5話 セプター隊へ
存外に人の前に立つ事を私は不得意としている。
特に大勢の前で自己紹介とか考えたくない。
そう考えると先生等は、凄いな思ってしまう。
確かに慣れがあるのだろうけれど、根本的には違うと私は考えている。
どんな力があるのだろうか?
そして、私の身近で考えてみよう。
東京都『桜丘高等学校』。2年3組。
担任、武田 英雄。
あだ名『風林火山』。
そんな彼の性格を思い浮かべる。
タチが悪い自己中。
こんな愚痴を考えていると、私には無理だと諦める。
そして、私は『セプター局舎本部』の『会議室』にて、『セプター隊』のみんなの前で菊田 雛に促され自己紹介を行う事になっていた。
「私は……北春 小雪です。これから宜しくお願いします。」
北春自身、特に名前以外のアピール等が思い浮かばなかった。
その為、とても簡素なものになってしまったが、大丈夫だろうか?
こちらこそ宜しく‼︎と稲葉 双熾が拍手を送る。
それに続いて、『会議室』内の全員が北春に拍手する。
そして、正面モニター前に簡易に設置された椅子に腰を下ろした。
『会議室』と言っても北春が想像していた程の大きな部屋では無く、少人数での話し合い部屋といった雰囲気で、11の席が正面モニターに向かい設置られている。
現在その席には11席中、5席しか埋まっていない。
菊田はというと、私の定位置はここだからと、モニターの横で立って聞いている。
席に座っている『セプター隊』メンバーを見渡す。
右から、朝霧 栞。
不条 晃。
稲葉 双熾。
しかし、残り2人に対して北春は初対面だった。
まず、20歳くらいの赤髪ポニーテールの女性。
何故か黒スーツ姿で椅子に座っている為か、壁に刀を立て掛けている。
次に、こちらも20歳くらいの薄茶色の髪と瞳の男性。
すると、近くにいた菊田が北春に近付いて来た。
「と、言う訳で北春ちゃんは明日から『セプター隊』のNo.11として、入隊してもらいまーす。
能力は『幸運』らしいんだけど、みんな宜しくね〜。」
菊田が北春の自己紹介の不備を殆ど補填してくれる。
「それじゃあ、最初は稲葉君から。
最初だし詳しくお願いね。」
菊田に自己紹介を促された稲葉は椅子から立ち上がり、説明をし始めた。
「すでに俺の名前は分かってるだろうし、『セプター隊』の意味や内容も津々浦『副局長』から説明を受けているだろうから、例えばNo.の説明でもしようかな。
No.はあくまでも『セプター隊』での能力だけでの上層部が勝手に決めた格付けみたいな物だよ。
小雪はまだ能力が不確定だから『セプター隊』の最終番のNo.11。
因みに俺はNo.10でつい先程まで俺が最終番だったんだよ。」
なんとも饒舌に稲葉は説明を続けた。
「次に、俺の能力の事だけど、能力は『異質』。
『火』、『水』、『雷』、の3つを自在に発生させたり、操れたり出来るんだよ。
『異質』は複雑で細かいことは得意だけど、スタミナが無く火力も出ないんだ。
そして、この能力が何故『異質』と呼ばれるかは、『能力博書』の1人1つ能力の枠を越え、3つでは無いのか?と疑われているから『異質』なんだよ。
だけど、能力が弱いからNo.10、以上かな?」
そして、稲葉は一息つくと椅子に座り込んだ。
稲葉の奇妙な名前の能力の説明が終わり成る程なと納得できた。
「じゃあ次にはNo.9だから、仁科君ね。
宜しく〜。」
菊田は司会顔負けに振って行く。
すると、薄茶色の髪と瞳の青年が椅子から立ち上がった。
「えぇっと、始めましてだよね?
