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星々の消えゆく世界  作者: 山吹 残夏
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3話 副局長と実務長

夏の暑さには、やはり目眩めまいを起こしてしまう事が多々ある。


しかし、今宵の気温は昼と比べても格段と涼しく丁度良いのだが、何故かクラクラする。


熱中症だろうか?


つい先程、熱中症だから病院に連れて行って欲しいと稲葉いなば 双熾そうしに懇願してみた結果、『セプター局舎』には『治療』の能力者も居るから大丈夫だの何だのとあっさりと返されてしまった。


クラクラする。


今現在、北春きたはる 小雪こゆきは、絶賛現実逃避中にあった。


時間は7時を越え、恐らく『セプター局舎』に向かっているだろうワンボックスカーの中で揺られている。


車内には、稲葉 双熾、北春 小雪、不条ふじょう あきら朝霧あさぎり しおり、他『セプター局員』達が乗車している。


車内から眺める空は暮色を都会の光が混ざり込んだ黒色で覆い被さっていた。


見掛ける家々では家族団欒かぞくだんらんであろう光が漏れており、私もこの時間は家族とご飯でも食べているんだろうなと思い出に浸っていた。


「さぁ、着いたよ。」


不意に北春は、現実に引き戻される。


気がつくとワンボックスカーは停車しており、不条や朝霧や他『セプター局員』達も降車していた。


そして、目の前では稲葉が北春に差し伸べていた。


今までの稲葉に対して色々と思う節があったとは言え流石に、ここで稲葉の手を払い除け堂々と降車する勇気も無く、存外に嫌な気持ちにならなかったのがしゃくだが、稲葉に手を貸して貰い降車した。


