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キミと1フレームの世界  作者: トラヤラノ
3/10

3フレーム目 『アゲハ蝶』

 ユリちゃんのアゲハ蝶だけが、なかなか脱皮しなかった。


 理科の授業で、各班でアゲハのさなぎを見つけてきて、それが脱皮、羽化するまでを観察するというものだ。


 僕の班では、タイチとケイコ、そして僕のアゲハは既に脱皮したので、ケースからアゲハを逃がしてあげた。だから、ケースにはユリちゃんの見つけてきた、アゲハのさなぎだけが残っていた。

「ユリのアゲハだけはおっせーな!」

 他の男子たちがからかう。


「私、のんびりしてるから、アゲハさんも似ちゃったのかな」

 といいながら、ユリちゃんは少し寂しそうな表情をしていた。


 数日後、朝登校すると、教室には一人、ユリちゃんがケースの前にいた。

 じっとケースの中を見つめている。

 僕はハッとして傍にかけよる。


「見て!」


 とても美しい羽根がさなぎからのぞかせている。

 そして、バッと羽が広がった。

 僕らはただ、見とれた。

「きれい」

 やがてさなぎの背が破れ、アゲハの全身が露わになる。

 その様子がスローモーションのように、見て取れた。


 羽根の黒と黄色による鮮やかな紋章。お姫様のようだった。

 朝日が僕らのいる教室を照らす。


 ユリちゃんと僕は、そのお姫様を、しばし二人で見つめていた。


 今日は、休校日だ。

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