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人馬戦車は少女と踊る  作者: ワナリ


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第9話:限界突破9

 ヤヨイだけでなく、サツキ、そしてリンたちヴァルキリー隊の仲間が、アカネとアオイの身を案じる中―――


 そのアカネは暗くなった視界の中で、一条の光に心を奪われていた。それはヤヨイが放った、レールガンの光弾であった。


「なに……今の光……天から降ってきたの……?」


 混濁する意識の中で、アカネはそれが二十キロ先からの支援射撃だとは理解できずに、子供じみた解釈をした。


 だが同じく朦朧としながら、ぐったりとシートに身を沈めていたアオイは、「天から降ってきた」というアカネの言葉にピクリと反応した。


 力尽きる直前、アオイは思った―――悔しいな、頑張ったのにな、と―――そして今の、天から降ってきた、という言葉が脳内でリンクされた。


 導き出されたのは、「頑張ってる子には、必ず天からの助けが来るっすよ」と、駐屯地からの去り際に言った、ヤヨイの言葉。


 瞬間、電気が走った様にアオイは意識を取り戻し、「そうか!」と呟くと、


「アカネ、キサラギ少佐だよ!キサラギ少佐が、助けに来てくれたんだよ!」


 と、それまで朦朧としていた人間とは思えないほどの大声で、アカネにそれを告げたのだった。


 それに叩き起こされる様に、アカネもガバッと身を起こし、


「なによ突然……しかもキサラギが助けに来たなんて?」


 と、アオイの言葉に疑問を呈していると、


『アカネ、アオイ、気がついたのか!?状況を報告しろ!』


 二人の声を確認した、リンからの無線が飛び込んできた。


「はい、大佐。なんとか二人とも無事です。今のはキサラギ少佐の援軍ですか?」


 それに答えながら、アオイはすかさず自分の推測を反問する。


「キサラギ……?」


「ああ、そういう事だったのね」


 リンにはすぐに、その質問の真意がつかめなかったが、ミユウはアオイの言葉の意味を理解すると、


「そうよ、あれはおそらくキサラギ少佐の支援射撃よ。発射ポイントは、北方約二十キロの地点―――レールガンよ!」


 と、光弾の射手を断定した。


「なるほど、キサラギ少佐……イチガヤの支援射撃か……」


 それにリンも納得の声を上げる。


「やっぱり……私たちが頑張ったから、キサラギ少佐が助けに来てくれたんだよ」


 日本政府の思惑などは、お構いなしに、あくまでアオイは希望的観測で、ヤヨイの支援を善意と考えた―――しかし、絶望からの希望を見た人間なら、その心理も無理もないところなのかもしれない。


「北だね。アカネ、北に向かって手を振ろう!」


 そう言ったアオイに、


「はあーっ?アンタなに言ってんのよ?」


 と、アカネは取り合わなかったが、


「キサラギ少佐に、頑張ってますって伝えるんだよ!ほら早く!」


 語気を強めてそう言うアオイに、アカネも従わざるを得なく、ストライクイーグルの残った右手を上げると、機関砲ごとそれを北に向かって、グルグルと回したのだった。


「あの……なんか、手ぇ振ってますけど……」


 北方二十キロの高層ビルの屋上で、それを見つけたタマキが呆れた様に呟く。


「あのガキども……なに余裕かましてるんすか……」


 同じく視界にそれを見つけたヤヨイも、思わず頭を抱える―――だがアカネとアオイの無事を確認した、ヘルメットの中の、その顔はニヤリと笑っていた。そして次弾射撃のために叫ぶ。


「タマキ、まだっすか!?」


「あと一分です!」


 そう答えた後、タマキはキョトンとした―――今、ヤヨイは自分を禁断の愛称である、キンタマともタマキンとも呼ばず、ちゃんとタマキと名前で呼んでくれた。


 ただ余裕がなかっただけの偶然かもしれない。それでも、タマキはなんだか嬉しくて、コクピットの中で一人密かに微笑むのであった。


 一分―――その間、ストライクイーグルは乗り切れるのか―――ヤヨイは再び鷹の眼差しになると、戦場を緊張した面持ちで凝視した。


「アカネ、アオイ、もう十分だ!タイガーシャークは、手負いとなった―――このまま放置しても、もうさしたる脅威にはならん!戻ってくるんだ!」


 ミライミナト駐屯地からリンの指示が、アカネとアオイに飛ぶ。


 リンの言う通りであった―――タイガーシャークは、二人の奮闘で、機体の限界値を超える『限界突破』を行ったため、機体に深刻なダメージを負っている。


 加えて、ヤヨイのレールガンの射撃で右腕も失った。バルカン砲も撃ち尽くし、ジェット燃料の枯渇も時間の問題となっている―――ここまでで、十分過ぎる戦果といえた。


 このまま捨て置いて、いずれリンたちの首都進攻の背後を突いてくるとしても、手負いのそれをかわす事は、もう容易だと思われる。


 それよりも、人間の限界を超えた操縦により疲弊し切った二人と、同じく『限界突破』で満身創痍のストライクイーグルで、戦闘を継続するリスクの方をリンは恐れたのだった。


 そして、リンの言葉を受けて、ストライクイーグルのコクピットで―――アカネとアオイは互いの顔を見つめ合うと、無言で頷き合った。


 次の瞬間、アカネが叫んだ。


「心配無用よ、リン!―――タイガーシャーク……倒してみせるわ!」


 言うなり、アクセルを踏み込むと、ストライクイーグルは、正真正銘のラストアタックをかけるべく、タイガーシャークに向かって突進していくのであった。




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