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名前、声、身長、イケメン。この世の要素を全て持っている僕の名前が明かされる!with鍋子



未だ木々の覆う森……なのか山なのかわからない道を行く僕と兎。

いつになったら集落に着くんだろうか……。

というかそこに人間はいるのだろうか。


そういえば兎は、僕のことを珍しい人間型の魔物と呼んでいた。

珍しいということは絶滅とかはしていないはずだ。


兎をおんぶしていた僕は、兎が目覚めてからもおんぶをしている。


「……なぜ、背負う?」


「野晒にして欲しかった?」


「それは嫌だ。望まぬ繁殖をされる恐れがあるし……」


「じゃあ感謝しておけばいいさ。

 こうしておけば逃げないしね」


兎は首に回していた両手の爪を出して僕の喉を掻っ切った……。

が、当然効かない。【上下関係】がある以上、

有効打など通るはずもない。


「……もういい、わかった。

 どうやらこれ以上つきまとっても、絶対に勝てそうにないな」


「お。やっと気づいたか」


達観した声色の兎は僕の手を払って逃げようとする。


「だから私は山の中に帰る。

 離せ」


「じゃあ俺は道すがらに言いまくるわ。

 『僕との勝負に負けた兎が涙と鼻水出して命乞いをした』って。

 話盛って失禁したとかいれとくかな~」



首狩り。5連撃! が、効かず!



「はっはっは。冗談だよ。

 仮にもメス。つまりは女の子。

 そんなことは言わないさ」


「嘘だ! お前は絶対に言う!

 やはり殺す! 絶対に殺してやるからな!」


「ほほーう、頑張れよ兎」


「兎兎うるさい! 私にはちゃんとした名前があって」


「はいはい、わかったわかった。

 ちなみにもしかしたら眼なら攻撃が効くかもね~。

 あ、嘘でした」


「お前ー!」



その後も口論が続くが、

兎はおんぶから逃れることなく、

僕を殺すための算段を練っていた。



「なあ兎」


「……人間とやら、私のことは兎ではなく、

 そろそろ名前で呼んで欲しいのだが」


「おお、ごめんな。じゃあ、鍋子」


「なべっ!? 鍋子ってなんだそれは! 取り消せ!!」


「呼びやすいからこれでいく。

 気が向いたら本名で呼んでやるよ」


「ぬぐぐぐ……」



面白いことに、兎こと鍋子は体毛の色が変化する。

赤は興奮状態。白は平常時。

今は、腕部分の体毛が赤だから、きっと僕に殺意を抱いているはずだ。

殺せはしないのだけどね。


「で、質問だけど、この世界の人間……。

 鍋子の言う『人型の魔物』って何処にいるんだ?」


「ああ、仲間と合流したいのか。

 言うわけがないだろうそんなの」


「【言え】」


語気は普通に、命令を下す。


「【海を超えた北の大陸にいるかもしれない】。

 ……あ、アレっ!?」


「上下関係の効果だよ。

 簡単な命令なら即座に叶う。

 あんまり使いたくはないんだよねえ。

 でもイケメンが通じないから仕方ない」


「どこまでも小馬鹿にした奴めっ!」



その小馬鹿にした奴におんぶされている気分と乗り心地を聞くのは、

流石に意地悪だから止しておこう。


ところで、鍋子は軽い。

体重は20~30kg程度だろうか?

身長は120程度の小ぶりで、子どもと同じくらい低い。


ちなみに僕の身長体重は、

175cmと71kgだ。

バスケ部で大活躍するのだから身長はこれでも低いほうだ。

ほどほどの高身長でイケメン。

まさに無敵だろう。

男子校でさえなければ……あんなスキルさえなければ……、

僕は異世界に来ることなく「俺つえー!」が出来たのになあ……。



「鍋子、お腹がすいた。

 この辺で食糧って何かある?」


「草花だ」


「肉はないのか?」


「兎に肉など必要ない」


草食系は雑食系と口が合わない。

でもいい加減、この際草でも構わないからなにか食べたい。



「鍋子。僕はお腹がすいたから、

 食べられる草とか拾ってくれるかな?」


「何故お前にそんなものを」



榊涼太さかきりょうた



僕は自分の本名を言った。

こんなイケメンに相応しい名前を付けてくれた母さんに感謝する。



「リョータとでも呼んでくれ。

 親しみを込めて『リョーちゃん』とは絶対に呼ぶなよ?

 呼んだら裸踊りをさせるからな?」


「お……わ、わかった。リョータだな。

 絶対いつか殺すからな」


「はいはい。まあとにかく、命令するのは好きじゃないし、

 言うこと聞いてくれれば悪くはしないよ」


「それが鍋にして食おうとした奴の言い分か……」



鍋子は僕の背から降りると、

鼻を利かせて周囲を探る。

取得してきたのは、

草、虫、土の中にいるという魚、などだ。



「人型の魔物はどんなものを食べるかわからなかったが、

 今用意できるのはこれらだな」


「虫は却下だ」



スキル習得のスクロールを開く。

その中に……あると思っていた技能を習得。



「いいか鍋子。イケメンというのは顔だけじゃないんだ。

 行動も振る舞いも、特技でもイケメンを発揮する必要がある。

 例えば胃袋を掴むのは、何も女の子の専売特許じゃない」


【調理】のスキルを……上げる必要はない。

それくらいはイケメン修行の中で習得済みだ。

それに、【第六感】でおおよそのメニューを決定する。



「魚の丸焼きと野菜炒め!」



どんな凄いものが出来るかと期待した方々もいるかも知れない。

僕だって本当ならムニエルとか色々作りたい。

でも、

調理器具は槍と火炎魔法しかないんだ。

単純明快なもので勝負する。



「借りるぞ槍。

 まずは草を軽く焼きまして~」


「焦げ臭いぞ!? な、生じゃダメなのか?」


「あ、そうか。鍋子はそのままのほうが良いのか。

 でもまあ食べてみろって。案外うまいかもしれないぞ?」



フライパン代わりにスクロールを広げて草をちらし、

着火。おー、やはりこのスクロールは無敵のようで、

燃やしても平気みたいだ。


「槍で魚を串刺しにして~」


「私の槍が……」


「あ、ごめん。大事なものだった?」


「子供の頃に貯めて買った中古の槍だった」


「今度良い物買ってやるから……」



買ってやるという単語で思い出した。

そういえばこの世界の通貨はなんだろうか?

働けば手に入るのだろうか?


出来上がった川魚は、

泥臭くて仕方がなかったものの、

我慢して食べる。

火は通したから、寄生虫とかはいないはずだ。



「野菜は……生が一番だな」


文句の言葉が出るのは好みの問題だから仕方がない。

次は頑張って作ってやろうと心に誓う僕は、

やはりイケメンなのであった。


次回予告:いつになったら森から出るのだろうか? 異世界転生してきたというのにおれつえーが中々出ないのは何故なのか? そもそもこんなに卑屈な感じが微塵もない奴が何故異世界に行ったのだろうか? 次回予告のくせにタイトルが微塵もかぶらないのは何故? そんな疑問が明かされる日が来るのか? 読者の心配は

「ダイジョーブダイジョーブデース」の楽観的作者の台詞に阻まれるのであった。次回イケメン旅情気分『お金』いきなり世知辛いタイトルデース。

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