表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人馬戦車は少女と踊る  作者: ワナリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/127

第11話:人間として5

 そのリンも、ヤヨイが占拠を進めている国営放送に向かい、急行していた。


 隠密行動のため人馬戦車ケンタウロスでの移動は避け、カノンが運転する乗用車で偽装をしている―――そのため、湾岸部にKF-14トムキャットは、乗り捨てにせざるを得なかった。


 今回の首都進攻に際して、リンはトムキャットの右肩を、その操縦士であるカノンのパーソナルカラーである、青に塗り替えてくれていた―――その二人の機体を捨てていく事に、カノンは強い寂しさを覚えたが、リンの思いを成就するためと、その思いを押し殺した。


「リン様、霞ヶ関の外郭にもハッキング機が展開しています。少々、荒い運転になりますが、ご容赦を」


 そのカノンは、アクセルをベタ踏みしながら、助手席のリンに断りを入れる。


「大丈夫だ、私こそこんな危険に巻き込んでしまって、すまない」


「なにを仰います。リン様のためなら、このマキナ=カノン―――いつでも、この命投げ出す覚悟はできておりますわ!」


 従者である自分に、労りの言葉を返してくれたリン―――その変わらぬ優しさに、カノンは必ずこの主を守り抜くと、決意を新たにしたのだった。


 リンとカノンが国営放送への道を急ぐ中―――ミユウが指揮する本隊は、またひとつ防衛線を突破したところであった。


「思ったより広範囲に、防衛陣を展開しているわね」


 戦闘後、味方機に損害がない事を確認し終えると、ミユウはバクフの布陣が想像以上に巧妙である事に、懸念を口にした。


「確かに!―――主要道路を避けて、こちらは動いたのですが、その先を読まれた様に、待ち構えられていたのですよ!」


 同様の感想を抱いていたチトセも、ミユウの意見に賛同する。


「まだ湾岸部から、それほど離れていないのに、もう遭遇してしまったという事は―――防衛陣が広範囲かつ、こちらの動きに合わせて移動していると、考えた方が良さそうですね」


 まだ霞ヶ関のバクフまで、かなりの距離を残した序盤で、防衛ラインの網にかかってしまった展開に、アオイはバクフが遊撃態勢にある事を予想した。


「バクフの奴も……一筋縄じゃあ通してくれないって事ね」


 皆の意見を受けて、それを締めくくる様に、アカネは苦い顔をしながら、ここからのバクフとの戦闘が容易ならざる事に言及した。


「そうね……リンとカノン大尉が別行動を取っているので、こちらも現有戦力でバクフまで到達しなくてはならないわ―――先を急ぎましょう」


 予想以上のバクフの防衛戦術に、進行の難渋を予感したミユウは、急ぎ進発を宣言したが、その時、それまで押し黙っていたシオンが、突然叫びを上げた。


「ミユウ中佐!―――リン大佐のところに行かせていただけないでしょうか!?」


「シオン少尉……?」


 突然の事に、ミユウもすぐには言葉が返せなかったが、かまわずシオンは言葉を重ねる。


「私たちの動きがバクフに捕捉されているのだとしたら……きっと大佐の動きも掴まれていると思います!―――大佐はトムキャットを置いていっています。国営放送に着く前に、もしハッキング機に襲われたら……」


 バクフが遊撃態勢を取っているのなら、丸腰で国営放送へ向かっているリンたちにも、危機が及ぶ可能性があるため、自分をその護衛に向かわせてほしいと、シオンは懇願した―――もちろん司令であるリンの身を第一に案じての事だが、そこには同行している姉、カノンへの心配も含まれている事は明らかであった。


 そのため発言を控えていたシオンであったが、進発をミユウが宣言した瞬間、抑えきれぬ思いを放ったのだった。


 公私混同とも受け取られかねない発言をした事に、シオンはまた押し黙ってしまったが、思いを告げた事には、いささかの後悔の念もなかった。以前の引っ込み思案だった彼女なら、そうは思わなかっただろう―――やはりシオンは、この『電脳謀反』を通して、自分の殻を打ち破ったのだった。


「いいわ、シオン少尉―――行きなさい!」


 そして、シオンの心意気を汲んだ様に、ミユウはあっさりとその申し出を了承した。


「中佐……あの……」


 あまりの事に、それを切望していたシオンの方が慌ててしまったが、


「確かに、リンたちの方面にもハッキング機が展開している可能性が高いわ。でも裂いてあげられるのは、あなたの小隊四機だけよ―――急ぎなさい!」


 ミユウは急かす様に、シオンの進発を促した。


「シオン―――リンとカノンの事は頼んだわよ!」


「こちらは私たちに、任せてください!」


「ほらシオン、急ぐのですよ!」


 アカネ、アオイ、チトセも次々とシオンにエールを送り、その背中を後押しした。


「みなさん……」


 ミユウ、そして仲間の温情に、シオンは感涙にむせび泣きたい心情に襲われたが、グッと歯を食いしばると、


「ありがとうございます!―――行きます!」


 と言葉を残し、自身のイーグルとAI支援機ファルコン三機の小隊で、国営放送に向かうリンとカノンの後を追った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