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人馬戦車は少女と踊る  作者: ワナリ


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第4話:逆襲のヴァルキリー4

「よし、ではこのまま進むぞ!」


 リンの号令一下、ヴァルキリー隊はミユウのイーグルを先頭に、ダイヤモンド編隊のまま進軍を再開した。


 ランウェイまでの残り百メートルを疾走し、最後のゲートを越えると―――


 ミライミナト駐屯地の、倍はあろうかという広大なそのランウェイに、百機を超えるKF-16ファルコンが待ち構えていた。


 全機、近接戦用の二足歩行形態であるヒューマンモード。そしてその手には、二十ミリ機関砲を携え、銃口をヴァルキリー隊の五機に向けている。


 レーダーのポイント画像で見るより、その実際の陣形は予想以上に整然としており、元々AI機であるファルコンだったが、人の及ばぬ何かを感じさせる更なる不気味さを、それらは威圧感とともに醸し出していた。


 規則正しく、円形に配置された八つの敵編隊―――近付くその先端との距離に、間合いを感じると、


「出るわ!―――」


 編隊先頭のミユウは、気合の声とともにイーグルをヒューマンモードに変形させる。


 第四世代機の特長である、ホバー走行の勢いそのままに、機体を浮遊させたまま変形するその姿は、まるでそれ自体が魔法の様に美しい。


 下半身の戦車部は、二足の脚部へと変わり、引き続き浮遊したままミユウは、機体を左右に振りながら急加速する。


 そして、まずは受け身の体勢だったファルコンが、ミユウの動きに合わせてホバー上昇を開始しようする矢先、その出鼻をくじく様に有効距離外からの弾幕射撃を、ミユウは正面に位置する五機に向けて放った。


 それによって、団子状に十五機で固まっている敵編隊の初動が乱れる―――前列が勝手な回避行動を取る事で、まだ動けぬ中列がむき出しになり、後列も左右に開いた前列のせいで前に出られない。


 そこでミユウが狙うのは中列―――有効射程距離に入ると、宙に浮いたカカシの様に動けない敵機を、二十ミリ弾の集中砲火で、まず二機を撃破すると、即座に反転離脱に移行した。


 代わって前に出てきたのは、ダイヤモンド編隊の両翼―――左翼のシオン、右翼のチトセの両イーグル。


 二機も前進しながら、タンクモードからヒューマンモードへの変形を済ますと、反転離脱したミユウを追うため突出してきた敵機を、左右からこれも機関砲の集中砲火を浴びせ、瞬く間に三機を葬り去った。


 これが人馬戦車ケンタウロスにおける、デルタフォーメーション。通常これは、有人機に同伴させる三機のAI支援機のための戦術だが、それを打ち合わせなしで即座に実行できるミユウ、チトセ、カノンは、一騎当千のヴァルキリー隊の名に恥じない戦乙女ぶりであった。


 そして先制攻撃と撹乱を、見事に成功させたミユウが編隊の先頭に、華麗な浮遊スピンを決めて戻ってきた。


 かつてはリンのパートナーとして、最強の管制官として名を馳せながら、操縦士転向後も頭脳派の切り込み隊長として、エース級の戦闘力を発揮する、ミユウの勇姿を目の当たりにしたアオイは、


「わーっ、ミユウ中佐カッコイイ!」


 と、思わず禁断の言葉を呟いてしまった。


 言った後すぐに、アオイ自身も『しまった』と思ったが、もう遅い―――隣のアカネが、ワナワナと震えている。


「あ、あれだよねー、なかなか後ろからこないねー」


 すかさず、アオイはフォローに入ったが、


「なによ!やっぱり前の方がカッコイイんじゃない!」


 先頭、両翼が華々しい戦果を挙げるのを、見せつけられた後尾のアカネは、ペテンにかけられた事に気付き、抗議の声をアオイに浴びせた。


 だが、このダイヤモンド編隊は、今のデルタフォーメーションを見ても、確実に効果を発揮している。それだけに、アカネをこのまま後尾にとどめて、編隊陣形を維持しなくてはと考えるアオイは、どうアオイを丸め込もうかと考えた矢先、


「動いたぞ!やはり車懸かりだ!」


 というリンの声が、飛び込んできた。


 すぐさま、アカネとアオイも前方に目を移す―――確かにミユウたちに先制を食らった編隊が、左方向に移動を開始している。


 同時にレーダーモニターの、その他の七編隊も動きを同じくして、左回りに規則正しい円軌道を描きながら、位置を交代する動きを見せていた。


 まさにアオイが予測した、車懸かりの陣―――このまま新手を受け入れれば、相手の思う壺だ。


「我らも動くぞ!」


 リンの号令一下、両翼のチトセとシオンも定位置に復帰したヴァルキリー隊は、逃げる様に移動を続ける、先制を浴びせた敵編隊を追撃するべく、再びダイヤモンド編隊で移動を開始した。


 味方四機の出足に、一瞬出遅れたアカネは、慌ててファントムのアクセルを踏み込み、その後を追う。


 展開のおかげで、己の失言がうやむやになったアオイは、内心ホッと胸をなで下ろすのであった。




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