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104 森の中の戦争5 遭遇

 俺と赤井は連携しながら、片っ端から異形(ヴァリアント)の頭部を蒸発させていく。

 数えてはいないが、もうとっくに300体ぐらいは倒したと思う。

 1時間以上戦い続けて、だいぶ敵の数は減らした……つもりだったのだが。


「……多すぎるだろ……いくら何でも……!!」


 奴ら、倒しても倒しても後からどんどん出てきやがる。

 誰だよマジでこんなに大量生産したの……!!

 とにかく、数が多すぎる。全然、殲滅のスピードが追いつかない。


「おい、芹澤……息が上がってるみてェだが、大丈夫かよ?」


 俺と隣り合って戦っていた赤井が声をかけて来る。

 そんなの余裕、まだまだいけるぜ、そう言いたいところだが……


「……ちょっと、やべえ……かも……」


 正直……ちょっとどころじゃなく、やばい。

 俺は異形(ヴァリアント)の群れに相当ビビっていたらしく、スタート直後からほぼ全力で敵に向かっていっていた。最初こそ調子は良かったが……冷静に考えていれば、あんなペースで倒し続けられるわけがないのだ。

 後先考えずに飛ばしすぎた。その結果が、このザマだ。切実に、水分と酸素が足りない。あと、『点火』の高速移動の衝撃で内臓が激しく揺さぶられて、かなり、気持ちが悪い。吐きそうだ。

 戦闘開始から1時間強。もうすでに、随分カラダにガタが来ている。多少の打撲や擦り傷で泣き言を言うほど弱くないつもりだが、これはヤバい。完全に体力配分を誤った。

 膝がもう、ガクガクと震え始めている。


「……最初っからとばしすぎた…………このままだと絶対…………死ぬ……!」


 体力には自信がないわけじゃないが、これはちょっとそう言うレベルを超えている。乱戦に次ぐ乱戦。激戦ののちまた激戦。大きな負傷をしてない自分を褒めてやりたいぐらいの修羅場のオンパレードだ。

 さらに、こっちの体力は削られるばかりだが、奴らはどんどん、湧いて来る。


 ……これ、無限湧きとかじゃないよね……?


「……おいおい、もうバテてんのか? こっから先、長ェぞ」


 なんか俺がひ弱な子みたいに言われてるが、俺は健康男子を自負しているし、体力がない方じゃない。既に1時間以上走りっぱなし戦いっぱなしで平然としてる赤井(コイツ)の方がちょっとおかしいのだ。


「……はぁ……はぁ…………ああ、休憩してぇ……!!」


 当然、目の前に広がるバケモノの群れは俺たちを休ませてくれなどしない。

 でも俺はもう走れない。限界だ。これ以上、動き続けていたら、それこそ酸欠で死ぬ。


 ここで生き残るには……そうだ。

 ……省エネだ。省エネ戦闘だ。

 ここからは超省エネ戦法を取ろう。それしかない。


 でも、どうやったらそれを実現できるのか。

 何かいいアイデアは……。

 俺は酸欠で回らない頭を必死に回転させる。

 ……なんかこう、理想的にはこう、手からなんかビームみたいのが出て「チュドーン」、みたいな……。……ああ、もう!!! 本当に頭が回らねえな……!!!


「……ちっくしょう、どうすれば……!!」


 ……いや。

 ビーム?

 ちょっと待てよ?

 ……それ、出来なくもないか。


 『熱断』と『熱化』を組み合わせて……そうだな。やれるかもしれない。

 でも、それには少し足を止め、集中する時間が必要だ。その間、赤井に守ってもらう必要がある。


「……赤井……今、少しだけ俺の側にいてくれ…………頼むから、俺を見捨てないでね? 俺、これからちょっと動かないから。防衛よろしく」

「お、おう……?」


 俺は自分でも少し気持ち悪いセリフを吐きながら、『熱断』を細く長くするイメージで、右手の人差し指に意識を集中し……異形の眉間に向けて一本の熱線(・・)を放つ。


「『熱線(ヒートレイ)』」


 ネーミングは捻らない。そんな余裕ないから。

 指先から放たれた一筋の光は俺の狙った通りの場所に当たり、その瞬間、異形(ヴァリアント)の頭部が赤く熱され……膨らんだかと思うと大爆発した。

 爆風で周囲の異形も一斉に吹き飛ばされ、近くの木々が薙ぎ倒された。


「……やっべえ……これ、思ってたより全然威力があるな……」


 そこは誤算だが、別にそれでもいい。これなら使える。その確信が持てた。


「おい、芹澤……今のは……?」

「これから、俺は今ので戦う。もう動くのは嫌だから。だから……これからも俺を守ってね? 赤井?」

「……お、おう……?」


 そして俺はその場に足をしっかりと固定し、狙いを正面の10体(・・・)に絞り、右手の人差し指から連続で光の筋を放出する。


「『熱線(ヒートレイ)』」


 ボボボボボボッ!!!