僕は『セプター隊』No.9の仁科 絢兎。
これから宜しく北春さん。」
そして、仁科の自己紹介に隣の赤髪の黒スーツ姿の女性が水を差す。
「絢兎緊張〜してるー。(笑)」
「うるさいぞっ!」
仁科が頬を少し赤らめ顔に手を当てる。
「少し邪魔が入ったが、続けるぞ。
僕の能力は、『幻覚』。
説明は実際にここで見せた方が早いだろう。」
仁科がそう言った瞬間、仁科自身の右の瞳が黄色に変化した。
しかし、北春には周りに変化が無いような気がしてキョトンとしていると、
「では、菊田『実務長』は何処にいるかな?」
と、仁科が問い掛けてきた。
北春は菊田が居たモニターの横を見るとそこには菊田は居なかった。
『会議室』全体を見渡しても人1人隠れられる場所は無く、扉を開閉した音もしなかった。
「菊田『実務長』?」
北春は頭の上にクエッションマークを浮かべて、菊田を呼び掛けると、
「北春ちゃん〜‼︎ここだよ〜〜‼︎‼︎」
菊田の哀しみの声が何も無いモニター横の壁から『会議室』中に響き渡った。
「と、まぁこんな感じに右眼が黄色に変化していると能力『幻覚』が発動しているサインで、消えているように見えるだけでは無く、全く違うものを見せたり聞こえさせたりと色々出来るよ。
広範囲にもできるけど、集中出来る環境の中じゃ無いと難しいし疲れるかな?」
菊田が騒いでいるが冷静に『幻覚』の説明をし、椅子に腰を下ろした。
「終わりましたよ菊田『実務長』。
次、お願いします。」
すると、仁科の黄色だった右眼は『幻覚』の発動を解いた為、元の薄茶色に戻った。
そして、モニター横の壁から突如菊田が現れた様に見えた。
「もーっ!なんで私を消すのかな?
他の方法があったよね⁉︎」
北春に居ないと思われた菊田は憤慨した様子で仁科に問い掛ける。
「1番分かりやすいと思いまして……。」
仁科は冷や汗をかきながら、ボソボソと答えた。
「じゃあ次ね、次は、No.8は朝霧ちゃんか〜………。」
菊田が微妙な顔付で黙りこみ、朝霧も俯いた様子で動かない。
すると、不条が突然立ち上がった。
「僕の方から説明をさせて頂く事は出来ないでしょうか?」
と、不条が菊田に許可を求める。
「うん、そうだね。不条君が1番適任だね。
北春ちゃんも知っておいて欲しいからお願いね。」
菊田の許可に不条が軽くお辞儀をした。
何が始まるのだろうかと北春も唾を飲み込む。
「北春さん、あまり緊張ぜず栞自身を見てあげて下さい。
2度目になりますが、この子の名前は朝霧 栞。
そして、能力は『負傷』です。
この能力『負傷』の名の由来は自身のが傷付くのではなく、他人を傷付けてしまう能力なんです。
事実、昔は『負傷』の制御が儘ならず、この子の周りの人間を傷付けて、殺してしまった事件も発生していました。
栞からすれば、とても壮絶な日々を送らねばなりませんでした。
そんな辛い環境から抜け出すことが出来ず、負の連鎖が続いていました。
しかし、今では能力が感情と結び付いている事が判明し、『負傷』と感情を制御出来ているから安心して下さい。
なので、栞に色メガネで見ないで下さい!」
不条による渾身の自己紹介は北春のそして、朝霧の心にも響いた。
北春は朝霧の悲しい過去を想像すると、とても辛い出来事だったのだろうと涙が溢れそうになる。
「もちろんです、これから宜しくね!栞ちゃん!」
北春が朝霧に向かって手を差し伸べた。
「あ、りがとう……。」
俯いたままの朝霧の震えて今にも泣き出しそうな声が返ってきた。
「良かったな、栞。」
不条が優しそうに声を掛けると、そっと朝霧の頭を撫でた。
「湿っぽくなっちゃったけど、No.7で不条君そのまま宜しくね。」
菊田が気を遣い、あえて明るく振る舞う。
「それでは続けて、名前や能力は分かっているかと思いますが、詳しく説明させていただきますね、北春さん。
まず、僕の名前は不条 晃。
そして、僕の能力は『不死』です。
能力は名前通り致死傷や通常の傷を即座に完治し、死亡する事がありません。
ウィルスや毒物も効果がなく、その他色々と『セプター局』の実験に協力しています。
僕はその実、『不死』があるからといって、痛い思いをする事が怖いてす。
ですが、栞を守る為なら全力で共に居たいです。」
朝霧の自己紹介で熱くなりすぎたのか、自分が告白をしている様に思えて当然静かになった。
「僕からはこんな所です……。」
不条は赤面気味で静かに椅子に座った。
「ありがとう、暑かったね不条君。
それじゃラストは、No.6で諸葉ちゃんだね〜。」
先程、仁科を冷やかした赤髪ポニーテールでスーツ姿の女性が立ち上がった。
「ん〜、不条の後だと何だか色々とやり難いな……。
えー私の名前は諸葉 燈火。
能力は『圧力』。
能力名通り、自在の方向に見えない力を発生させる事が出来る能力だよ。
分かりやすいでしょ?
