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心強い助っ人たち

おばあ様はキーマンですね。

満開の桜の土手を最初に目にしたおばあ様の目の輝きは、ノッコとアレックスをも嬉しくさせた。


最初は桜で有名な観光スポットに行くことを検討していたが、おばあ様が一緒に来日されることがわかってから駐車場が近くて足元が良い場所をアレックスと捜して回ったのだ。


桜は散り際も美しいので帰りには、早咲きの桜で今はもう散り始めている桜並木の道も通る予定である。


「おばあ様孝行をさせてもらったお陰で、関東の桜事情に詳しくなったよ。」と思わぬ収穫をアルさんも喜んでいた。



アウトドア用の机と椅子を桜の下に用意して、注文して作ってもらったお重のお弁当とノッコが用意した常備野菜や飲み物も並べていく。


「ほう。これはいいな。以前桜を観た時には駆け足の観光で、こんなにゆっくりと食事が出来なかったからな。」


おじい様も気に入ってくださったようだ。


「私はこのフットチェアが気に入ったわ。これ、楽ねぇ。買って帰りたい。」


「それは他の荷物と一緒に送りますよ。これからノッコの花嫁道具を少しずつ船荷にして送るつもりなんです。」


「あら、そういうことなら私も便乗してもう少し買い物をしようかしら…。」


「エバンジェリン…まだ買うものがあるのか?!」


おじい様の言葉に私達も笑った。


確かにおじい様がそう言うのもわかる。

おばあ様たちの目的を考えて、成田空港に近くて車いすで買い物がしやすい大きな商業施設の近くにホテルをとった。

するとおばあ様は喜んで、毎日そこに買い物に出かけていたのだ。

私達が帰ってからもおじい様に連れて行ってもらったことがあるそうで、「儂は日本に来てこんなに買い物ばかりした事なんてかつてなかったよ。」とぼやかれていたぐらいだ。



ノッコはおばあ様の選んだ商品を見ていて、ふと思いついた商売の構想を膨らませていた。


アレックスに相談すると目の付け所がいいと褒めてくれて、おじい様にストランド領の店舗について掛け合ってくれた。

おじい様もノッコの話を聞いて、その上毎日おばあ様の買い物する様子を見ていた結果、勝算があると思ったのだろう、直ぐにイギリスの領地管理人に空き店舗の立地条件を提示して、何件か候補の店を探しておくように指示してくれた。


ノッコの方は、つい先日の日曜日におじいさま達に挨拶に来たうちの親族に、スタッフの募集をかけた。


日本にいて良い品物を探し出し、それを厳選してイギリスに送ってくれるスタッフが必要だ。

税関などの手続きが出来たり、製品を製造しているメーカーと交渉できる力も持っている人が望ましい。


これにはうってつけの人が手を挙げてくれた。

本家の重夫伯父さんの娘、ノッコの従妹の恵里ちゃんだ。


子育て中心の生活から、社会復帰を狙っていた矢先のノッコの提案だったらしい。


恵里ちゃんは法学部を出て営業職に就いていたことがあるので、こちらのすべてを任せることが出来る願ってもない人材だ。

悦子伯母さんやうちのお母さんも協力すると言ってくれた。

伸也もバイト代をくれたら英文の書類なんかは訳してやるよと請け負ってくれた。


「儲かりだしたら俺たちにも手伝わせてくれ。定年退職後のバイトより面白そうだ。」と重夫伯父さんやうちのお父さんも参戦してくる。


正直何年で儲けが出て来るのかわからない。

ネットでは買えない商品でどこまで勝負ができるのか…。


最初は恵里ちゃんと私で頑張ってみるしかないね。




◇◇◇




一週間の滞在の後、おじい様とおばあ様がイギリスに帰られる頃には、お互いを昔からの家族であるように思っていた。


「典子さん、夏にイギリスに来る時にはストランド邸に何日か泊まってね。2人で色々とお話もしたいの。」


おばあ様はその言葉を残して帰って行かれた。

別れの寂しさはあるけれどまたじきに会うことが出来るのだ。

夏の再会を楽しみに日々の務めに励むとしよう。



おじい様が持って来て下さったイギリスの大学の資料をうちの大学に提出して、転学手続きを進めてもらうことになった。

4月からの受講科目も教職中心だったものから、通訳・マーケティングなどこれから使えそうなものを手あたり次第に取ってみた。

急に商売の可能性が大きくなってきたので、自分で見てもバラエティ豊かなラインナップだ。


ターチには「これを事情を知らない人が見たらこの人何を考えてるんだろうって言うね絶対。」と笑われたし、アミには「私はノッコと一緒の講義が少なくなって寂しいじゃないの。裏切者め。」とジト目で睨まれた。


ごめんよ、アミ。

一緒に先生になろうねと言い合って、今まで一緒に頑張ってきてたから、アミには本当に申し訳ない。



大学から帰ってアレックスの仕事を手伝うのは今までと同じだが、ノッコの提案したお店の出店申請の事などはアレックスが調べて手伝ってくれていた。

その2つの仕事の中に結婚準備が入って来るので、私達の休日デートはもっぱら新居で使うものの買い物やら、その買った品物とノッコの秋・冬物などを荷造りして送る作業になっていた。


見かねたアミがお兄さんの伝手でコンサートチケットを取ってくれたり、ターチが美味しいレストランの情報をくれたりして、真面目で一つのことにのめり込みやすい私達の生活を豊かに彩ってくれた。

持つべきものは友達である。



そんな忙しい生活を送っていると、夏は瞬く間にやって来た。

6月の終わりに学校が終わると直ぐにエミリー、デビッド、それにキャサリンの兄弟3人が、両親に先駆けて日本に来ることになった。


エミリーさんの婚約者のロベルトさんも一緒だそうだ。

どうもエミリーさんの前世に関りのある人たちに会いたいと、一足早く来日されることになったらしい。



アレックスとノッコは、尾方のおばちゃんや天空の城で出会った加代子さんに連絡を取って、それぞれに会う日取りを決めた。

双方とも喜んで会いたいと言ってくださったので一安心だ。


私達がイギリスからのお客様を迎えに空港に行くと、一人の背の高い男性が近づいて来てアレックスの肩を叩いた。


「アル、久しぶりです。」


アレックスはびっくりして、サングラスをかけたその男性の顔を二度見したと思ったら、次に周りをキョロキョロと見廻している。


「お忍びなんだよ。君のおじい様に頼んでね、出入国管理官と航空会社に話を通してもらったんだ。エミリーたちだけで冒険するのはズルいだろ。私も参加させてもらいたいんだ。君の婚約者にも会ってみたかったしね。おもう様たちだけノッコに会ってるんだもの…。だから今は秀次(ひでつぐ)くんって呼んで欲しいな。」


アレックスは、ぐっと背筋を伸ばしてその秀次くんの耳元に顔を近づける。


「なんて危ないことをするんですか! 何かあったらどうするんですっ。」


「大丈夫だよ。見えないところにエージェントがいるから。」


それを聞いてさすがのノッコも気がついた。


もしかして、この人って、この人って…皇太子さまーーーーっ?!


なんとびっくりの展開です。


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