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4フレーム目 『湖の上で』
コンビニから出ると、そこは湖のようであった。
「こんなに降ったんだー!」
ミユは、鏡のように空が映り込んだ水たまりを歩く。俺も後に続く。
「忍者みたいー!」
とミユが言う。水ぐものことだろうか?俺は水上を浮く忍者の真似をして
歩いてみた。
「ちがうよー、こうだよー!」
ミユは顔の前で両手を組んで、人差し指二本を立てた。忍法、のポーズだ。
「沈むの?」
「沈まないよー!こうしたら水の上を歩けるようになるのー!」
「そうなんだ」
「あっ、綺麗―!」
もう話題は変わっている。ミユは西の空を見る。雲は既に晴れ、夕日が
俺たちのいる駐車場を照らす。
「ねー、キミ、気づいてるー?」
「何?」
「私たち、何も買ってないよー!?」
あっ。コンビニで雨宿りすることばかり頭に入って、
買い物せずに出てきてしまっていた。
「何買うんだっけー?」
「アイスだよ」
「じゃーもう少しだけ忍者するー!」
「そうだな」
「綺麗だねー!」
写り込みがキラキラとオレンジ色と紫色のグラデーションに
変わってゆくのを、俺たちは見ていた。