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鍋子trick



水も滴るいい女という言葉があるのだけど、いい男という言葉がないのはなぜなんだろうか? 湯船に浸って髪が海藻みたいになるからかな? ははは、僕はまだまだつやのある綺麗な髪だっていうのにひどい話だ。



現在の状況を整理すると、アイリが倒れている温泉全体を、スフレちゃんが結界で覆い包み、そこに僕が暴走した鍋子をゲートで拉致した。


……つまり、アイリを数に入れなければ、2対1の図になる。



「よっくも散々わたくしを辱めましたわねこんの淫獣がぁ……! 脱出不可能なこの場所で制裁してやりますわ!」


闘志というか殺意があふれ出ているスフレちゃんだけども、可愛い笑顔のままで犬歯をのぞかせている。ちょっと怖い。


「邪魔しないで、私はリョータとつながりたいだけなんだから! 邪魔な奴。皆、皆倒すんだから!」


ここにきてまともな台詞の鍋子だけど、繋がるってどのレベルで!? おいおい、R-15で繋がるっていうのは手までだぞ!! それ以上したら作品削除のピンチじゃないか!


「させないぞ鍋子。そんな打ち切り展開誰も望んじゃいないんだ。僕がイケメンっぷりを出さなきゃ意味がない!」



暴走したとはいえ鍋子だ。森の中ではその機動力にかく乱されたが、ここは視界もとれる温泉だ。足場も悪い。先ほどのように高低差を活かした戦いもできないだろう。つまるところ勝ちの見えた戦いだ。


「先手必勝ですわ!!」


ところが、合図もなしに氷結魔法を繰り出すスフレちゃん。温泉にいた鍋子を捕らえたい一心で放ったのだろうけど、僕もいることを忘れないで!


「ぴょっん!」


奇妙な掛け声と共に鍋子が温泉からジャンプで脱出。僕だけが、温泉表面の凍結に巻き込まれてしまい、腰部分に氷がまとわりつく。


「ああ!? ご、ごめんなさいご主人様! この償いはあとでお尻百叩きを所望いたします!」


「絶対わかってやったよねそれ!?」


連携して倒すっていう発想が今のスフレちゃんにはないのか。いや、単にご褒美という名のプレイを楽しみたかっただけなのか。


「はぁあ!」


その甘い算段は鍋子の組み付きで崩された。魔法障壁を張った状態での別魔法。魔力消費が激しいはずだ。

石畳に背中をつけ、四肢の自由を奪われているスフレちゃんは、鍋子の顔を見て何を思ったのだろうか。


「そうやって【力づくで、なんでも、できる】って……舐めるなあああ!」


丁寧な口調すらもかなぐり捨てる激昂と共に、鍋子の頭を貫くはずだった火柱があがる。

(後で聞いた話だけど、どこからって、口から光線のように発射したとのこと。ケルベロスかよ)


……はずだったのだが、すでに鍋子は見抜いていたようで回避していた。渾身の一撃も回避されたスフレちゃんはもうそれ以上魔法が使えないのか、組み伏されたまま悔しそうな顔を浮かべている。


「邪魔だよぉお」


気絶させるために鍋子がとった行動は、僕にとってもスフレちゃんにとっても意外なものだった。あろうことか鍋子は、スフレちゃんの口をふさいだのだ。自分の口で。


「……」「……」


あまりの出来事に、僕は氷からの脱出を忘れた。スフレちゃんも何が起こったのかわからないのだろう、抵抗する様子がない。



「あははは! いっちゃったー、ファーストキスって硫黄のにおいー!」


一体、どういうテンションなんだろうか?

(この時の僕は、これが酒による酔っ払いハイなのだと知らなかった)


目の前で起きている明らかな出来事なのに、僕は思考が停止してしまっていた。似たようなことはあの、魔のバレンタインデーで体験済みだけども。


「え、ええ、な、なんっぷ!?」


再びキス。どういうことなんだ!? 鍋子を操っている奴はそういう趣味のやつなのか!? 許さないぞそんなこと! 万が一百合に目覚めてしまったら僕の存在意義がなくなってしまうじゃないか!


「焦げろ鍋子ぉおおお!」


スフレちゃんに代わっての火炎魔法。が、読まれていたのか大慌てで回避されてしまい、スフレちゃんに当たって発火した。


「ぁああ!!? あっつ、ああっついですわああああ!? ろ、蝋燭もまだですのにこんな大火力プレイってなんて過激で素敵な、あっついいいいい!」


よし。大丈夫そうだな。




「脱出!」


火炎魔法第二弾で、僕は氷風呂から脱出した。時期に氷は温泉の熱で溶けるだろうが、悠長に構えていたら鍋子に襲われる危険性があった。


「いいか鍋子。女の子同士のキスは百歩譲っていつでもウェルカムとして、僕に対してのキスはロマンチックな時だけにしてもらおうか」


少し前にスフレちゃんに投げつけた槍を見つけて、鍋子はそれを握ると僕の方を向いた。恐ろしい。正直、それ以外の乾燥が出てこない。

強さは僕の方が上だが、大胆さでは負けてしまうだろう。いきなり前触れもなく唇を奪うなんて芸当を平然とやってのけるには、まだまだイケメン修行も経験も足りない!


僕の勝利条件は鍋子の気絶だ。だけど、上下関係のせいで強すぎるダメージは無効化される。弱すぎれば当然ひるませることもできない。加減を考えなければいけない。

一方で鍋子の勝利条件は僕を組み伏せて唇やらなにやら奪うだけだ。槍を握ったということは、一戦交える気満々とみていいだろう。



温泉の半径は10mそこそこ。氷は解け始めているから、接近も逃げるも温泉を挟む形になる。鍋子相手に接近戦はあまりしたくはない。



「第六感とか駆使しても、どこまでいけるものやら」


再び湯船に氷を張ることも考えたが、相手も近づけるので却下。新たなスキルでも覚えるか? どんなものがほしいかもわからない現状でそれはしたくない。



「来ないならこっちから行くよ!」


鍋子は温泉に飛び込み、跳躍を繰り返しながらショートカットする。さすがに僕もあわてていて、着地に合わせて氷を張ることを考えられなかった。



相手は色欲にとらわれた怪物だ。妙な凄味がある。鍋子のくせに!


どうする僕ってところで、次回に続く!

次回予告:神様激おこだろうな今回の騒動はとかそんなことはどうでもいい! ついにキスの事案が出てしまったがこれは大丈夫なのか! やさしい肉体的接触はこれが初だというのに主人公が蚊帳の外ってひどい! 次回『キラーラビット』覚醒するかって? いやまだわからない。

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