表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人馬戦車は少女と踊る  作者: ワナリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/127

第4話:逆襲のヴァルキリー5

「もう一度いくわ!続いて!」


 逃げる敵編隊を追いながら、ミユウがまた先陣を切って動き出した。


 隊列が乱れた相手への追撃とはいえ、油断のないミユウはフェイントを織り交ぜながら、敵機との距離を詰めていく。


 そして間合いに入ると、足並みの乱れた敵編隊に、今度は乱射に近い威嚇射撃を浴びせると、応戦体勢に入るファルコンにロックオンされると同時に、素早く反転回避で逃げを打つ。


 巧みな操縦術での逃走に、ファルコンは狙いが絞れない。そこに両翼のチトセとシオンのイーグルが、左右から今度は撃破を狙った集中射撃を加える。


 ミユウを撃破する事に集中していたファルコンは、ロックの切り換えに遅れる間に、なすすべなくチトセとシオンに次々と破壊されていった。


 先程に続く完璧なデルタフォーメーション。だが、今回はそれで終わらない。


 編隊の先頭位置にミユウのイーグルが戻ると同時に、中央のトムキャットが飛び出した。


 先鋒が崩し、両翼が打撃を与えた敵陣に、後尾がとどめの一撃を加えるダイヤモンドフォーメーションであった。


 教科書通りのトムキャットの飛び出し―――だがミユウは、そこに異変を見た。


 自分の両側をすり抜ける機体―――なんと、リンのトムキャットと同時に、アカネのファントムまでもが飛び出していたのだ。


 編隊の安定維持のために言った、アオイの口車にまんまと乗せられたアカネは、このまま後尾に甘んじてなるものかと、ダイヤモンドフォーメーションの流れを直感的に理解すると、トムキャットの飛び出しに合わせて、アクセルを全開に踏み込んだ。


 その異変には、トムキャットのリンもカノンも、すぐに気付いた―――自機のすぐ真横をファントムが並走しているのである。気付かぬ方が嘘であった。


「あ、あなた、なに考えてますの!?」


 すかさずカノンが、抗議の叫びを上げる。


「このまま後ろなんて嫌よ!アンタだけにいいとこ、取らせないわよ!」


 引く気など毛頭ないアカネは、ベストな射撃位置を取るべく、それに向けた走行ラインを狙う。


 必然的にそれはトムキャットの走行ラインと被り、両機は肩が触れ合う程に接近すると、そのまま肩をぶつけ合いながら前進を続けた。


「こぉんのバカ女!引きなさいまし!」


「嫌よ!アンタこそ引きなさいよ!」


 もはや子供のケンカであった。


「どきなさいな!」「アンタがどきなさい!」


 トムキャットはホバードライブ、ファントムはホイールドライブの、ともに機体挙動を乱しながらも、それでも両者一歩も引かない。


 デルタ、及びダイヤモンドフォーメーションは、攻撃を仕掛けた味方機に敵の注意が集まった間隙を突いて、後詰めが別方向から素早く攻撃を加えるのがポイントである。


 もう二段目を仕掛けた、チトセとシオンは回避運動を終えている―――だが、もたつくカノンとアカネは射撃地点に達していない。格好の標的となった二機を、敵機の銃口が狙う。


 それでもまだ、お互いを弾く事に気を取られているカノンとアカネに、


「カノン、くるぞ!」「アカネ、くるよ!」


 それぞれの同乗者である、リンとアオイから警告が発せられると、これもまた同時に、二機は示し合わせた様に左右に素早く散開した。


 そして二機がいた地点に、ファルコンからの射撃が虚しく空を切ると、回避運動からターンを織り交ぜながら、トムキャットとファントムが集中砲火を左右から、挟み込む様に敵編隊に執拗に浴びせかけた。


 その結果、残機すべての撃破が完了し、ヴァルキリー隊は敵編隊八つのうち、まずそのひとつ目を殲滅する事に成功した。


 アカネが乱した足並みに、カノンがそれを上乗せする形となったが、結果としては十分な戦果である。この状況に、特に驚かなくなったヴァルキリー隊は、もう良い意味でアカネに毒されているのかもしれない。


 だが当人たち―――カノンとアカネは、まだ気持ちが収まらず、


「このバカ女!フォーメーションを、なんだと思っているの!」


「アンタが道を譲れば、いいだけの話でしょ!」


 と、互いに罵り合いを続けているが、両人の管制担当であるリンとアオイはこの流れに満足していた―――これはいける、と。


 変化こそが、パターンを蓄積、学習する人工知能との戦闘において不可欠だと考えるリンは、アカネの暴走で編み出された新戦術と、それに即応できる様になったヴァルキリー隊に、確かな手ごたえと希望を感じていた。


 そしてアオイは、アカネが無鉄砲ながらも編隊行動に馴染んでいる事に、その成長を感じ目を細めるのだった。


 各々が、その思いを巡らす間にも戦局は動き、残された七つの敵編隊は、全機撃破された編隊の穴を埋める様に、開いた間隔を詰めて円陣を形成し直した。


 人工知能は、車懸かりの陣を継続する―――そう踏んだリンは、


「敵の動きに変化が出るまで、このままダイヤモンドフォーメーションを継続する。三手目は先程と同じく二機同時に出るぞ!」


 と、戦術指示と同時に、アカネが攻撃に参加する事を認める旨を全員に通達した。


 その言葉にカノンは顔をしかめたが、五機でのフォーメーションが有効であるという事は、悔しいが認めざるをえないので、異論は挟まず、「了解!」という全員の復唱に声を合わせた。


 対するアカネは白い歯を見せて、次の出番に向けて闘志をみなぎらせる―――その横では、アカネに笑顔を向けながら、それでもアオイが手を休ませずにキーボードを叩き続けていた。


 そんなアオイに、リンからの声がかかる。


「コダマ=アオイ、仕掛けられそうか?」


「やってみます!」


「こちらも継続するが、そちらからも頼む」


「了解しました!」


 暗合の様な会話―――アカネには意味が分からない。


 だが、その意味を問う間もなく、「動くぞ!」というリンの号令一下、ヴァルキリー隊は次の敵編隊に向けて移動を開始した。


 また遅れてなるものかと、慌ててアクセルを踏み込むアカネの頭から、先程のリンとアオイの会話に対する疑問は消えた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