13話 夢
「久しぶりの登場‼︎独者で〜〜す‼︎」
と、独者は盛大に声を上げ、ピースを横にして目に合わせて大げさなポーズを決める。
「僕のこと、覚えてくれているかな?
プロローグ以来だから、なんと!2回目の登場になるんだよ。」
張りのある声で高々と宣言する。
独者は一切の外の景色を遮断した黒々と染まった空間の中央で王様が座る様な大層か豪華な椅子の1脚に偉そうに腰掛けている。
今は、『孤独な物語』と書かれた分厚い本は椅子と独者の間の隙間に閉じられて収まっている。
独者は焦げ茶色の薄汚れてボロボロのローブを身にまとい、腰には手の持つところに布が巻かれた黄金色に輝きを放ち続ける『小槌』を携え、絶対なる力を振るっていた『刀』を鞘に戻してある状態で腰にさし、背中には、白色と黒色が均等に螺旋を描いた大きな『杖』を装備していても、平然としている。
そして、正面を向いている独者の椅子から直角に右を向いた椅子には、一切の汚れた形跡のない純白のワンピースを着た黒髪ロングの少女が頬に手を当てて、独者のやり取りに退屈そうに、不服そうにしていた。
「どうしたのアッスー?
僕達の数少ない登場の出番にまた、何か不服でもあるのか?」
独者のその一言に更に、アッスーは機嫌を損ね、カチンときた。
「なんなんだ⁉︎その『アッスー』って、あだ名はまだ引っ張るのか?」
アッスーは最初の独者の上がりまくったテンションも頭にきていたが、それ以上に未だ改善される見込みが見えないあだ名についても、一言物申さずにはいられなかった。
「なになに?アッスーこそ、まだそれを引っ張るの〜〜⁉︎
もー、僕の丹精込めて考え込まれたアイデアがそんなに気にくわないのかい?」
「当たり前だ!ものの数秒で適当に言ったくせして何を今更白々しい。」
「はいはい、わかりました。
じゃあ、アッスーのあだ名は『アスこ』な。
うんうん、『アス子』、『アス湖』。」
ブチン‼︎とアッスーの堪忍袋の尾が切れる音が盛大聞こえたと思えた。
「あだ名のあだ名って、なんなんだよ⁉︎
舐めてるのか???
楽しんでるよなぁ⁉︎」
完全に切れたアッスーは一切手を付けられない状態に陥っていた。
正直、アッスーをおちょくった独者でさえ、少しやり過ぎたかな?と後悔している。
暴走が止まらないアッスーは椅子から立ち上がり、椅子に座っている独者を羽交い締めにしようと被さっている。
独者はまあまあと言いながら、アッスーの事を抑え切れていない。
「えーっと、アッスーが暴走したので、今回はこの辺で!
バイバイ〜〜‼︎」
独者はアッスーに殴られながらも、手を振っていた。
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北春 小雪は瞼を開けた。
そこには何処までも果てしない真っ白な空間が広がっていた。
そこで北春は夢だと確信した。
「よく見る夢……。」
と、呟いた。
他の人にこの夢の事を話してみると、それは明晰夢だと言われた。
明晰夢とは夢を見ている事を自覚している夢のことだが、私の明晰夢はいつも同じ事が起きる。
最初はこの真っ白な空間に私だけの1人ぼっちで、ポツンと何もせずに立っているだけ。
だが、少しすると私の前には1人の青年が何処からともなく姿を現わす。
しかし、その青年は一目で明らかに不可思議な服装をしていると判断できる。
青年は焦げ茶色の薄汚れてボロボロのローブを身にまとっている。
青年の腰には手の持つところに布が巻かれた黄金色に輝きを放ち続ける『小槌』を携え、絶対なる力を振るっていた『刀』を鞘に戻してある状態で腰にさし、背中には、白色と黒色が均等に螺旋を描いた大きな『杖』を装備していた。
そして、青年はいつも私の方を見て微笑している。
しかし、青年からは『喜怒哀楽』の中で言うと『哀』の感情がひしひしと感じられた。
そして、少しすると私と青年の距離がどんどん離れていく。
私は何故だか、その青年が離れていなくなっしまう恐怖や寂しさを感じ、青年に追い付こうと必死で走り、手を伸ばす。
それでも2人の間の距離は縮まる事なく広がり続け、遂には青年が見えなくなってしまう。
すると、何故か言葉では言い表せない様な感情が込み上げてくる。
そして、そこでいつも夢から覚める。
ハッ!として、北春は辺りを見回す。
真夜中に自室のベッドの上で横になっている。
どうやら目が覚めたらしい。
北春は体を起こし、少し夢について考えてみることにした。
同じ夢をこの頃頻繁に見るようになった。
そして、夢の中に登場する青年に対して込み上げてくる感情に疑問を感じる。
私はその感情が込み上げてくる理由に一切の検討がつかないからだ。
だって、
「貴方はいったい誰なの?」
北春は夢の中の青年に問い掛けた。