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鍋子を温泉の中にしゅうううううううっと!



その日。鍋子はアイリと会話し、温泉後に酒を一杯勧められた。普段は飲まないが、普段と違う場所とシチュエーションで冒険心がうずいたのだろう。鍋子はそれを飲んだという。

それがスフレちゃんが倒され、アイリが風呂場で流血する事態になったのは既にお約束である。

……けど、この時の僕はそんなこと知る由もなかったし、そんなどうでもいい理由で軽めのサスペンス展開をするだなんて予想だにもしていなかったんだ。

今思えばすっげええこっけえええいいやあああああ!!




「鍋子、逃がさないぞ!」


あえてソナーだけにし、光源を木に設置して走る。このライトはとても便利な魔法だ。手元にある状態で魔力を供給し続ければ、延々魔力枯渇まで輝いてくれるが、設置した場合は2分間光り続けた後、魔力切れまでに弱くなって最後は消える。


追いかけっこの時だから意味がないかもしれないって、そんなことはない。さっき、鍋子は僕の目を欺いて反転し、スフレちゃんを襲っていた(正確にはスフレちゃんのお気に入りパンツをだが)。

つまり、この光源に引っかかるかもしれないのだ。第一、追いかける僕がそんなまぶしい物持っていたら、どこから来るかなんて一発で分かってしまうだろう?


「森全体をLEDとかで照らせたらいいんだけど、この世界にそんなものないしなあ。せめて懐中電灯とか持って来れば」


後悔したところで便利な品物は、異世界と化した僕の故郷にしかない。



真っ暗な闇の中に、青白い光源がぽつぽつと浮かんでいるのを見ていると、惹き込まれてしまうほどきれいなのだけど……。


「こんな状況でなかったらなあ!」


一瞬見えた鍋子は、先ほど槍を投げたため素手だ。素手なのに、僕の背後をとろうとしていた。目が座っている。体毛が赤い。


「火柱!」


火炎魔法も便利で、形状はさまざま。細く長く瞬間的な発火しかしない炎の柱を作り、鍋子の軌道を規制する。

青白い光に、赤く強い光が浮かび上がって、僕と鍋子の目に色濃く刻まれる。


「夜目を潰せばこっちのものだ!」


捕まえにかかる。が、鍋子は目を閉じたまま回避した。まさか気配だけでよけたのか!?



「うぎゅ!?」


あ、勘でよけただけか。回避先に木があってそれにぶつかっていた。ぶつかった木に手を当てながら鍋子はスルスルと上り続けて、またしても木々の枝を伝おうとしている。



「させねえ!!」


僕と鍋子に結ばれた上下関係は、生殺与奪ができない欠点がある。安易に人を支配し、生きるか死ぬかを選べる洗脳魔法の方が、その辺優秀だ。

だけど僕はイケメンで、神ではない。そんなものは欠点ではない。



致死ダメージは0になるのだ。




「ぉりゃあ!」


鍋子の行く先を完全に予測してのナイフ投げ。先ほどのスフレちゃんが投げつけていた、魔力のナイフだ。思い切り投げたその威力は本来鍋子の心臓を貫いて絶命させる代物だけど、致死の威力は全て抜ける。この場合、上っている木におっかぶせる。


メキメキと、木は衝撃によって真っ二つに折れてしまう。

鍋子はそのまま落ちるが、僕はそれを抱きとめた。



「ゲート!!」



鍋子ごとゲートに潜り、行先は……。


一時間後の温泉!



「温泉の中にいる!」


熱い湯が僕の服を、鍋子の体毛を濡らしに濡らした。


「ぷはぁあ!」


息を求めて鍋子が勢いよく湯膜の外へ飛び出す。



「うう、ふぅうう!」



完全に興奮状態の鍋子は、周囲を確認後に森の中に逃げようとしたけども……用意のいい彼女に邪魔された。




「淫獣、もう逃げられませんわ! この温泉は貴女を閉じ込める檻になりましたの!」



温泉を囲むようなドーム状の結界。1時間でスフレちゃんが作った決戦仕様の、いわばバトルドームだ。


「まさかご主人様が連れてきてくださるとは驚きでしたわ。この息を超えた心の連係プレイ、……プレイ……良い」


うっとりしているようだけど無視しておこう。いい夢を見させてあげるのもイケメンの務めだ。




温泉の最後の戦いが、はじまる!






神さまの補足

Q:スフレさん質問です。あのドームを作ったのはどうしてでしょうか?

A:逃げまくっている淫獣を捕まえるための檻を用意して、後でわたくし自らが、あの淫獣を捕まえてゲートを使う予定でしたの。それが、まさかご主人様と考えがぴったり合ってしまいまして! これって運命ですわよね!? ね!!!


Q:質問に質問を添付されてしまいました。


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