やろうと思えば、トルネードも発生させたり、空も飛べるよ。」
諸葉が偉そうに胸を張る。
「それと、やっぱり気になっていると思うげど、」
と言いながら、諸葉は壁に立て掛けてあった刀を手に取った。
「この日本刀は『四季』って言うんだよ。」
そして、諸葉は『四季』を鞘から抜き刀身を出す。
「と、本物の日本刀なんだけど、あんまり私の『圧力』には関係無く、戦闘スタイルに刀が身に付いているだけなんだけどね。
もちろん、能力的に人も切らないんだけど、『圧力』の発動と同時に『四季』で相手を切るように振り下ろすように『圧力』を掛けるだけなんだけどね。」
『四季』の刀身を北春に見せた後、刀身を鞘に戻した。
「終わりましたよ、菊田『実務長』〜。」
諸葉は『四季』を再び壁に立て掛けて、椅子に腰を下ろした。
「『会議室』に居る『セプター隊』のメンバーはこれで全員なんだけど、北春ちゃん覚えられた?」
「はい、右から、栞ちゃん、不条さん、稲葉、仁科さん、諸葉さん。」
北春は1人ずつ相手の顔を見て名前を読み上げた。
「俺の名前はなんで呼び捨て〜?」
と、稲葉が呟くが今回はスルーする事にした。
「うん、OKだね。
因みに『会議室』には居ないメンバーがあと、5人居るんだけど…。」
菊田が他の5人を紹介しようとすると、
「自分が紹介しますよ。」
突如、稲葉が介入してきた。
「それなら任せちゃおうかな〜。
お願いね、稲葉君。」
稲葉は勢い良く椅子から立ち上がった。
「今からかなり長くなるかも知れないけど、覚えておいて。
まずは……
No.5。御影 涼。
『日本2大財閥』の『荒川財閥』と『御影財閥』。
その『御影財閥』の御曹司が御影 涼。
御曹司の諸事情から『セプター隊』には大半が参加出来てない。
そして、能力は『反射』。
自身を中心に半径2メートルの球体状半透明の(反射フィールド(地中も含めて)』を張り、『反射フィールド)に接触したほぼ全ての力を任意であらゆる方向に弾く事が出来る。
ただ、『反射』には例外があって『反射フィールド』内からの力に対しては『反射』が発動しない。
また、太陽光や重力や気圧など常にある自然の力等は反射出来ないが、能力者が関与した場合は反射可能。
No.4。橘 詩音。
橘姉妹の妹。
基本は『セプター局』の仕事で外国の能力事件に解決に携わっているため、帰国していない時が多く最近は参加出来ていない。
能力は『創風』。
能力名通りに風、気体を創めとし司る能力。
空気を動かし風を発生させ、空なんかも飛べる。
その他、空気以外に気体なら毒ガス何かも発生出来る上、逆に消失させる事も出来る。
No.3。橘 花音。
橘姉妹の姉。
花音も詩音と同じく外国で能力事件を携わっている。
仕事の際は『バディ』として姉妹として、とても息が合っている。
能力は『重力』。
能力名通り重力の大きさを自在に変化がさせる事が出来る。
大きさをマイナスにすれば、浮かぶ事が出来る。
そして、花音は超広範囲に『重力』を発動させる事が出来る。
No.2。五十嵐 刹那。
神出鬼没で『セプター局』ですら、彼の居場所を把握出来ていない。
能力がらスパイ等の情報活動が得意。
能力は『停止』。
停止させるのは時間。
そして、停止した時間の中で自由に動く事ができる。
また、任意で対象物を自分と同じく停止した時間の中を自由に動けるようにさせる事ができる。
No.1。舞虎浜 姫子。
異名『魔女』。
『セプター局』ですら、彼女を制御する事が出来ず、強い相手との闘いを楽しむ為、『セプター局』に協力している形になっている。
能力は『終焉』。
全てに終わりを告げる黒い炎を操る能力。
『終焉』の対象物は全て。
例外は『能力博書』での大気圏外の場合のみ。
