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湯煙連続襲撃事件! 赤い血の先に真実を見た!



深夜。僕はとてつもない相手と戦っていた。間違いなく、これまでにない最強の敵。


「鍋子……どうして……どうして皆を!」


温泉の湯船に浸かっていた僕は、全裸なので丸腰だ。素手で鍋子の槍を回避するのが精いっぱいだ。


月明かりが湯気と温泉を照らす光になり、僕を苦しめる存在……鍋子を映し出す。


「ようやく……っ……2人っきりだねえ……っ……りょぉおたぁああ」


座った眼。眼光は……赤い。体毛も赤い。アイリも、スフレも、鍋子の前に散った。

頭から血を流しているアイリと、温泉の外でうずくまったっきり起き上がれなくなったスフレ。


「鍋子。言葉はもう、通じないか」


躾が必要だと、僕は仕掛ける。







ことの発端は、神様が僕たちに温泉旅行をプレゼントするという企画だった。

なんでも、この世界のどこにでも、ゲートで移動できるのだという。


「そんなに便利な能力あるなら人間に会わせてくれてもよかったんじゃないかな?」

「はっはっは。神様は人間に、試練とご褒美をあげるものですからねえ。甘々にはいけません」


まあ、その采配のおかげで鍋子、アイリ、スフレに出会えたわけだしね。文句はないよ。


で、南大陸西方に位置する温泉観光地に案内してくれた神さまは、僕らに愛する様を見せてくれというのだ。これほど恥ずかしいことはない。


「大丈夫です。一泊二日のこの旅行中は、あなた方の記憶から私は消えますので。存分にイチャイチャしてください」

「随分と暇だな神様。いいのかこんなにつきっきりで」

「うふふふ。神様の目が一つだといつ言いましたかな? まあまあ、信力を得るのも大事なことですゆえね! ではそろそろおいとましましょうか」



……あれ……確か僕たちは……そうだ。ミステリーツアーの抽選に当たって、ゲートで飛ばされてきたんだったっけ。いい温泉のにおいがする。母さんに連れてってもらった温泉旅行の時、硫黄のにおいが苦手だったけど、今ならいい匂いだと感じる。


「鍋子、ここが温泉っていうものだ。水を温めただけの風呂なんかじゃあ到達できない至高の湯。入ってみたいだろう?」

「うぐぐ……ご、ご主人様……に、臭いがきっついですわ……鼻の利く私にこれは酷です」

「私は何ともわかんないなあ……初めてのにおいだけど、臭いという感じとも違うし……」


まだまだこの匂いを良いものと受けるには時間がかかるか。


「なあ旦那。宿に行く前に酒とかつまみとか買おうぜ!」


花より団子が一人いたなそういえば。ああ、ちなみに説明を忘れたけど、ここは温泉街だ。色々な人(純粋な人間なんかいないけど)が、日本的な着流しで闊歩している。……こういう文化っていうのは異世界でも通じるところがあるのかな?


「まあ、今はそんなことどうでもいいか。おっけー、お土産屋さんに直行だ。路銀はいくらでもある。パーッと遊ぼう」



センスがあるか否かを、お土産では測ることができる。アイリはまあ、センス以前に食い物しか買ってこなかったが。


「見ろよ旦那この魚! 脂乗っている奴の乾物だ! かじると唾でまくってうんめーんだこれが!」


幸せそうに今夜の晩酌プランを立てているアイリだが、……本当、見た目は褐色巨乳美女だというのに……中身はただのおっさんに近い。遊び仲間以上の関係にはならないだろうな。



「ご主人様! 地域限定、ご当地の、首輪ですわ! 『愛している』という文様が密かに彫り込まれていると聞き及びましたの! さあ、今すぐ私の首を、支配してくださいまし!」


ダメだ。ダメだった。千年の恋が若干冷めていく感覚。押せ押せの変態っていうのは、あらゆる美少女要素を死に体にする。でもそこはイケメンの僕。他のやつがじろじろ見る中でも堂々とつけてやった。幸せそうに震えたスフレちゃんは、へたり込んでしまった。



「視姦……ああっ!」

「濡れろ!!」


危なかった。まあた嬉しょんするつもりだったよスフレちゃんは。今度から気を付けよう。



「リョータ! これでいいかな! 木製の激安武器が二十本で5000blだって! 重いけどこれで何があっても大丈夫!」


THEお土産物名物、木刀! それを20本だとぉおえ!? 絶対に在庫処分品だろそれはあああああ! 騙されている! 騙されているぞ鍋子!


「えっへへ~、どう、リョータ! 二刀流!」


背中に薪を背負うかのように木刀をしょい込んだ鍋子が、二刀流ポーズを色々決めてどや顔をしている。可愛い。


「いい買い物をしたじゃあないか」

「ご主人様! 寒くなってきました!」

「そうでしょうリョータ! ってあれ、スーちゃんはなんで濡れているの?」

「身も、心も濡れてますのはご主人様のおかげですの!」

「いいから早く宿に行こうぜ旦那。腹ペコだよアタイは」


きゃいきゃいうるさいガールズトークだ。だがやはりイチャイチャするのに適任なのは、鍋子だろうと僕は確信した。おっさんと変態と純情とか、選ぶ暇もないだろうよ。


次回予告:恋愛以上恋人未満のスフレに明日はないのか!? 淫獣とののしる相手がご主人様のハートを掴んで離さない現状に満足するほど馬鹿ではない! 妨害工作に打って出た! ……それがのちに、大事件に発展することを彼女は知らない! 次回イケメン入浴「湯船に開く百合の花」こうご期待!

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