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人馬戦車は少女と踊る  作者: ワナリ


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第4話:逆襲のヴァルキリー1

 自衛軍東部方面隊マザ駐屯地―――


 ミライミナト駐屯地から、西に三十キロ離れたそこは無人の地と化していた。


 タカハネ=サツキの扇動による、人工知能『バクフ』が起こした日本全土の人馬戦車ケンタウロスのハッキングにより、マザ駐屯地のAI機もすべてその制御権を奪われた。


 危険を感じた現地司令は、政府の勧めもあり、駐屯地の放棄を決断―――なんとか有人機KF-15イーグルの移動は完了させたものの、AI支援機KF-16ファルコン約百五十機はバクフの手に落ちたまま、その謀反の先兵として連日ミライミナト駐屯地のリンたちに、強襲を仕掛けていたのだった。


 そして、ミライミナト駐屯地司令クスノキ=リンは、政府の不干渉宣言を受けて、人工知能バクフ及び、その背後にいるタカハネ=サツキとの対決を決断すると、目下の敵であるマザ駐屯地への反転強襲を計画した。


 マザからの連日の攻撃を迎撃した事で、その機体数を約百機までに減らしたのは確かであったが、それでも敵は大部隊である。


 その反転強襲に、リンは自身の部隊であるゴールデンヴァルキリー隊の五機を選んだ。


 それは、リンとカノンのKF-14トムキャット、ミユウ、チトセ、シオンのKF-15イーグル三機、そしてアカネとアオイのKF-4ファントムによる、少数精鋭の布陣。


 バクフのハッキングを避けるための、味方AI支援機のデータ書き換えはまだ終了していない。だが支援機なしでも、時を逸する事を恐れたリンの決断によって、本当に五機だけでの出撃が決定した。


 相手は約百機―――単純計算で一対二十の過酷な戦いだが、カノンが一対十二の戦いを制した様に、この五機は一騎当千であり、勝機は十分にあるとリンは判断した。


 五機のみでの出撃には、少数精鋭での強襲という以外に、別の目的もある―――それは不干渉とはいえ、政府の援助が得られぬ私戦に、必要以上の人員を巻き込みたくないというリンの配慮だった。


 付いてきてくれると言った、多くの隊員たちの気持ちは本当に嬉しかったが、自分の地獄への道連れはヴァルキリーの六人でいいと、リンは決めた。


 そして今、ゴールデンヴァルキリーの五機はマザ駐屯地、東方二キロの地点に到達していた―――




 五機とも高速移動のタンクモードで、ここまで疾走してきた。時は深更―――マザ駐屯地周辺は避難勧告が徹底されているため、周囲五キロが無人の街となっていたが、それでもリンは市民への影響が出ない様に、夜更けの強襲を選んだのだった。


 幸い迎撃機は出てこずに、市街戦とならなかった事に、一同は胸をなで下ろした。


「ようやく、ここまでたどり着いたわね」


 ダイヤモンド編隊の先頭を務めるミユウが、まずは無事に目的ポイントに到達した事に、安堵の声を漏らす。


「いつ迎撃機が出てくるのかと、ハラハラしました」


 編隊左翼のシオンは、率直な感想を述べる―――無理もない。人工知能の謀反という未曾有の事態に、彼女たちはこの一週間で初めての実戦を経験したのだ。そして迎撃戦に続いて始まった今回の反転攻勢―――緊張しない方が嘘である。


「オプションのステルスパーツが、役に立ったのかもしれないのですよ。なにはともあれ、一安心なのですよ」


 右翼のチトセは、各機に取り付けたレーダー反射波を吸収するステルスパーツの効果を検証するとともに、作戦の第一段階が達成した事に安堵した。


「まあ、後ろのファントムは、レーダーにモロバレだったかもしれませんけれどね……」


 四機によるダイヤモンド編隊に囲まれた、総指揮官機トムキャットの前席で操縦を担当するカノンは、編隊中唯一の第三世代機ファントムを、というより、その操縦者であるアカネをあげつらった。


「なに言ってんのよ!見つかってないわよ!」


 そして、後尾についているファントムの左座席で操縦を担当するアカネが元気よく、カノンの難癖に反応する。


 アカネとカノンは既に、お互いの実力を認め合った間柄ではあったが、双方が隊のエースを自覚しているため、そのライバル心から舌戦は以前よりも熱を増している。


「あーら、そうかしら。まあ、せいぜい今日は機体を壊さない様に努めなさいませ」


 痛い所を突かれたアカネが、さらに言い返そうとするのを、その右隣に座るファントムの管制担当アオイが、手を伸ばしその口をふさぎながら、


「はい!なるべく善処します!」


 と、苦笑いしながら、代わりにカノンに返答した。この辺りのまとめ方は、実にうまい女房役であった。


「さて、皆、聞いてくれ―――」


 そして遂に、トムキャットの後席で、部隊の全体総指揮を務めるリンが口を開いた。


「我々の最終目的は、バクフを正常な状態に戻す事……それが叶わぬ時は……バクフを破壊する事も辞さない」


 タカハネ=サツキによって扇動された、日本を統括する人工知能『バクフ』の謀反に、リンは非情の決意を固めていた。


「そのために、我々は一刻も早く首都に―――バクフの元に到達しなくてはならない」


 バクフは首都東京の、政府中枢機関の中央に位置しており、それは自ずと首都侵攻を意味している。


「もしバクフが、我々を殲滅するべく、全土のハッキング機を差し向けてくれば、それまでだ。我々に勝ち目はない」


 今や、リンたちのミライミナト駐屯地を除いて、日本全土の人馬戦車ケンタウロスは、すべてバクフの手に落ち、その総合戦力差は歴然としていた。


「我々には時間がない。今すぐにでも首都に行かねばならん……だが、この後顧の憂い―――マザを制圧しなければ道は開けない!」


 バクフが態勢を整える前に、電撃戦で首都侵攻を達成させたいリンであったが、それを読んだ様にバクフはマザ駐屯地から連日、ハッキング機を差し向けてリンたちを足止めしている。


 それを無視して首都侵攻を強行すれば、その背後を突かれるのは明白であり、このマザ制圧はバクフとの決戦において、絶対に成し遂げねばならない至上命題であった。


「首都への道を開くために、なんとしてもマザの全機―――殲滅しなくてはならん!厳しい戦いになるが、皆、私に力を貸してくれ!以上だ」




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