・レベルアップしよう 2
・レベルアップしよう 2
引き続きテレビに映し出された、俺も知らない俺の個人情報と睨めっこをしながら、レベル上げを行う。正確にはレベルは上がってるので、ポイント割り振りからの、スキル的な物の取得である。
燃えるように真っ赤だった欠点パネルの数々は今は無く、フリーの成長点へと変換された。これからは俺の改造時間が始まるぞ。
「色々あるけど体力優先でいこう」
「その心は?」
「パフォーマンスというものは、体力の分だけ維持されるからな。頭は使い道があるとは限らないけど、こっちは幾らあっても困らない」
という訳で先ずはこれ。『優良人種置換』。
『優良人種置換』:取得者の基礎的な身体能力及び知能において、現在の人種に対してより優れた人種(誕生星内に限定する)の身体情報に置換する。
「すげえ、これだけで俺の現状のステが二倍くらいになるぞ。人種の差ってすっげえな」
画面端にある『並』とか『弱い』というファジーな各項目の下に緑色の横線が伸びている。元の能力からこれだけ伸びるってことか。
人種の身体的な格差ってすげえ。それにしても星の中で限定の括りがあるってことは、異星人いるのか。
「そりゃそうだよ。ピンからキリまでは、個人に限った物差しじゃないからね。人類に不可能は無いかもしれないけど、人種が別の動物の群れであることを踏まえれば、どうやっても超えられない壁というものがあるよ」
人種の壁を越えることは不可能ということだな。或いは不可能のない人種や個人は、全く以って限られているということか。当たり前のことだな。
しかしこれでピン側の体になるのか。リモコンの決定ボタンを押して取得すると『がしゃこん』という音と共にパネルが点灯する。これで取れたことになるのか。
「これって反映されるまでどのくらい時間かかるの?」
「もうされてるよ。背が伸びたことくらい気付こうよ」
え、そうなのか。瞬時に取得したパネルの効果が出るのか。筋肉痛とか筋断裂とか、骨折とかはしてないけど、これはお手軽でいいな。ちょっと鏡で見てこよう。
「身長は4cmくらい伸びたけど、体は別に引き締まってないのは何故」
「それはそうだよ。お腹にお肉付いてるけど、すごいパンチ力の格闘家とかいるじゃない」
確かにそういうのいるけど、俺としてはこれで痩せるかと、内心でちょっと期待してたのに。
「まあいいや、じゃ次はこれだな。『なまけ無効』と『鉄の胃袋』に、あと『油断体質』の解消」
「それを消すなんてとんでもないよ!」
……じゃあ前二つだけでいい。
『なまけ無効』:日々の鍛錬を怠っても体が鈍ったり、筋肉が贅肉に変わったりといった減少が、発生しなくなります。
大事だ。社会人が生活習慣病に罹るのは、一日の大部分が健康を損なう習慣であるからだ。体だって鈍り弱っていく。衰えない、コレ大事。
『鉄の胃袋』:比喩表現です。食中毒及び食物アレルギーを無効化します。
アレルギー体質は、自分でも知らない範囲でけっこうあったけど全部消したな。それを引いても食中毒にならないというのは大切だ。見切り品だって躊躇無く食えるようになる。
『油断体質』:お腹にお肉が付きやすい体質です。
ミトラスに消すのを止められてしまった。気に入られているのは嬉しいけど正直複雑。
「ここから他の筋力や心肺機能なんかの向上と細分化していく訳だ。それを段階的に強化すると、それはいいんだけど」
内臓系の強化を真っ先にやるとして、その中で異彩を放つパネルが二つある。犬の顔が描かれたパネルと、骸骨の顔が描かれたパネル。
「何コレ」
「動物パネルとアンデッドパネルですね。どっちも人類と互換性のある要素を取得できるようになります。突き詰めると獣人やアンデッドになれます」
人間辞めるようの要素か。取得すると今言った要素が解禁されるようになるのか。両方とも成長点が千とかなり高い。コレ取ると他の強化がいくらも出来なくなるな。でも折角だから取っちゃお。
『アンデッド化パネルが解禁されました』
『獣人化パネルが解禁されました』
解禁されたがそこからのパネルを取得した場合、学校の健康診断で引っかかる怖れがあるので取らない。取るとしてももっと後だ。
「なあ、ミトラス。血液検査とかで引っかからない範疇で取れる強化ってないの?」
「僕は医者じゃないからなんとも。でも人類と互換性がある訳だから、少しくらいとってもバレないと思うけどな」
じゃバレるな。こういう楽観論に従うと破滅するのはお約束だ。後回しにしよう。肉体の成長点が残り千とちょい。ほとんど強化してない。最後に一つこれをとって次に移ろう。
『余剰栄養変換』:あまった栄養が贅肉の代わりに成長点へと変更されます。
言葉にトゲがあるけど、偏った食生活でもこれ以上肉は付かないということだ。他のパネルが段階的に強化する分、最初が百とか二百なのにこれだけ千。高いな。
「ともあれこれで残りは、日々の生活で成長点が溜まり次第、また同じように強化すればいいんだな。強くなるっていうよりも、健康になっていくって感じだけど」
「強い体は丈夫な体。これでいいの」
それもそうか。とはいえだいぶ時間を食ったな。時計を見ればもう風呂に入る時間。明日は学校だし、どうするか。
「一旦風呂入って、それから続きやっちまうか」
「僕も折角だから最後まで一通りやって欲しいかな」
よし。そうと決まれば善は急げだ。俺たちは一度部屋へと戻って着替えを用意すると、そのまま風呂へと直行した。こんなこともあろうかとミトラスが既に沸かしておいてくれたから直ぐに入ることができた。
うむ、一緒に風呂に入るなんて最初の頃はどぎまぎしていたが、今では何てことのない行為だな。
俺も成長したなあ。
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