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星々の消えゆく世界  作者: 山吹 残夏
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プロローグ

「プロローグ‼︎」


青年は元気を装いそう叫んだ。



------------------------------------------------------------



1999年。季節は夏。空は星々が溢れんばかりに輝いていた。


「パパ見てー、お星様とーっても綺麗だよ!」


ある一組の家族が星を見るために、都心から郊外の山に少しばかりの家族旅行に来ていた。


「本当に綺麗だな〜、今夜は晴天だし来て正解だったな。」


父親は仰ぐように空を見やると、息子を抱きかかえ肩車をして更に息子を喜ばせようとする。


「たっかぁーい‼︎パパすごーーい。」


喜ぶ息子を見て自分もつい笑顔になる父親。


「もー、辺りは暗いんですよ、気を付けるよーに。」


母親が息子と一緒になって喜んでいる父親を諭す。


「ごめん、ごめん、気を付けるよ。俺もこの子の父親だからな!」


「本当に気を付けてくださいね。」


父親と母親の間にも笑顔が生まれる。


しかし、息子はつい先程まで、喜びはしゃいでいたのに今は呆然と父親の肩の上で輝く星空を見つめ続けていた。


「ん?どうしたんだ?何か珍しい物でも見つけたのか?」


黙っていた息子に疑問を感じ声を掛けてみる。


息子は星空を指差しこう呟いた。


「パパ、あの動くお星様ってなーに?」


父親は慌てて息子の指差す方向を見てみる。


「おぉ!あれは流れ星って言うんだ。流れ星が消えてしまう前に3回願い事を言うと願い事が叶うんだぞ。」


父親は自慢げに息子に教えた。


しかし、息子は更に父親に疑問を問い掛けてきた。


「でもパパ、あのお星様消えないよ?」


息子は喜ぶことなく自分の疑問を問い掛けた。


「え?」


父親はただ驚き言葉を失った。


今の自分には今起きている不可思議な状況に対して、息子に説明し得る言葉を持ち合わせていながったからだ。


「え?嘘っ!どんどん大きくなってる。まさか落ちて来てる⁉︎」


父親の隣で母親は驚愕し開いた口を手で当てて目を見開いている。


空に輝く1番大きなお星様は大気圏を突入した辺りから無数の光の弧を描いて地球を包み込む様に放出されていく。


それは空を星々で埋め尽くし昼夜を逆転させたと勘違いさせる程に、明るく輝いていた。


数で言うと約60億以上のお星様が。


そのお星様の数は世界人口の数と同じだった。


放出されたお星様の丁度3つが夜空を眺めに来た家族の元にも降り注いだ。


その星は地球に住む全人類に平等にかつ余りなく降り注いだ。


そう、人類だけに。


この出来事を後に 『流星りゅうせい』 と呼ばれることになる。


その星が降り注いだ事が原因と思われる特殊能力が全人類に突如として発現したのだ。


だが、全人類に能力が使えるのならば、最早特殊でもなんでもない気がするが。


そして、いきなり能力が手に入った全人類はパニックに陥った。


横暴に能力を振り回し闊歩する者達が現れ世界は滅亡するとまで言われていた。


しかし、それはたったの一カ月で終止符を迎える。


日本のある学者が能力の定説を発表したからだった。


《 『能力博書(のうりょうくはくしょ)


能力は全人類に平等に1人1つ1種類が与えられた。


これは産まれてくる子供達にも例外はない。


また、能力の発現20歳以上の者は必ず発現しており産まれて間も無い状態であっても発現する可能性がある。


能力が完全に被ることはない。


能力が変化する事はない。


能力は大気圏を超えると使えなくなり、能力の効果も完全に消滅する。


『流星』が地球に降り注ぐと同刻、能力の発動を防ぎ能力の効果を消滅させる金属、通称『 皆無石(かいむせき)』が出土が確認された。


この金属、『皆無石』を体または対象物に接触させた状態であれば能力の発動防止に99.99%以上有効である。


『皆無石』に対する能力の影響も99.99%以上無効である。


月野徹(つきのとおる)


