表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/64

サモンハウス購入


かつて、サモンハウスという物は便利さと恐ろしさを兼ね備えた品であった。

というのも、魔力を充填させた宝玉の中に家を収納するというのが既に危険なのだ。

財産全てが宝玉の中に詰まっているため、野盗などに奪われて家の召喚を命じられるなどの被害もある。


そのため、宝玉収納型のサモンハウスは見直され、新たに自立型のサモンハウスが誕生した。


宝玉に当たる魔力の塊を動物に見立てて、いざというときは動物が何とかするという、自衛も兼ねたサモンハウス。

動物のランクに応じて値段も変動する。猫や犬などの小型サモンハウスは安価な分できることの限度などたかが知れているが、馬や鳥類であればいざというとき逃げることも、場合によっては戦うことも出来る。そして最近ではドラゴンという恐るべきサモンハウスを開発したという者もいるが、真偽のほどは定かではない。



「今回、馬型のサモンハウスってことだから、値段は500万」


「ふぅん。意外に安いんだね。ロコウさん……ああ、僕の知り合いなんだけど、その人が言うには800万でもボロい中古品だって言ってたけど」



だからサモンハウスの値段とグレード次第だと思っていたけど、早駈けの馬型で500万というのは少し安い気がした。搭載している家も先ほど見たけど、間取りも内装も新品そのもの。不備など見当たらない。


「ああ、それはサモンハウスがまだ『宝玉の頑丈さ』と『収納量』で値段を決めていたころの話だな。馬型って言っても色々あってね、初期の性格はじゃじゃ馬、オプションで性格変更して、最上級の『忠実なしもべ』にしたら値段も跳ね上がるぜ」


要するに『動物の種類』『性格』『性能』ってことか。内包している家の大きさは、動物の種類によって既に収納量も決まっている(猫に豪邸は収まらない)。

手懐け憎いほど値段が安く、性能(強さ)が弱いほど値段も低い。


「オプションありきでこの値段ってわけだね」


「そういうこったな」


じゃじゃ馬で弱いとか最悪だ。



「リョータ様、馬は強くしましょう。最低限野盗から逃げられる程度の馬力がなければ、この先不安ですわ」


「いやいや旦那。強さならアタイがいるだろう? 強くてもひねくれじゃあ戦ってくれないかもだぜ」



……え?


「アイリぃ?!」


いつの間にか話に割って入ってきたのはアイリだ。身の丈は僕が上を向くレベルの巨大さで、肉体は筋肉が大半を占めている。で、その腕の中には、グルグル巻きに縛られた鍋子もいた。


「な、なんでここにいますの?」


「へっへー。旦那が以前言っていた『スニーキングミッション』って奴だ。後つけてたんだよね。どんなデートするのか気になってさ!」


その巨体でどうやって僕たちに気づかれずに来たのか……という質問は野暮だろう。


「お知り合いで?」

「ああ、仲間だ。抱えている兎も仲間だ。やましいことはない」


まあ、間取りとかそういうのもオプションの内。仲間内で話すのはまあ、当然か。






「リョータ様。私、リョータ様の部屋で、2人で、眠りたいですわ!!」


いきなり直球仕掛けてきたのは誰あろうスフレちゃんだ。馬の話は、予算の限り強くする方針で決定した。なんでも、強さはあとでも変更出来るらしい。


「私もリョータと寝たい!」

「黙りなさい淫獣跳ね飛び娘! 発言権を与えてあげているだけ感謝なさい!」


「なあ旦那。酒蔵とかつけられねえかな? あと食料保存庫」


能天気にアイリは発言。でも旅路に食料はつきものだ。一応聞いたところ、オプションで大きめの倉庫が付けられるそうだ。


「私が」

「いいえ、私が!」

「旦那、水とかはどうするんだ? トイレは水洗式かい?」


くそぉ、真面目に話してくれるのがアイリだけというのが切ない。


水については、馬に水を生成する魔法を覚えさせることで可能だという。もちろんオプションの内だ。死活問題の水だが、値段はそう高くはない。


「つまり、火と水を併せ持った馬を作ることも出来るのか……」


ライフラインが確立できれば、それこそ旅は楽になるだろう。例えば狩場になるダンジョン近くにキャンプ感覚で設置すれば、限界まで狩り続けることも可能だ。

旅路が楽になるのもそうだけど、それ以外の要素も楽になる。



「とりあえず、水だね。あとトイレ。シャワーとかお風呂とかあるとなおよし」




かくして出来上がった馬。エメラルド色に輝いていたが、すぐに白い体毛の、目つきが悪い四足歩行の馬になった。

じゃじゃ馬設定だから、手懐けるところから始めなければ。


「よーしよし怖くなーい」


鍋子が馬の背に乗って頭を撫でている。馬は軽く身を捩るが、取り立てて騒がずにいた。



「驚いた……こうも早くじゃじゃ馬を……」


店主も驚いている。森の中で一人暮らしだった鍋子の事情にシンパシーでも感じたのかな?


「へえ、じゃじゃ馬って言うからどんなものかと思ったけど……ってうお!?」


アイリが気安く触ろうとすると、馬は形相を変えて猛然と襲い掛かった。が、全ての攻撃はいなされていた。



「旦那。こいつ、活きがいいな!! 馬刺しって酒と一緒に食べるとうまいんだこれが!」

「間違っても食うなよ」


シンパシーよりかは、弱すぎるから相手にしていないだけなのだろうか? 謎だ。



店主に金塊を渡し、僕らはサモンハウス馬型と、青の魔力を手に入れたのだった。



次回、家の間取り確認だ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