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・番外編 頼れる彼女と彼女と彼女

・番外編 頼れる彼女と彼女と彼女


※この話は会話のみで構成されており、非常に読みにくいことになっております。


 あ、電話だ。知らない番号だな。普通登録からかけるよな。ワンプッシュの奴ならお年寄りでも間違えない。でもそれ知らなかったり、覚えて無かったりするのかも。となると手打ちのかけ間違いかな。


 それともやっぱり、何か架空請求的なとこからの電話だろうか。そういうサイトは、基本的に踏んでないはずなんだけど、かかってくるってことは、番号から割れてるよね。どうしよう。いいや出ちゃえ。


 もしもし。北です。


 ――繋がった! 先輩か!?


 おお、この声はうちの部きっての体力派、ロンリー気取らない系ぼっちのサチコじゃん。どったの?


 ――よし、先輩だな。こっちは

『もしもし?』

 ――よしきた南!


 んん、どういうこと? もしかして、とうとうサチコも携帯買ったの?


『あれ、いっちゃんの声する。そっちいるの?』


 ――いいか良く聞け。俺は今肝試しの為に、旧校舎にロケハンに来てるんだが、そこで同じような理由で来てた、他の方々から携帯をお借りして、それぞれにかけている。


 マジ? 力技するねえ。絵的には両耳に携帯当てて話してる状態?


 ――そう。


『かなり切羽詰ってるみたいね。本当に幽霊でもいたの?』


 ――幽霊とか不審者がいるだけならまだ良かったんだが、実はな……ということなんだ。


 まさかサスペンス方面に行くとは、思ってもみなかったねえ。


『でもその旧校舎と、新聞のこととは関係がないのよね。繋がってないんでしょ』


 ――繋がりそうだから焦ってるんだ。俺の思い過ごしで済んだら、いじってくれよ。


 そんな死亡フラグみたいなこと言わないでよ。


 ――それと頼みがある。二人は手分けして、うちの旧校舎が設立された年と、廃校になった年、今の校舎が建設された年と、学校が始まった年を調べて欲しい。


 え、何で?


 ――事務室をもう一度調べたら、手帳を見つけた。


『お約束ってやつね』


 ――そこに書かれてた予定に、新校舎建設のことが書いてあったんだが、その時期がな。


『時期?』


 うちの校舎が築三十二年で、新しい校舎も建てられなくて、割りと本気でこの先どうしようかって、悩んでることは知ってる? 


 ――いいえ。


 ちなみに旧校舎の設立は1960年。逆算すると80年代頃にはあったことになる。新校舎が建てられた年は○年で、その年の四月にうちらの学校は始まって、同時に引き継ぎと称して、旧校舎は廃校になった。


 ――早すぎる。鉄筋コンクリートなら寿命は四十年くらいのはず。寿命を十年以上も残して、新校舎を建てたりなんかするか?


 どうにも噛み合わないねえ。


『手帳の中身は何時のことなの』


 ――79年。


 まるで一刻も早く立ち去りたい理由でもあったみたいだ。計画的といえば計画的だけど、どうも学校事業の為って感じじゃないね。


『それにしてもいっちゃんよく知ってるわね』


 今日のために下調べしておいたんだよ。現地視察はしてないんだけど。


 ――来なくて正解だったと思います。


『証拠を掴むだけとなれば、あなた頼みね、他に埋めたい外堀は』


 ――この学校の黒幕。


 言い方があるじゃん。理事とか校長とかさ。


 ――じゃあそれ。


『オッケー。それで私たちは手分けして調べたら、この番号に連絡すればいいの?』


 ――いや、後で来たときにでも教えてくれたらいい。それと。


『何?』


 ――絶対に単独では来るな。必ず二人で来い。


 何も出てないんでしょ? そんなに気を付けることなくない?


 ――いや、いる。


 いるの? マジでマジで見たい見たい!


『それ、あんたこそ戻ってきたほうがいいんじゃないの』


 ――いいか南。俺に何かあったとき、荒事で唯一頼れるのはお前だけだ。先輩を守ってくれ。馬鹿だけど悪い人じゃないんだ。


(やっべちょうてれる)


 サチコ……


 ――そうだ、南。お前に聞いておきたいことがある。


『何』


 ――起きるはずの大きな出来事、戦争や事件が起きないと、その中で起きるはずだった出来事はどうなる。


『他で帳尻を合わせようとするわ』


 ――具体的には。


『戦争によって発明されるものは、別の何処かで発明される』


 文学作品は?


