とか「そ、そんな解法が!?」とか驚くリアクションが多くなった。


 そして、10分程度が過ぎた頃だろうか。


 デルタ先生の顔色がとても悪い。と言うか、土気色をしている。

 そして、さっきからうわ言のように「馬鹿な…ありえない…」「こ、こんなことがあってたまるか」「これは…神の数式なのか…」とか繰り返している。


 さらに20分後…


 黒板は、すでに書き込むスペースがないぐらいに数式でいっぱいだった。

 これどこにももう書けないだろ…と誰もが思っていたところで、丁度、黄泉比良(よもひら)さんの黒板に数式を書き込む音が止んだ。


「…できた。」


 彼女は振り返り、回答完了を宣言する。


「うふ、うふふふ〜…これは大発見だわぁ〜…」


 デルタ先生はすでに、動かぬ立像となっていた。

 いつのまにか何処かの世界に旅立っているようだった。

 おぼろげに、デルタ先生が光り輝く壁のようなものに囲まれているように見えた。


「せ、先生!?どうしたんですか!?」


 さすがに、それを見てクラスの生徒たちが騒ぎ始めた。

 騒ぎを聞きつけて、他の教師たちも駆けつけてきた。


「まずい!デルタ先生がまた自分の結界に閉じこもったぞ!」

「どうする!?これでは…誰も手が出せんぞ。」

「放っておくしかないだろ。こうなると一週間はこのままだ。」


 そう結論を出した教師たちは


「そう言うことだ!…ここからは、各自、自習ッ!!!」


 そう宣言し、殻に閉じこもり動かぬ彫像と化したデルタ先生を「えっほ、えっほ」と教室から運び出して行った。




 ◇◇◇



 ー 四時間目 ー


  『世界史』




 世界史の授業の担当は、本宮サトル先生。昨日、関節がぐちゃぐちゃになった白衣の男の首を持って、ゆさゆさブンブン、高速シェイクしていた人だ。


 ああ、きっとこの人もヤバい人なんだろうなと俺が身構えていると、


「僕は無駄なことが嫌いなんだ。早速、授業を始めよう。物事は、効率的に終わった方がお互いのためだと思うからね。」


 そう言うと、テキパキと世界史の授業を始めた。

 説明が的確で、重要な部分はわかりやすく、無駄なく教えてくれる。

 授業がとてもわかりやすい。結構この人の話、面白いかも?


 …あれ、この人は比較的、まともなんじゃないか?


 俺がそう思った、その矢先だった。


「ハイハ〜イ!ここからはテストに出るからね!有料だよ!」


 突然、この教師は金を要求し出したのだ。

 当然、意識高い系の生徒は異議を申し立てる。


「せ、先生!それではお金を払わない人はテストの出題範囲も分からないってことですか!?」


 その当然とも言える疑問に対して、本宮先生は答えた。


「なぁ〜に、出題範囲なんか分からなくても、教科書全部丸暗記すれば良いじゃんか!問題ないって!」


「ふざけんな!!!」

「出来るか!!」

「横暴だ!!」

「…黄泉比良さん今日も可愛いわぁ…食べちゃいたいわぁ…」


 クラスから様々な怒りの声が上がる。

 一部変な声が混じっている様な気がするが。


「フフフ…そう思うかい?…そんな君達のために!!!」


 バンッ!!

 本宮先生の背中から赤と黄色の文字が目に痛いチラシが貼られたボードが出てきた。


「本日はお得な『〜記憶力絶対良くなるプラン〜』松コース・竹コース・梅コースをご用意しました。」


 教室が一瞬、静まった。

 授業中に教師が割とガチで商売の話をしだすという事態に誰もが困惑する中、最初に口を開いたのはあの(バカ)だった。

 その(モヤシおとこ)は緊張の面持ちで大きく息を吸い込むと、意を決めた様に、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「先生、でも…お高いんでしょう?」


 本宮先生は…その言葉を待っていたとばかりに、ニヤリと口の端を釣り上げる。


「それが、な、な、な、何と!!!

 今なら梅コース1000万円から!!!竹コース1億円、松コース10億円のご奉仕価格ですっ!!!」


 そして今、クラス全員の心が一つになった。


『『「払えるかボケェェェ!!!!!!」』』


「チィッ!!物の真の価値が分からぬ貧乏人めらがッ!!!」


 そして以後、世界史の授業は罵詈雑言の応酬の嵐となったのである。

四時間目「本宮先生 VS 1-Aクラス連合」口撃合戦


ちなみに、記憶力が確実に伸びるなら10億円は安いなあとか思ってるお嬢様が一人。


///


人物ファイル017


NAME : 森山モリオ

CLASS : 【筋肉を操る者(マッスルビルダー)】S-LEVEL 3


帝変高校の体育教師。30歳、既婚。筋肉ムキムキである。異能もそのまま、『【筋肉を操る者(マッスルビルダー)】』。あらゆる筋肉を、瞬時に強化することができる。異能で強化された筋肉はアンチマテリアルライフルでも易々と貫けない。その筋力は通常の筋力を基準として強化されるため、筋力トレーニングに余念がない。「筋肉があれば何でも出来る」がモットー。素手の一振りで家屋を吹き飛ばしたり、突きの爆風で岩を破壊したりと色々と危ない技を持っている。


<特技>

筋力強化 ビルドアップ


///


人物ファイル018


NAME : 本宮サトル

CLASS : 【記憶を操作する者(メモリーエディター)】S-LEVEL 2


世界史・地理・帝国史の教師。32歳、独身。ことあるごとに生徒から金を毟ろうとしてくる。割と優秀で、かつて、より給料の良い私立高校の教師をしていたが、あまりにも金にがめつい性格が問題視されクビになったところを現校長に拾われた。

帝変高校には「本宮先生を怒らせると記憶を消されるが、お金を払うとちゃんと戻ってくる」という噂がある。好きな言葉は時短。効率厨である。


<特技>

記録 メモリー

消去 イレース

編集 エディット 


///


人物ファイル019


NAME : 九重デルタ

CLASS : 【点と線を結ぶ者ディメンジョンコンバーター】S-LEVEL 2


数学・物理・化学を教える女性教師。27歳、未婚。短髪で銀縁丸メガネをかけており、なぜかいつも厚着。いつもコンパスと定規を持ち歩いている。天才的な頭脳を持つが、自分の興味を持つことにしかそれを発揮しない変人。あらゆる事を計算式で処理しないと気が済まない。

異能は「点と線を結ぶ」という能力。点と点を線で結び面にすることで「障壁」を作り出すことができる。同様に点と線で立体を描くと結界になる。編み物と自分の結界の中に閉じこもるのが好き。


<特技>

点 ポイント

線 ライン

面 サーフェス 

次元創造 ディメンジョン

次元変換 コンバート


///


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