世界が感嘆した。


不思議な部分は多々存在したが、この定説を論破できた学者は2016年なっても存在していない。


まさしく完璧だった。


『能力博書』により全世界から新たに『皆無石』の発掘と効果が認められ、全人類は国際の壁を越える団結力を見せ、能力によって混乱した事態は休息へ向かった。


そして、世界は特殊能力を加え再び平穏を取り戻した。


------------------------------------------------------------



「と言う設定の物語で〜。」


青年は椅子にを深々と腰を下ろし足を組み肘をつきながら、本を片手に気だるそうに読み上げた。


2016年。


一切の外の景色を遮断した黒々と染まった空間。


その空間の中央には、王様が座る様な大層かつ豪華な椅子が2脚。


1脚は正面を向き、本を朗読する青年が偉そうに腰掛けている。


そして、正面を向いている椅子から直角に右を向いた椅子には一切の汚れた形跡のない純白のワンピースを着た黒髪ロングの少女が肘をつき頬に手を当てて、青年の朗読に対して一瞬の不満の顔を窺わせる。


「そこの設定って、部分は読んだらいけないでしょ。」


少女は青年に対して、軽い指摘をする。


「あははは〜。ごめんごめん。」


青年は少女の指摘に対して謝罪をして片手に持っていた本をパンッ!と勢いよく閉じる。


そして、椅子と自分との隙間に本を入れる。


本はかなり分厚く表紙のタイトルの部分には、『孤独な物語』とだけ書いてありその他の文字は見受けられない。


「それじゃあ、プロローグも読んだ事だし、軽くだけど自己紹介でもしようかな。」


青年は陽気に宣言した。


椅子座る青年と少女はどちらも外見は17歳そこらだ。


青年の髪や目は黒く喋らなければ物静かな印象を覚えるかもしれない。


しかし、不可思議に見えるのは青年の服装である。


青年は焦げ茶色の薄汚れてボロボロのローブを身にまとっていた。


そして、腰には手の持つところに布が巻かれた黄金色に輝きを放ち続ける『小槌』を携え、絶対なる力を振るっていた『刀』を鞘に戻してある状態で腰にさし、背中には、白色と黒色が均等に螺旋を描いた大きな『杖』を背負っていた。


そんな青年は喋り出した。


「それでは、えーっと自己紹介をしよう。僕の名前は読者(どくしゃ)。読む者と書いて読者だ。または、独者(どくしゃ)でもOKだぞ。意味合い的に。」


独者の顔には一瞬の曇りが窺えた気がした。だが、すぐに陽気な顔を取り戻す。


そして、少女は独者の方を向き喋り出した。


「次は私の番だね。私の名前は、」


そう少女が言い、名前を名乗ろうとした瞬間、独者が水を差す。


「彼女の名前はアッスーね。」


独者がアッスーと呼ばれた少女にそう宣告した。


「はぁ⁉︎」


一瞬でアッスーの怒りが込み上げ感情を爆発させる。


「ふざけるなよ‼︎なんでそんなネーミングセンスの欠片が一切存在しないあだ名を名乗らなければならない⁉︎もう少しマシな案があっただろー!」


アッスーは、次から次へと喋り倒す。


しかし、独者は悠然と告げる。


「少し前にファミレスで決めただろ?」


いやいやいやいやいや!こんなダサい名前に決定しては堪るかとアッスーは取り乱し始める。


そんなアッスーを傍に独者は次に進めようとする。


「そんなところで、本編始めようか!」


独者が宣言し、『孤独な物語』と書かれた分厚い本を開く。


「それでは本編スタート‼︎」


独者は最後まで顔の笑みを崩さず陽気に本を読み始めようとした。


「ちょっと待て〜〜!」


完全に自分を取り乱したアッスーが椅子から立ち上がり叫ぶがアッスーの悲痛の叫びは、黒々と染まった空間に虚しくも響き渡り、独者に想いが届く事なく消滅する。


「おっと、言い忘れるところだったよ。」


独者がアッスーの悲痛の叫びが聞こえてないかのように平然と思い出す。


「この物語の主人公の稲葉双熾(いなばそうし)は僕の顔は完全に同じだから〜。」


意味の不明な言葉を独者は最後に残した。


そして、『孤独な物語』は始まった。

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