『残念ながら。それに代わる傑作も、生まれないみたいね。それらの出来事が、人々の好みに影響して、作品の大作化を促すみたい』


 ――他には。


『医学でも科学でも、別のどこかで発見されて、発展を迎えるでしょうね』


 なんだ戦争しないでも色々出来るんじゃんアホくさ。


『その辺は流石人類よね』


 ――人は。

 人?


 ――死ぬはずたった人間の帳尻は合うのか。

 サチコそれ聞いちゃう。

『……合うわ。当然』


 どうやって。

 ――どうやって。


『戦争以外の場所で、病気や災害に巻き込まれて、死ぬ人が増えるわ。ただし、全く同じ人が亡くなる訳でもない。戦争で死ぬはずだった人数分、それ以外での人死が増えるはずよ』


 ――殺人でもか。

『そのはずよ』

 サチコ、どういうこと。


 ――戦後も高度経済成長もバブルもないこの世界で、日本が元の世界に近い水準になって、もう一度落ちぶれるまでの時間、そこに何があったのか、答えが見えてきたような気がする。


 ああそういうこと。私も何か分かってきちゃったけどさ、一応聞くよ。どういうこと。


 ――どうやらこの世界、かなり性質が悪いようだぞ。


『あんたこれからどうするの』


 ――残された宿直室を捜す。そこに最後の答えがあるはずだ。肩透かしで終わればいいが。


 他の人は。


 ――帰らせる。だから連絡はここで終わりだ。


 分かった。頑張ってね。私らも急いで調べて、そっち向かうから。


 ――できればゆっくり来て欲しいんですが。


 強がり言わないの。一人で来るなってことは、私ら二人でサチコを助けに行けばいいわけでしょ。先輩想いで段取りの良い後輩のために、一肌脱ぐよ!


『いっちゃん鼻息がこっちまで聞こえてくる』


 ――正直ちょっとうるせっす。


 いいから! 興味本位でうっかり自分の学校の闇を暴いちゃうとか興奮するよ!


『それが本音か』


 ――平常運転っすね。


 そりゃそうだよ。だってそのほうが、サチコも気が紛れるでしょ。


 ――そりゃまあ。


 難ならじっとしてなよ。ちゃっちゃっと助けに行ってあげるから。


『でも何かするのは私なんでしょ』

 もち! だって私非戦闘員だもん!


 ――ふふ、期待しないで待ってます。ありがとよ、二人とも。


 ちょっとは勇気湧いただろ。気持ちの切り替えはオタクの必須技能だからね。


 ――ええ、ちょっ 気、紛れま た。


『何? 声が遠くなってきたわ』

 電波悪いね、どうした。


 ――そろそ、じか 切 みたいです。


 あ、待って待ってサチコ! 最後に言っておくことがあるから、電話を上に翳して!


 ――あ、はい。


 すうー。


 テメエ等うちのサチコに手ぇ出したら絶対に許さんからな! 幽霊にも危害を加えるような悪霊を擦り付けに行ってやるからそう思えよ!


『うっへ』


 これでよし。それじゃねサチコ。首を洗って待ってな!


 ――……うっす! お待ちしてます、先輩!


 電話が切れてしまった。途中向こうでめっちゃノイズ走ってたから、たぶん出たんだろうな。みなみんに急いでメールだ。


 家に来て、と。送信。お、返事早いな。


『急いでサチコを助けに行きましょう』


 いいねえ。この二人って結構熱血だよね。よし、調べ物は妹に丸投げして、私も支度をしよう。今年の斎は当たり年! こんなおいしい経験、人生探したってどこにもないよ。


 友達も増えていい後輩もできて、事件にも巻き込まれる。言うことなしだ。待ってろよサチコ! それじゃ。


 おかあさーん! ちょっとこれから出かけてくるー!

 よし、断りも入れた。進め斎! 青春だ!

誤字脱字を修正しました。

文章と行間を修正しました。

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