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人馬戦車は少女と踊る  作者: ワナリ


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第7話:秘匿機8

「縦隊?これなら逃げ切れる勝算があるとでもいうんすか!?」


 先頭トムキャット、それに三機のイーグルが続き、その後にファントム、最後尾に支援機タイガー三機が縦一列に並ぶ逃走陣形に、ヤヨイは懐疑の声を上げた。


「空気抵抗を減らして、後続機の速度を上げる気?」


「スリップストリームってやつっすか?それにしても、タイガーシャークのスピードを超えられる訳ないっすよ!」


「あの子たちが、どうする気なのか……見定めましょう」


 そう言いながら、サツキは食い入る様にモニターを見つめる。約一キロの逃走劇なら、一分程度でその結果が出る―――それですべての答えは出るのだ。


「ほんとに大丈夫なんでしょうね!?」


 疾走する八機縦隊の五番目に位置する、ファントムのコクピットで、アカネはこの作戦の立案者である、隣のアオイに問いかける。さすがにその声にも、緊張感がこもっていた。




 アオイが思いついた、タイガーシャークから逃れるための作戦―――


「どうしたアオイ、何か策があるのか?」


 ミユウが提案した、二手に分かれる案を決断しようとした矢先、作戦が浮かんだと大声を張り上げたアオイに、リンはすぐに反応した。


「はい、分かったんです!みんな一緒に逃げられる方法が!」


「どういう事だ、話してくれ」


 絶対絶命の状況下で、わずかな光明にすがる思いで、リンはアオイを促した。


「今、戻ってきた黒い機体を見て気付いたんですが……ここに残っているファルコンとタイガーを攻撃せずに、手前で停止したんです」


 アオイは、二百メートル先に逃走したファルコンを撃破したタイガーシャークが、戻ってきた際に、返す刀で残留AI機に攻撃を仕掛けてこなかった点に着目した。


「それは、あいつが余裕かましてるからじゃないの?」


 アオイの意見に、アカネも持論を述べる。実際、アカネはタイガーシャークの態度に憤慨していた。


「いや、そうじゃないんだよ。なんかおかしいと思って、各機の位置関係を見直してみたら―――黒い機体の進行方向から見て、味方の支援機四機が縦列に並んでいたんだよ」


「なるほど!」「そういう事だったのね」


 アオイの言葉に、次々と膝を叩くリンとミユウ。


「えっ、なになに!?ちょっとアオイ、分かる様に言いなさいよ!」


 話についていけないアカネは、苛立ちながらアオイに詳細な説明を求める。


「いい、アカネ?黒い機体は、あのスピードを活かして、両腕の鎌で敵機を切り裂く……今、二百メートル先のファルコンを撃破したあれには、目の前のファルコンとタイガーに対して、二百メートルという十分な加速距離があったのに鎌の攻撃をしてこなかった―――いや、できなかったんだよ」


「???」


 まだ話が飲み込めないアカネを見つめながら、アオイは話を核心に移す。


「支援機は、黒い機体の走行ラインに対して、偶然だけど四機が縦一列に並んでた―――つまり、これは推論だけど……あれは四機をいっぺんに、鎌で切り裂く事ができないんだよ!」


「あーっ!」「なるほど!」「納得なのですよ!」


 アカネに続いて、シオンとチトセも感嘆の声を上げる。どうやら二人も、アカネ同様、話についていけてなかったらしい。


「私とチトセ中尉のファルコンが、あの鎌にやられた時も、そういえば二機ずつでした!」


「鎌の威力と、攻撃後の反動による機体制動を考慮した上で―――黒い機体があの鎌で一度に攻撃できるのは、二機が限界なのかもしれないのですよ!」


 アオイの推論から、点と点が線に繋がっていくとばかりに、シオンとチトセが、タイガーシャークの動きを振り返る。


「そうなんです!だから私たちが縦一列で逃げれば、黒い機体は鎌を使えません!それにミユウ中佐の計算なら、攻撃は一回のみ―――支援機のタイガー三機を最後尾につければ、もし攻撃を受けても私たちは逃げ切れます!」


 そして、アオイの案を採用したヴァルキリー隊は、逃走を開始した。


 まず四機残ったAI支援機のうち、ミユウのファルコンを再び逆方向に逃走させ、それをタイガーシャークは追ってくれた―――おそらく、それが捕捉撃破されるのは二百メートル先。


 その姿を見送ると、急速反転を警戒してタイガーシャークが百メートル追跡した時点で、ミユウの合図とともにヴァルキリー隊は次々と海上から上陸を開始した。


 各機、高速移動形態のタンクモードに変形―――縦隊を組むと、最大加速で駐屯地を目指した。




 そして始まった逃走劇の中、アカネの「ほんとに大丈夫なんでしょうね!?」に対するアオイの答えは―――


「大丈夫、アカネならできるよ」


 という、お決まりの一言だった。


 それは答えにならない答え―――だが、アカネにはそれで十分だった。苦笑いの表情でフフンと、それを鼻で笑うと、すべての不安が払拭されたかの様に、気合の表情で操縦桿を握り直す―――アカネのスイッチが入ったのだった。


「ファルコン、撃破されたわ!―――来るわよ!」


 そこに飛び込んできた、ミユウからの全体無線。


 囮のファルコンを撃破したタイガーシャークの、ヴァルキリー隊への反転追撃が始まったのだった。




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