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第1話:人馬戦車6

 モニターに映し出された機体が、グラフィックではなく本物である事に気付いたアオイは血相を変え、


「アカネ、何かおかしいわ!とりあえず急いで、ここから離れて!」


 とにかくこの場から早く離脱する事をアカネに指示した。


「わかったわ!」


 言うなり、アカネは素早くファントムを、ヒューマンモードからタンクモードに変形させると、アクセルターンを決め百八十度回頭すると、急加速でその場から逃げ去ろうとアクセルを踏み込んだ。


 すると次の瞬間、今まで聞いた事のないアラート音がアカネの耳に入り、同時にアオイが慌てふためき出した。


「なによ、この音」


「アカネ!ロックされたわ!とにかく逃げて!」


「ロック?」


「ロックオンされたの!機関砲で狙われてるのよ!」


 言葉の意味がまだ今ひとつ理解できないが、これが非常事態である事は認識できたアカネは、後方にいる自分たちを狙う人馬戦車ケンタウロス―――KF-16ファルコンに狙いを定めさせない様に、右に左にドリフト走行を絡めながらファントムを疾走させた。


 そして乾いた轟音が二人の耳に聞こえると―――地面が弾け飛んだ。


 ファルコンはアカネたちのファントムに向けて、二十ミリ機関砲の実砲を発射してきたのだ。


「なに、どういう事よ!なんでアタシたちが狙われてるの!」


「わからない!でもファルコンもAI機だから、何かの理由で私たちを敵って認識したんだと思う」


「意味わかんないわよ!アオイ、武器はどこにあるの!?」


「武器!?高校の練習機に武器なんて、あるわけないじゃない!―――って、アカネ、戦う気なの!?」


 アカネの事を、誰よりもよく理解しているアオイでさえも、この発言には面食らってしまったが、


「逃げてるだけで、この状況が解決する!?なら、やるしかないじゃない!」


 アカネはいたって大真面目に、この状況への打開策として、戦う事を選ぼうとしていた。


 一度は驚きはしたが、そのアカネらしい真っすぐな思いに共感したアオイは、眼鏡を上げ直すと、


「そうだね。なら、いっちょやりますか!」


 と、共に戦う事を選択すると、座席のキーボードを素早く叩き、フロントモニターに敵機の詳細を表示させた。


「逃げながら聞いて、そしてモニターを見て」


「無茶言うわね」


 アカネが憎まれ口を叩く間にも、ファルコンの機関砲は二十ミリ弾の雨を、ファントムに向けて降らせているのだ。


 だが、どこかアカネ以上に肝が据わっているアオイは、お構いなしに説明を始めた。


「いい、あのファルコンは、第四世代機なの。足元を見て―――浮いているでしょ」


「なによあれ!反則じゃない!」


「もう時代は、戦車もホバーで浮く時代なの」


「じゃあなに?このファントムは時代遅れの人馬戦車ケンタウロスだって事!?」


「まあ車輪走行のファントムは第三世代機だからねー。って、そんな話はまた後で。かいつまんで言うと、ホバーの弱点は衝撃に対する安定が悪いところ!」


「つまり―――転ばせばいいのね」


 活路への方策を得た、アカネの瞳がギラリと輝きを放った。


「ご名答!今、ファルコンは四機いるわ。そして四機ともヒューマンモードでホバリング中よ」


「まかせときなさい!」


 アオイとは少ない言葉で、その意図を理解し合えるアカネは、今もまた自身の取るべき行動を瞬時に見出し、ファントムをヒューマンモードに変形させると、激しいターンの連続で再び敵機に―――今度はグラフィックではない、実弾を撃ってくる真の敵機に向かって、その背後を取るべく突撃を開始した。


 それを遠望する一機の人馬戦車ケンタウロス―――


 その複座のコクピット内で交わされる会話。


「ファルコンが、ファントムの動きを追い切れていない様だな」


 後席の指揮官が、戦況に対する率直な所感を述べると、


「その様です。あのファントムの動きが無茶苦茶なせいですわ。AIの戦闘データに、あんな踊り狂う様な動きは記録されてないでしょうから。ホホホ」


 前席の操縦士が、丁寧な言葉でそれに返答しながら、アカネのファントムの操縦に対して、明らかな侮蔑の笑いを浮かべた。


「で、どうなさいますか、リン様?出ますか?」


「いや待てカノン。あのファントムの動き―――もう少し見ていたい」


 リンと呼ばれた指揮官は、カノンと呼んだ操縦士を制すると、眼前のモニターに映るファントムの―――アカネの動きを、厳しい目付きで、じっと見つめ続けた。




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