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善良なイケメンの僕は美少女とイチャイチャしたいがために転生しました。  作者: 死んだふり
地雷でパない! 首輪をかけろ! 魔法少女スフレ登場
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浮かれた馬鹿なイケメンになっていた僕に対するこれは、天罰だろうな。



僕はイケメンである努力であれば何でもしてきたつもりだ。

ハリのある肌のためにきっちり眠ったり、

サプリも飲んだし、ファッション誌も読み漁った。


そんな僕が今……。




「こ、この……顔は……」


しゅっとした顎。贅肉を感じさせない細く逞しい首。

ヒゲ一本も剃り残さない肌。ニキビでたら発狂するほど白い肌。

それが僕のイケメンフェイス(イケ面顔。意味が重複している? 関係ないね)。

……しかし、鏡に写ったその顔は、

ファンタジー漫画でよく見たことのあるもの。


「……オークだと……」


つきあがった大きな鼻。贅肉たっぷりの首と顎。

短い体毛が茂っている。ニキビどころかコブが出来ている肌。

これは嫌悪の醜塊フェイス。


「おえぇえええええええああああああ……!

 うぐ、ぅうううえええええええええ!!!」


吐いた。正直、何が起こっているのかさっぱりわからない。

しかし、自分がオークになっていることだけは、

鏡を見て理解せざるを得ない。


ここは異世界。何があってもおかしくはないと思っていた。

でも、変わらず自分はイケメンで在り続けるのだと、

固く心に誓っていたはずだ。


それがこの体たらく!!

死にたい。こんな顔のままならば死んでしまいたい。

僕は生まれつきイケメンだった。

それが当然だった。

いきなりこんな顔になったら発狂モノだ。




どうしてこうなったのか、振り返ろう。





僕は集落にある中でも比較的おしゃれな店で、

コーヒーを頼んだ。(この世界にもコーヒーがあるのに驚いた)


目の前には僕を慕ってくれる可愛い、

笑顔がキュートな女の子がいる。



「ねえ君、名前は?」


「スフレ。スフレ・オートプールと申しますの」


「スフレちゃんか。いい名前だね」



この子も、恐らく何かの人間型なのだろうけど、

完成に近い外見をしている。

スフレちゃんに会うまではアイリが一番近かったが、

それ以上だ。

実に日本のどこかでふらりと出会いそうな外見をしている。


それでいてこの物腰の柔らかさ。

神様、この出会いに感謝します!




……そうそう、こんな感じで浮かれていたね。

とにかく彼女との時間は楽しかった。

そうとも。戦闘に明け暮れていたここ最近だったけど、

本分はやっぱり青春だよって。

一時のオアシスに心躍っていたんだ僕は。


「ところでリョータ様」

「なんだい?」


好みやら僕への絶賛やらで、

好感度は高まっていた。


「リョータ様はお強いのですね」

「そうとも。だってイケメンだしね」


どうしてこんなことを改まって聞いてくるのか?

なんて、疑問すらも浮かばなかった。



「泣いたことなど無いほどに?」

「あまりにもイケメン過ぎて泣いたことならあるよ」


「まあ。流石ですわ。

 ……お願いを、聞いてもらってもよろしいかしら?」

(お金かな? まさかね)


スフレちゃんは僕の耳に口を寄せて言った。


「わたくしを、弱いわたくしを、抱きしめて欲しいのですわ。

 強いその腕で、ベッドの上で……ダメ、でしょうか?」



ああ、ここで理性が爆発してコーヒーのカップを握りつぶしたんだった。

手が血とコーヒーにまみれたけど、

そんなのどうでも良かった。

早々にお会計(カップ弁償金もつけて)を済ませると、

僕は手を引いてスフレちゃんを抱きしめるために宿に戻る。


鍋子とアイリは食べ終えると、

運動と出稼ぎのためにダンジョンに行く。

今日もそうだ。あれだけの大金を得ても、

脳筋っぷりは半端ない。


だがありがとう二人共。

君たちのおかげで僕は今日……色々と成長できそうだ。

そう思っていた。




部屋に行くなり、僕に抱きとめられるスフレちゃん。

いい匂いがした。鍋子にあった獣臭さが全く無い。

(許せ鍋子)



「あん……力強いですわ……」

「ごめん、抱きしめるだけじゃあ収まりそうにないけど、いいかな?」

「構いませんわ……ところでリョータ様」


ここからだ。


「わたしにも貴方様にも、性癖……というものが……あると思うのです」

「ぅん?」

「わたくしはいつも、する時は1人なのですけど……。

 その想像というのがですね」



僕の体に、拘束魔法がかかる。

僕の顔に、变化魔法がかけられる。

動転し、拘束から転倒した僕を、

スフレちゃんはニヤリと笑って眺めていた。


「強い人が弱くなって、泣いて許しを請う様なんですの♪」


可愛い顔のまま。

しかしどこか狂気を孕んだその笑顔に、

言い知れぬ恐れを抱いてしまう。


「だって、興奮するでしょう?