 先ほどより細い熱線を受けた10体の異形は頭部を破壊され、残った身体も崩れ去った。


「……よし、威力調整もいけるな」


 これは正直、かなり神経を使う技だ。

 目標に集中するのに時間がかかり、攻撃開始までにラグがある。

 乱戦になったらあまり使えないと思う。だが、今は体力を回復するのが目的だ。

 これでいい。

 これなら戦いながら、足だけは休められるはず。


「頼んだぞ赤井。俺、しばらくここから動かないから。石像かなんかだと思って守ってくれ」

「ああ……わかった」


 短く返事をして赤井は異形(ヴァリアント)の注意を引き付けるため、火球を散らしながら前に飛び出した。その後ろで固定砲台と化した俺が異形(ヴァリアント)の頭を次々に吹き飛ばしていく。

 最初は距離の近い奴ら。それがいなくなると、今度は少し離れた奴。それが終わると、向きを変えて狙える距離のやつを探して、片っ端から潰していく。

 ほとんどガンシューティングゲームみたいな感覚だが、全くもって爽快感はない。あれが元は人間だなんてことを知らなければ、もう少し楽しい気分になれたかもしれない。


「……やっと少し減ってきたな」


 化け物たちの群れが割れて、奥の森が見える。……抜けた。

 一部ではあるが、無限と思えた異形(ヴァリアント)の群れを突き抜けた。


 ようやく、希望が見えてきた。

 生きて帰れるかもしれない。

 俺がそう思っていた時、視界の奥の方に人影が見えた。


「なんだ……人?」


 見間違いじゃない。確かに異形の群れの中に混じって人間が二人、歩いている。

 そこに見えたのは、少し暗い色のスーツを着た男と、頭をスキンヘッドに丸めた大男。それが二人、並んで歩いていた。


「思ったより混乱してねえな」

「ああ。随分と優秀な指揮官がいたようだ」


 その二人は何かを会話している様子で、こちらに向かってまっすぐ歩いてくるようだった。

 そう思っていたら……奴らは突然、目の前に(・・・・)現れた。

 そうしてまた、こちらにまっすぐと歩いてくる。


「おいおい、それも計算のうちか?」

「誤差の範囲だ。問題ない。予定に変更はない」


 ……こいつらは誰だ?

 今、何が起きた? どうやって近づいた?

 周囲の異形は何故かあいつらに興味を示さない。ということは、もしや……


「……で、あれが例の? 殺したら不味いんだったな」

「ああ、今孵化(・・)されても困る。とはいえ、近くに居られると厄介だ……飛ばしておけ」

「了解」


 一瞬、男達の周囲の空間が歪む。

 そして、ダークグレーのスーツを着た男の姿が消えた。


「……あぶねッ!?」


 消えたと思ったら、首筋に鋭い蹴りが飛んできた。

 間一髪のところで、避ける。


「おいおい、今のを避けるのかよ」


 男は冷静に俺の顔を見つめながらそう言った。

 ……躊躇してる暇はない。

 攻撃を受けた。こいつらは敵だ。


「『熱線(ヒートレイ)』」


 俺は奴の肩を撃ち抜くつもりで、熱線を放つ。

 だが、まっすぐ男に向かって放ったつもりの熱線は歪み、逸れた(・・・)


「あぶねえこと、するじゃねぇの。少年」


 もう一発熱線(ヒートレイ)を撃つが、また逸れる。やはり当たらない。


 そうしている間に男の次の蹴りが飛んできた。

 ……速い。だが避けられないスピードじゃない。

 俺は『点火(イグニッション)』を発動し、奴と距離をとろうとする。体に軽い衝撃を受け、加速する感覚があった。


 だが、それなのに……おかしい。変だ。

 俺は今、移動した(・・・・)はずだ。

 なのに、なぜ、相手との距離が変わらない(・・・・・・・・)

 俺が戸惑っていると、思い切り腹を蹴られた。


「ぐはっ……!?」


 その衝撃で俺の身体は宙に舞う。そして痛みで体が硬直した、そのタイミングで男の手のひらが俺の方を向く。


「運動して疲れてんだろ? いいから、休んどけ」


 マズい、攻撃される。避けなきゃマズい……!!

 そう思った瞬間、


 ドンッ。

 体全体に衝撃を受けるのを感じた。

 激しく吹き飛ばされ、視界がブレる感覚。そして何本かの骨が衝撃で砕ける感覚。

 そこまで感じたところで俺の意識は暗転し、途切れた。

昨晩更新しようとしたら寝落ちしてました。

ということで本日も一話、投稿予定です。


///


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