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善良なイケメンの僕は美少女とイチャイチャしたいがために転生しました。  作者: 死んだふり
地雷でパない! 首輪をかけろ! 魔法少女スフレ登場
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無限ループ? そんな状況は絶対脱出策があるはずだ。



トラブルなんてものは、いつ起こるかわからないものさ。

遭遇したら大概何も出来ないだろう。

しかしイケメンは、そんな状況を物ともしない。




「鍋子、アイリ、この1階部分には、トラップの気配はない。

 ……というかこのダンジョンは恐らく、

 スフレちゃんの作ったやつだろう。

 他のダンジョンとなんだか違う」


【罠感知】スキルには、嫌な予感程度の間隔が走った時、

そのフロアに罠があることを指し示す効果がある。

罠満載の場所なら、悪寒がするほどの感知性能だ。


「……」


僕をじーっと睨む鍋子の視線を感じて振り返ると、

不機嫌そうに頬をふくらませていた。


「どうした鍋子?」


「敵に対してちゃん付けなんだ……ッて思って」


ああ、嫉妬か。


「何故かな。スフレちゃんはそう呼びたくなる何かがあるんだ。

 ……今度から呼ぼうか? 鍋子『ちゃん』」

「むず痒い!」


どうしろってんだ。


「旦那。夫婦漫才はそのくらいにしてくれ。

 次々出てきやがる」


夫婦漫才か。まだまだ僕には早いな。


そして出現する魔物の形状は様々だ。

やせ細ったハイエナのような魔物。

コウモリの羽を持った痩せたゴブリン……インプか何かか?


まあアレだ。要するに美的センスが壊滅的な魔物ばかり。

視界に入れるだけで精神的にもきっつい奴等だ。



「家を燃やせば出てくるとも思ったけど、

 そうも行かないね」


火球を床に、壁に、天井にぶつけてみたものの、

燃え盛ることはなく、ただぶつかって飛散してしまう。


「階段あるから登ろうよ」

「旦那、奥がまだ続いているぜ」


鍋子が指し示す階段だが……果たして登って上にたどり着けるかは謎だ。

登って解決なら、あまりにも簡単すぎる。


「アイリの言う奥に行くか。鍋子、その階段は罠かも知れない」

「え? さっき罠はないって言ってたじゃない?」


「登った先のことを言っているんだ。

 階段登って階段消失。魔物に囲まれるっていう、

 お決まりのパターンかもしれない」


納得した鍋子は僕の後に続く。

先行したアイリがなぎ倒していった魔物は、

天井か床に消えていった。


「あれ? 玄関だ」


リビングか何かに繋がるであろうはずのドアを開けたアイリは、

自分たちが入ってきた玄関に繋がっていたことに驚く。

無論、戻っても外に脱出できるわけではない。


「旦那。罠覚悟で登ってみるかい? さっきの階段」


「まあ待て。無限ループだって決めつけるのは良くない」



玄関から左手に階段。右手にトイレのドア。

真っすぐ行けばリビング。

今行けるのはこの3箇所。


そして全員玄関についた時、

試しにドアノブを回すがびくともしなかった。

戻ることは出来ない仕様。不便だ。



「トイレのドアはどうだい?」

「私行ってみる」


鍋子ががちゃりとドアを開けると、

中から魔物たちが出てきた。

びっくりして反応が遅れるも、

僕の炎に燃やし尽くされる。


「注意しろ鍋子。

 罠がないって言っても、待ち伏せとかはあるんだから」

「ご、ごめんリョータ」


トイレの中にあるのは、便座と小窓くらいだ。

小窓からは外の日が差しているが、

当然外には出られないだろう。


「脱出ゲームとかなら何かヒントがありそうなものだけど、

 それは脱出できる前提条件があるのがお約束だからね。

 スフレちゃんがそんな子だとは思わないし……」


とりあえず階段を登ることを決意し、僕が先頭、アイリが殿、

間に鍋子が入るように隊列を組んで登る。



「……うぇっぷ! ホコリだらけだ!」


酷い匂いとホコリの山。

とても長居できそうな場所ではない。

しかも暗い。ライトを灯すも、全然明るくならない。


「マッピングで探っても、

 抜け道どころか部屋すらもなさそうだ……」


そもそもこんなホコリだらけの所にいるとは考えづらい。

一旦戻って対策を練ることにした。



「……どうしたものか」



トイレ、行き止まり。

リビング、無限ループ。

外への扉、通行不可。

2階、ホコリックス。



「色気もない空き家だけのダンジョンが、

 ここまで寂しい、味気ないものとはね」


「旦那」


「どうしたアイリ」



「さっきから魔物が出てこないんだが」

「……ええ?」


そういえば。戦っている素振りもない。

出尽くした……のか?


「なるほど。無限湧きっていうのは、

 魔力がないと出来ないのかもな」


もしくは意図的に出していないだけか。

ダンジョン運営術はとっ捕まえてから教えてもらうとして、

僕は推理を続ける。


「……鍋子。アイリ、どっちでもいい。

 リビングに行って先に行ってみてくれ」


鍋子が速攻で手を上げて赴き、ドアを開けた。

後ろのドアが開く。


「やっぱり戻ってきちゃうね」


鍋子が出てきた。リビングのドアが閉まると同時に、

後ろのドアも閉まる。



「アイリ。ドアのガラス部分から中って、

 どう見える?」


「普通に台所もあるいい部屋に見えるぜ」


「……つまり、本来はきっちりリビングに繋がるはずなのに、

 歪曲されてここにくる」



「しっかしムカつくねえ。

 腹いせに何か壊したくても、

 床も頑丈と来たもんだ」


ガチャガチャと苛々しながらドアノブを回すアイリ。

後ろにある玄関のドアノブまでもシンクロした。


……いや、もしかしてこれ……。



「アイリ。そのドア、ぶっ壊してくれないか?」

「え? ああ、いいけど」


せぇのと、まるでボールを打たんとする野球選手のように身構えて、

アイリはドアを思い切り殴った。

玄関のドアは……沈黙している。


大きな音を立てて、ドアが吹っ飛び、リビングが覗けるようになった。



「うぉおお!? 中に行けた!」


「ドアを開ける行動がループのトリガーだったみたいだね。

 これで中に進める」



僕たちは意気揚々とリビングに入室したのであった。


次回予告:謎解きはクライマックス。いよいよご対面のスフレ! 一週間という長きに渡る屈辱の恨みを晴らすために立ち上がるリョータだが、しかし彼女には奥の手があった! 次回『窮鼠猫を噛む』お楽しみに!

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