第8話:ストライクイーグル3
「わっ、わっ、わっ!」
機関砲を向けられている事、そして「葬る」と言ったヤヨイの啖呵のせいで、アカネをはじめ皆は動揺したが、その中でリンとミユウは冷静だった。
その理由は、初見とはいえ、それがKF-15イーグルに酷似している事―――つまりそれは有人機であり、現在操縦士が乗っていないとすれば、攻撃を仕掛けてくる事はないと、二人には推測がついたからであった。
そして、タカハネ=サツキからもたらされた、『ミッカマテ』の答え―――それが、これだとするならば、この人馬戦車は、少なくとも敵ではないはずであったからである。
派手な芝居を打ったヤヨイは、驚く面々を見て満足そうであった。それからリンとミユウに顔を向けると、半開きの目で、いかがですか?と言わんばかりの、挑発的な視線を投げてきた。
それをリンは真正面から受け止めると、
「これは、なんだ?」
と、暗緑色の人馬戦車について、素直に質問した。
それを受けてヤヨイは思う―――クスノキ=リン、これは類いまれなる将器の持ち主だと―――タカハネ=サツキが、人類の代表として、この女を推したのも納得できる、と。
「これっすか……KF-15E、ストライクイーグルっすよ……」
リンの事が少し気に入ったヤヨイも、素直にそう答えた。
「ストライクイーグル……見たところ有人機の様だな……それと、並列複座か?」
「へー、さすが、かつてのエースっすね。一目見ただけで、そこまでわかるんすか」
「なに、胴部が現行のイーグルより、ひとまわり太い。まるでファントムを、イーグルにした様だと思っただけだ」
ヤヨイの指摘に、リンは自身の見解を説明した。
「私からも聞いていいかしら、キサラギ少佐?」
そう言いながら、ミユウが割り込んできた。先程、自分を『ゼロのキサラギ』と見破った相手に、ヤヨイは自身と同じ匂いを感じて、なぜか心が弾んでくる。
「自分も仕事なんでね。これ以上の素性調査以外ならオッケーすよ」
相変わらずの、人を食ったヤヨイの言い回しに、ミユウは吹き出してしまいながら、
「そうね、あなたの事は一旦、置いておくわ。私も、できる事なら長生きしたいしね」
と、「葬る」と言ったハッタリを逆手に取って、返しの一撃を与える事は忘れなかった―――やはりこの二人は、どこか似た者同士の一面があった。
そんな、リン、ミユウ、ヤヨイのやり取りを、一同は息を呑んで見守っている。とりあえず、目の前の人馬戦車―――ストライクイーグルが攻撃してこない事を知って、内心ホッと胸をなでおろしているというのが、大半の素直な気持ちであった。
「ストライクイーグル……って言ったわね。それもジェット搭載機と思って正解かしら?」
朗らかな表情ながら、探る様な眼差しで、ミユウはストライクイーグルの核心に切り込んだ。
「ジェット―――!」
ミユウの言葉に、一同から次々と驚きの声が漏れる。それは隣にいるリンも同様であった。
米軍の秘匿機、タイガーシャークのジェットに、苦杯を舐めさせられたヴァルキリー隊―――そこにまた、新たなるジェット搭載機が出現した事を、ミユウは予見した。
「どうかしら?」
「ピンポーン!正解っすよ……よく、分かったっすね?」
ミユウの読みに、ヤヨイは目を丸くして驚いた。
「確証はなかったけど、胴体両側の短い円筒形のパーツ……あれは双発エンジンかと思ってね」
ヤヨイの驚くリアクションを見て、ミユウも嬉しくなったのか、少し微笑んでそう答えた。
そして、一同が食い入る様な視線で、一斉にストライクイーグルに注目した―――上半身人型、下半身が戦車の、タンクモード形態のそれの側面パーツは、言われてみれば、なるほどジェットエンジンの様であった。
「日本にこんなモンがあるなんて……知らない事もあるもんっすねー」
リンに続き、ミユウの事も気に入ったのか、ヤヨイは自身の秘密部隊所属の素性と重ねた上で、誰に言うともなく、ストライクイーグルへの感想を呟いた―――それは、素直な感情に間違いなかった。
「ねえ、キサラギ少佐。あなたは、どこまで知っているの?」
ヤヨイを信用できる人間と判断したミユウは、話をさらに核心に進めた―――ヤヨイにも、ミユウの言わんとする事が、言わずとも理解できたので、
「あーしはね……あの綺麗な婆ちゃん―――タカハネ=サツキの共犯者っすよ」
と、一同驚愕の言葉を、堂々と言い放った。
「やはり、これはタカハネ博士からだったのね……」
自身の推測が当たったとはいえ、ミユウ本人の声も緊張の色を含んでいた。
「これは日本政府が、隠密で研究開発していた秘匿機らしいっすよ……それをタカハネ補佐官が、政府を脅迫して、あんたらにくれてやるために、自分にここまで運ばせてきたんすよ」