『終焉』に触れれば直ぐに燃え移り途中で消す事は出来ない。
燃えた後は灰さえも残らず、残るものはそれが存在していたと言う認識のみ。
『終焉』は火力が大きくスタミナもあるが、繊細な操作が不得意。
また、本人自身を『終焉』で燃やす事は出来ない。
そして、致死に匹敵する外部から攻撃等は彼女の認識外であったとしても『終焉』は自動に発動し、それを燃やす。
今現在で確認されている能力の最上位。
……とこんな感じだよ。」
「ありがとう、稲葉君。
殆ど完璧だったわね〜。
まるで台本が手元にあるみたい。」
菊田はクスリと笑い、稲葉は椅子に座った。
北春は稲葉の説明を聞き終えまた1つ納得をしていた。
先程、菊田が怒ったふりをしていた時、五十嵐に出会い少しの間お喋りをしていた。
しかし、菊田に聞くと殆ど時間が経過していなかった為、不思議だとは思っていたが『停止』が発動していたのならば納得がいった。
突然現れたり、突然消えたりしたのも『停止』でそう見えていただけである。
「私、五十嵐さんには先程会いましたよ。」
稲葉に告げると、
「なんだ、結局来ていたのか。」
と、稲葉は独り言を呟いていた。
菊田は、最後にと北春に話し掛けてきた。
「北春ちゃんは、『セプター局』は『皆無石』の効かない能力者ばかりと思わせしまうかもしれないけど、『皆無石』の効かない能力者は『セプター局舎本部』でさえ『セプター隊』以外には私の『治療』と津々浦『副局長』の『不変』。
あとは局長の『検索』くらいなものなよ。」
モニター横に居た菊田が北春に向かって近付いてくる。
「だから、貴方達の能力はとても大切なものだから、これからよろしくね‼︎」
菊田は北春の眼の前で止まり、北春の肩に力強く手を置いた。
そして、菊田の強い視線の笑顔に北春は冷や汗をかくしかなかった。
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『セプター隊』メンバー紹介が終わり、自己紹介の為、『会議室』に集まった7人はもう夜が遅いとの事で解散となった。
そして、北春は『セプター局員』に案内され『宿泊室』へ、今では自室に案内された。
自室に入るとすでに自分の荷物が運び込まれており、荷物の整理まで完了していた。
どこまでやるんだ『セプター局』は、と思いながらベッドに飛び込んだ。
「ふかふか。」
自宅のベッドより『宿泊室』に設置されていたベッドの方が大きく気持ち良くて北春はつい、良い気分になってしまう。
時間は既に10時を越え、とてつもなく大変な目に遭わされた(稲葉に)と今日の怒濤のような出来事を思い返していると、本日最後の厄災が登場した。
ピーンポーン。
自室のインターホンが室内に鳴り響いた。
「はーーい。」
と、こんな時間に誰だろうと扉を開けると、そこには稲葉が立っていた。
「こんばんは、小雪。さっき振りだね。
『宿泊室』どうだった?」
「まさか!稲葉が私の荷物を配置したの⁉︎」
「いやいや、そこまではやってないよ。」
稲葉は冤罪だとばかりに動揺する。
「それでこんな時間に何の用ですか?」
「小雪は明日は空いてる?」
「明日は平日ですし、学校ですよ。
その後なら大丈夫だと思うけど……。」
「ならOKだね。明日、学校終わりに迎えに行くよ。」
「え?何するんですか?」
「明日デートに行こう。」
「……?」
北春は言葉が出なかった。
いや、理解出来ず状況が呑み込めなかった。
「だから、明日デートに行こう。」
そして、稲葉は会心の一撃で追撃した。
「ええぇ〜〜〜〜〜〜〜‼︎‼︎⁉︎⁇」
稲葉にさらっと言われた事に北春は驚愕し大きく声を上げた。
近所迷惑ならぬ『セプター局』迷惑であるほど、声は響き渡った。




