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119 森の中の戦争20 地駆ける雷神5

「それで……この辺りに『敵』がいると聞いたんだが、君たち何か知らないか? そういえば、水沢になにも聞かないまま来てしまった。うっかりしていたな、ははは!!」


 男は呑気な様子で頭をかきながら、顔に似合わず快活な笑い声を上げ『壁』の向こうの二人に話しかけ続けていた。


「あれは……誰だろうね」


 その親しげな様子から、御堂は迷った。

 帝変高校の制服を着てはいるが……あの男は敵か、味方か? だが幸いあの二人の男の動きが止まっている。その隙に御堂は芹澤の元へと走る。だが、辿り着いたところで逃げられるわけではない。まだ辺り一帯を覆うあの巨大な『壁』はそのままだ。


 もう(芹澤アツシ)には時間がない。

 この状況から、どうすればいい? どうすれば芹澤アツシを助けられる?

 御堂は必死に思考を巡らせながら植木と合流し、走る。

 だが向かうその先、『壁』の奥から僅かに光るものが見えた。


「今度は何だ……? ……………………ッ!?」


 刹那、目を潰さんばかりの閃光と雷音。


 衝撃と共に白い稲妻(・・・・)が芹澤アツシのすぐ脇に落ちたのが分かった。

 その稲妻の軌跡は『透明な壁』を避けるように、上空へと弧を描いていた。


「……なんだ……白い…………狐?」


 気づけば、芹澤の脇には白く輝く小さな狐が立っていた。ソレは体から白い火花を散らしながら、あたりを見回す。

 そして狐が一人の男の方向で首を止めたかと思うと、御堂たちの頭の中に不思議な『声』が響いた。


『ヒゲの』


「……シロか?」 


 稲妻のように駆けて来たヒゲの男、轟ゴウキはその姿に見憶えがあった。

 彼の棲む裏山の同居人としてほぼ毎日会っていた狐。

 なぜか身体の色は多少違うが、彼にとってそれはよく見知った顔の狐だった。


(ワシ)がアツシを治す間、頼むぞ』


 また三人の頭の中に声が響く。

 見れば、芹澤アツシもいつの間にか狐と同じように淡く白い光で覆われていた。


「ああ、よくわからないが……時間を稼げばいいんだな?」


 白い狐は轟の問いには何も答えず、そのまま倒れている芹澤アツシの頭に額を当てる。

 すると、白い光はより強く、明るくなった。


「その狐はシロくんだったのか……それにどうやら、そっちの男性も味方のようだね」


 御堂はシロを覆う光の雰囲気を知っていた。

 クラスメイトの神楽マイが異能を使う時に見せる光だ。

 ……だが何故、シロがそれを纏っている?

 どういうことかは分からない。でも、今はそれに賭けるしかない。


「……芹澤くんを頼んだよ」


 そう呟くと御堂は植木と共に再び、姿を消す。


『……アツシ……死んだらダメなのじゃ……』


 そうして白い狐は強く願った。


 ――ただ、『治れ』と。

 自分はまだアツシと一緒にいたいのだと。

 山で別れた仲間たちのように冷たくなり、二度と話せなくなるのは絶対に嫌だ。

 だから、治れ。全部元どおりに、『治れ』。


 もう、アツシは冷たくなりかけている。

 心臓の鼓動も、自分がたどり着いた時にはもう止んでいた。

 血は地面を覆うように広がり、身体から全てが流れ出してしまったかのようだった。


 ――アツシは、もう死んでいる。


 でも、そんなことで諦めることなんてない。


 マイなら、これでも治してやれる。

 自分はマイの力を貰って(・・・)きたのだ。

 これならば、自分だって同じことができるはず。


 いや…………自分が絶対に、治してみせる。


『……帰ってくるのじゃ……アツシ……』


 その瞬間、芹澤の体が強烈な光を帯びていった。

 同時に、身体中から流れ出た血が瞬時に逆戻しのように体内に戻り、再生する。身体中にあった傷跡がみるみる塞がっていくのが遠目から見てもわかる。


「おいおい……まさか……」


 漆原と竜胆はその光景に息を呑んだ。


 ……奴が蘇る。

 先ほどの大破壊を引き起こし、何より破壊不能で無敵(・・)のはずの竜胆の壁を壊すあの少年が。おそらく、万全の状態で目覚めようとしている。


「おおおおおおお!!!」

「チッ……!!」


 今、二人の頭にあるのはただ一つの事だった。

 なりふり構わず、最速で殺す。あの少年を絶対に目覚めさせてはならない。


 そうして、竜胆は『壁』を尖らせ巨大な剣のように突き出して狐と芹澤を分断しにかかり、漆原は空間を歪ませ彼にとっての最短距離で芹澤アツシの元へ近づき、首を刈りに向かう。

 それは全霊を込めた刹那の特攻。彼らにとって、自身の存在をかけた渾身の一撃。


 バツン!


 だが二人の目の前に突然(・・)髭面の男が現れたかと思うと、同時に発生した横方向からの落雷(・・)に身体を撃たれ、全身を痺れさせた。


「おい、駄目だよ。そんなことしたら危ないじゃないか。…………もしかして、あんたらが『敵』だったのか?」


 口から煙を上げながら地面へと倒れ込む二人に向かって、轟ゴウキは問いかける。しかし当然、答えはない。




 そうして――


 淡い光に包まれながら、その少年は目を開いた。





「なんだコレ……? 俺、どうなったんだ?」





 混乱した頭で疑問を口にしながら、少年はゆっくりと身体を起こした。

 地べたに座っている自分の脇腹に、白く輝く狐が頭をすりつけてくるのが分かる。それは色こそ全身真っ白で、何故か光っているように見えるが……芹澤アツシにとっては見覚えのある狐だった。


「お前……シロなのか?」


『よかったのじゃ、アツシ』



 そうして、淡い光に包まれた芹澤アツシはまっすぐに立ち上がり、目の前で立ち上がりつつある二人の男の姿を冷静に見つめた。



「ああ、何がなんだかよくわかんねえけど…………助かったぜ、シロ。ここから……多分ちょっと危ないから、お前は離れてろ」

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