そこで北春の目に広がったのは、1度は見た事があり、夏の夜の負けないくらいの部屋の明るさと存在感のある巨大な建物だった。


日本の特殊能力の殆ど管轄する『セプター局』の総本山。


東京都『セプター局舎本部』。


『セプター局舎本部』を見上げて、改めてこんなところに来てしまった事を実感させられる。


すると、隣で稲葉も『セプター局舎本部』を見上げながら、


「やっぱりでかいよな。」


と、まるで北春の思っている事を見透かしている様だった。


「ところでなんだけど、やっぱり今後の事が少し不安だろうから確定では無いけれど、予定を説明しておくよ。」


隣の稲葉は、突然そう切り出した。


全く以って有無を認め無い事が分かりつつあった北春は渋々稲葉の話に耳を貸した。


「まず、始めに『副局長ふくきょくちょう』に呼ばれてるから『副局長室ふくきょくちょうしつ』に向かって貰う。


その後、『セプター隊』のメンバー紹介で今日は終わりかな。


因みに、これからは『セプター局舎本部』の『宿泊室しゅくはくしう』で小雪用の部屋が用意されるから、そこで生活して貰うよ。」


何か北春としては問題があり、再び叫び追求しなくてはいけない説明があった気がしたが、クラクラしているため、聞き逃してしまう。



------------------------------------------------------------



足元をフラつかせながら北春は稲葉に『セプター局舎本部』の『副局長室』と大層なプレートが貼られた部屋の前に案内された。


コンコンコンッと稲葉は『副局長室』の大きな2枚扉の片方を3回ノックする。


すると、初老の太い声で、


「入りたまえ。」


と、中から聞こえてきた。


それを合図に稲葉は、2枚の大きな扉をゆっくりと開き、


「さぁ、行ってらっしゃい。」


と、稲葉は軽く声を掛け、北春を『副局長室』へ入室させる。


しかし、稲葉自身は入室すること無く、少し会釈をするだけで扉をゆっくりと閉じた。


室内は手前に2台のソファーが向かい合わせに並んでおり、間には背の低い机がありソファーの片方に白い白衣を着た30歳くらいの女性が座っていた。


そして、奥の窓際にはいかにも偉そうなデスクと贅沢な椅子があり、その椅子には和服を緩く着こなし腕を組む少し白髪混じりの50歳程度男性が鎮座していた。


「初めまして、北春小雪さん。


私は『セプター局舎本部』の『副局長』をしておる、つつうら 龍二りゅうじだ。


今から君がここに連れてこられた理由等を話すのだが…。」


津々浦が初老の太い声で話を本格的に始めようとした瞬間、ソファーに座っている女性が遮った。


「待って下さい、津々浦さん。


北春ちゃんは立ちっぱなしですし、疲れてるんですよ。」


確かに北春は扉の前で立ちっぱなしだし、疲れている。


すると、女性は自分の隣に座るように手招きをする。


「失礼します……。」


緊張気味に女性の隣に腰を下ろした。


女性は北春に優しく微笑み掛けて、


「そんな緊張しなくて良いのよ。私の名前は菊田きくた ひな、これから宜しくね。」


そう言って、優しい手つきで北春の頭を撫でた。


その瞬間、今までの疲れていた事が嘘かの様に感じる程、肩が軽くなり頭も冴えた。


「えぇっ?何?なんか元気になったみたい、です。」


北春は驚きの声を上げるが菊田は落ち着いた様子で続けた。


「みたいじゃ無くて、実際に元気になっているのよ。


私の能力は『治療ちりょう』。


こうやって相手の身体に触れているだけで、どんな病も治療出来るのよ。


それが疲労しているだけでもね。


ただ、時間が掛かるのが欠点だけど。


稲葉君から聞いていなかった?」


そう言えば言っていた気がしたが、あの時は疲れていた為あまり記憶に留まっていなかったらしい。


そう言い終えた菊田は北春の頭から手を離した。


「ありがとうございます。」


菊田に頭を撫でられ小っ恥ずかしくなった北春だったが、お陰で今日の諸々の疲れは完全に消滅した。


「津々浦さん、もう大丈夫ですよ。」


菊田が津々浦に話を続ける許可を出す。


津々浦は話のリズムを立て直す様に一度咳き込み、


「では、君は座ったままで話を聞きいていたまえ。」


津々浦はデスクで腕を組み直し、北春に話をし始めた。


「まず、君がここに連れて来られた理由だが、稲葉 双熾の判断によるものだ。


現在の『セプター局』の技術力を持っても『皆無石かいむせき』の効果が無い能力者が明確に能力を発現、発動させている事を断言することは、実際にその能力の現象を確認する以外に術はないのだよ。


そのため、君自身の内で能力が発現、発動しているかどうかは我々では一切分からない訳だ。


そのため、君は『セプターインヴァリデイト隊』に身を置いてもらい君の能力『幸運こううん』が定かなものなのかを確かめなければならない。


君からして見れば、そんな定かでは無い能力にこれ程までに厳重になる必要はないと思うかもしれないが、これはとても重要なことなのだよ。


全人類の99.99%以下も珍しいのだが、『皆無石』の効果が無ければ日常生活でも無意識に能力が発動してしまう可能性があり、周囲や君自身が危険に晒されてしまう。


そして、世間にはあまり認識の低い事だろうが、『皆無石』の効果が無い能力者が能力による事件を起こす事は重罪に処され、ほぼ一生『セプター局』の管轄下で生活を制限される事になる。


たとえ、無意識下であったとしてもだ。


しかし、『セプターインヴァリデイト隊』では、『皆無石』の効果が無い能力者達がある事を条件に自由に生活を送って行く事でき、保護もできる。


それは、彼ら自身の様な能力者や普通の能力者による能力事件を対処、制圧する事を仕事(条件)にしている部隊なのだよ。


そして、君にもこの『セプターインヴァリデイト隊』に所属し、活動を彼らと共に取り組んで貰う。


もちろん、君の両親には許可も取ってある。


これからの寝泊まり、普段の生活、学校への通学は『セプター局舎本部』から行ってもらう。


また、『セプター局』の任務が最優先事項である為、急遽きゅうきょの際も心得ておいて欲しい。


話が長くなってしまいすまなかったが、一応の話は以上で終わりだ。」


津々浦による話は長々と続き、疲労が治っていなければ理解不能だったかも知れない。


いや、かなり難しかった。


すると、北春の隣に座っいる菊田は、


「大丈夫?堅っ苦しくて難しくなかった?」


と、北春に心配そうに声を掛ける。


「大丈夫……です。」


実際、北春には話が難しく根を上げたかったが、本人前でそうする訳にも行かなかった。


それに、津々浦の有無を言わさ無い語りはとても重く信憑性と責任感を感じさせ従わざる得なかった。


「そう言えば、何故『副局長』なのですか?『局長きょくちょう』は居ないのですか?」


つい、北春は津々浦に言葉を漏らした。


「『局長あのひと』は、長くここを留守にしていらっしゃるのだ……。」


津々浦は淡々と返答した。


しかし、日本の能力の中枢機関である『セプター局舎本部』の『局長』が長く留守にしているとは、不可思議な話ではある。


すると、菊田が自分の膝に手を置き、


「それじゃあ、ついでに私も役職とか説明しようかな。」


と、話題を変え軽く北春の方に体を向けた。


「えっと、津々浦さんが『セプター局』の権力で2位だとしたら、私は3位なんだよ。


理由は私の役職が『実務長じつむちょう』、『セプターインヴァリデイト隊隊長』、『皆無石装備研究製作室室長』、『皆無石実験室室長』、『セプター局舎本部監獄長』とざっとこんな感じかな?


でも、全部まとめて『実務長』で良いわよ。」


菊田はざっと5つの役職の長を兼任していた。


菊田のさらっとした説明は1度聞いただけでは絶対に覚えられないという事を理解した。


「あっ!ごめんなさい、津々浦さんの話に加えて私まで長くしてしまって。


北春ちゃんにはこれから『セプター隊』に自己紹介して貰うんだけどおくれてしまうわね。」


菊田は先程からさり気なく何度か津々浦『副局長』を津々浦さんと呼んでおり、話も途中で遮っていた。


そして、菊田さんが話している時に一切口を挟まない所から実質菊田さんの方が権力は上ではないかと北春はつい思ってしまう。


『副局長』と『実務長』の関係性は少しばかり不思議に北春は思えた。


「それでは北春ちゃんは連れて行きますので、後の事はお願いします。津々浦さん。」


「ああ、構わん。」


菊田は津々浦に許可を取り、


「さぁ、行くわよ。」


と、北春を立ち上がらせる。


そして、『副局長室』の大きな2枚の扉を開け、北春と菊田は退室した。



------------------------------------------------------------



『副局長室』前の廊下には稲葉どころか人の姿さえも無かった。


「それじゃあ、『会議室かいぎしつ』に向かうからね、そこでみんな待っているから。」


菊田は北春にそう告げると、強引だが北春の腕を優しく引き『会議室』に向かって廊下を進んだ。

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