 強く逞しい方が、わたくしの魔法で最底辺に落ちて、

 泣き叫ぶんですの。でもわたくしは最後はちゃんと、

 直してあげて、そしたら泣いて喜ぶんですの。

 うふふふ、ばっかみたいでしょう?

 馬鹿で、可愛い、愛おしい、ああ、滾りますと思いませんこと!?」


「す、スフレちゃん、なに、を!?」



「わたくしの悦びにお邪魔したアナタで、

 しばらくはネタに困りませんわ。

 泣いて許しを請う時になったら、

 集落の真ん中で叫んでくださいませね。

 『スフレ様お許しくださいませ』って!

 3回ほど大声で!

 あははは、うふふふ、はははは!!」






天使だと思っていた子が悪魔だった。

それが僕の知ったスフレちゃんの本性だった。


さっとゲートを使って消えた彼女は、

魔法使いであることが分かる。

拘束だって、彼女が消えてからすぐに消えた。

だけど、顔は……冒頭のとおりだ。




「ただいまー!」

「旦那―、帰ったぜ―」


鍋子とアイリが帰って来た。

こんな顔だ。分かるわけがない。


「あれ、旦那。随分印象変わったな。イメチェンか?」

「……匂いはリョータだね。

 どうしたのその顔?」


こいつら大好きだ。



「うぉおおおお鍋子ぉおおおおお!!」


僕が鍋子に抱きついた後、

アイリがにやりと笑って鍋子の首輪を外した。


「あひゅ!? りょ、り ょ、……りょーたああああああああああ!!」


鍋子がギューっと抱きついてきた。

良いだろう、一線を越えるつもりはないが、

気の済むまで抱きしめてやろう!!

そんな気分なんだ僕は! 今!!



「……熱々の所悪いけど旦那。

 自分でやったのかいそのイメチェン」


抱きしめあうこと20分。

アイリは土産の骨付き肉を骨ごと完食してから話を切り出す。


「そんなわけ無いだろう。イケメンをなくすなんて選択肢は、

 僕が死ぬまでやらない」


「リョータリョータリョータリョータリョータ……!」


僕が抱きしめていなくても、鍋子が両手両足で僕の胸にへばりついている。

耳が頬に当たってくる。くすぐったい。


「スフレとかいう魔女にやられた」


「スフレ? ああ、アタイに魔法かけてた奴か。

 泣いて許しを請えって言ってたな―。

 この集落に来ていたのか」


「ああ。さっきお茶してた」


「鍋子ちゃんと今度デートしてあげなよ?」

「そのつもりだ」


ベッドに腰掛ける僕だが、

鍋子は離れない。顔を僕の胸に埋めて鼻を鳴らしている。


「いいじゃねえか旦那。

 屈辱だけど3回言えば解いてくれるんだろう?

 その時にアタイがぶん殴ってやるよ」


「駄目だ。……あれを言うのはつまり、

 僕が彼女の下になるということになる」



僕の勘だと、あの女は【上下関係】のスキルを持っている。

あんな趣味で、今まで報復もなくいられるわけがない。

きっと報復も恐れないことがあるから強気なのだ。



「じゃあどうするんだい?」

「あの子はゲートを使っていた。

 その行き先はわからないけど、

 予想通りならかなり近い。

 この集落のどこかにいるはずだ」


「なんで分かるのさ?」


「あいつの性癖だよ。

 あいつは、泣いて許しを請う姿が可愛いとか言ってた。

 あと『楽しみを奪われた穴埋めをする』と言ってたよ。

 多分僕がアイリの魔法を解いたからだと思う」


「そんなこと言ってたのかあんの顔で。

 やべぇ、旦那それ外道だわ。外道少女だわ」


「アイリ。あいつはその過程も込で愉しんでいるんだと思う。

 絶対に見つけ出す。

 ……この僕の顔をこんなにした罪は、

 上下関係付与じゃあ到底収まらない」



どす黒い怒りを上げる僕に、アイリはカラカラ笑った。



「良いぜ旦那。じゃあ明日から魔女狩りだ!

 見つけたらどうしてくれようかな?」


「楽しみだ」



こうして、僕と魔女の戦いが始まったのである!


次回予告:ド変態鬼畜外道魔法少女に鉄槌を下さんと血眼で探す善良不可避のイケメン涼太! 彼の必死の捜査網にもかからない魔女に、鍋子は一計を案じる! 「狩りのことなら、私に任せてちょうだい!」全ては涼太とのデートのために、鍋子、奮戦する! 次回『あのド外道を谷底に落とせ!』イケメンの歴史がまた1ページ。

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