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僕の代理はその後、ハーレムを築きあげて栄華を極めたのであった。うぉえ



目の前に広がる景色は、

母さんに連れて行ってもらったことのある山の中に似ていた。


しかし、木々の種類はまるで違う。

イチョウとかカエデとか、

葉っぱを見ればわかるような特徴がない。

いや、正確に言えばあるんだけれども、

……キモい形をしているんだ。


なんかカエデとかって葉っぱが綺麗に分かれているじゃないか。

あれが何倍にも分かれているんだよ。

うぞうぞっとした、そういうの僕大嫌いなんだよ。

生理的に受け付けないんだ。


奇形の葉っぱがある。


地面は普通。


まあ、これだけで異世界かどうかを判断するのは危ないな。

僕が油断した所で「ドッキリ大成功」とか、

ありそうな話じゃないか。



「どうせ異世界だって言うなら、

 モンスターの一匹でも出てくればいいのに」



……というフラグを立てても、

モンスターは出てこない。

この場に留まっても埒があかないから、

進むしか無いだろう。




「どうですか、異世界『マークシア』。

 空気がおいしくて素敵な場所でしょう?」


聞き慣れた神様の声が真後ろから聞こえた。

背後をとる趣味があるのかこの神様は?


「確かに、排気ガスの臭いはしないし、

 良い場所だと思います。……というか、

 ここ、どこです?」


「異世界『マークシア』ですよ?」


「いやそれは聞いたよ!?

 ここ、僕が今立っているこの場所はどこだって聞いてるの!」


これは失礼と、相変わらず黒一色のローブを纏った神様は、

ゲンコツで軽く自分の頭を叩いた。

てへぺろも決めているが、

てへぺろが許されるのは学生までだろうが……。


「マークシアの南大陸、南東部にあります、

 狩人の森です」


「狩人の森……山じゃないのか」


「この世界の住人にとって、この程度の起伏は山に当てはまらないのです。

 日本で言うところの、富士山くらいで山と認識されます」



立ち話も何ですから歩きましょうと、

神様は余裕しゃくしゃくで歩き始めた。

僕の行こうとした方向でよかった。



「ところで、地球の方はどうなっているんだ?」


「神様にタメ口とはフレンドリーですねえ。

 まあ、私は信仰さえいただければそこのところ自由ですけどねー」



神様はローブから丸い水晶球を取り出した。

映像を見せてくれるのか。随分古典的だと笑う。


「はい。これが現在の映像です」


水晶球から光が放射され、

空中に真四角の映像が映し出される。

……前言撤回。近未来の技術だった。



「ここは……学校か?」



僕のいた席が映し出される。

そこには、2mを超える大きさの背に、

ガッシリとした体つき、丸太ほどありそうな太さの腕。

いかつい強面顔で、犬歯がはみ出ている。


メロメロのキモい表情で、もたれかかるガチホモ5人。



「うげえぇ!? き、キモい!

 もう良いです、母さんを映してくれ!」


「はいはい」



場面は切り替わり、自宅のリビング。

母さんは僕の代理を、僕だとしっかり認識しているようだった。


普通に会話もしているし。




「安心した。もう良いよ」


「では」



水晶球をローブにしまうと、

神様は得意げな表情(口元オンリー)で僕に迫る。



「いかがでしたか?

 アフターケアも万全、私の縁結びは完璧でしょう?」


「確かに完璧だった」


「あの方はこの世界では有名な、

 剛力の持ち主だったのですがね。

 パッシブスキル『女人チャーム』を持っていたがために、

 女性にしかモテなかったのです」



何の問題があるんだよそんな贅沢な特殊能力で!?

いいなー、まじいいなー!!



「しかも体長10mの大型の魔物でしてね。

 随分と難儀したと聞きます」


「……10mだと!?」


「はい。ですので、調整いたしました。

 あ、縁結びは私の力ですが、

 ステータス調整は代行のお仕事ですので、

 よろしければこの名刺に祈って下さい」



名刺という名の御札を渡される僕。

そこには漢字で、よくわからない言葉が書かれていた。



「ステータス調整は異世界転生の基本です。

 そのままの能力ですと危険ですのでね。

 10mさんには、有り余る体力と8mの身長、

 そしてパッシブスキルの『女人チャーム』を対価に、

 様々なスキルとステータスをゲットしました。

 その結果が、あの姿です」


おい、僕の代理。

何だか『10mさん』とかいう不憫なアダ名付けられてるぞ。

でも覚えやすいし面白いから僕も使うわ。


「僕の代理……10mは、男好きだったのか?」


「はい。それはもう。男の出す筋肉の迸りがたまらないのだと、

 私に縁を求めていらっしゃいました。

 あのステータスであれば、世界に羽ばたけます。

 甲子園も花園もボディビルダーも思いのままです」


全部男臭え……。



「あれ、じゃあ僕もステータスの変更できるの?」


「勿論でございます。

 アナタのパッシブスキル『薔薇の誘い』は激レアスキルでしてね。

 消したいということでしたので、買い取らせてもらいました。

 その分の力を、ステータスに割り振りできますよ」


「ゲームみたいだな……ちなみにステータスとかスキルってどういう」



神様は一枚のスクロールを僕に見せた。

力とか顔面とか色々書いてある。

その中で、顔面だけ4桁の数値を出していた。

さすが僕だ。



「顔面のステータスが、アナタは本当に高いですねえ。

 顔面を0にすることで、狩人の森最強になれますが」


「いいや結構だ。1も下げたくない。

 そこらのラノベ主人公と違って、

 僕の顔面は無双レベルなんだ。

 ……第一、森最強ってなんだよ!?」


「冗談ですよ。

 ……ところで、スキルとかの詳しい説明も有りますので、

 歩きながらゆっくりお目通しくださいね。

 あ、最後に忠告です」


僕の保持するアイテムは、名刺とスクロールの2つになった。


「何だよ?」


「住人に出会っても、

 決して好戦的に挑まないように。

 それでは、私は悩める方のもとに行きますのでこれにてー」



神様は帰っていった。


なるほど、スキルか。

俄然楽しくなってきたな。

とりあえずイチャイチャできるスキルを探してみる。



「えーっと、『転落耐性』『衝撃耐性』『オートバリア』。

 ……なんか色々書いてあるな。

 というかこのスクロール自体ハイテクだな」


巻物状のスクロールだが、

スマホと同じようにスワイプをすると、

巻物は動かずに画面だけ動く。

ペラペラの紙なのに……どういう仕組なんだろうか。



「この右上の『98000』。これが多分僕の割り振りスキルポイントで、

 スキル隣の数値が習得に必要なポイントか。

 ふむふむ」




……ところで僕はこの時、

完全に異世界だということを忘れていた。

程なくしてそれを、後悔することになる。



「おい。止まれ。見慣れない魔物だな」



森のどこからか聞こえる声。

僕以外、呼び止められる存在はいない。


「ぼ、僕は人間だ、魔物じゃない!」


「人間? 人型の魔物か。

 ここに何をしに来た。

 私の縄張りと知らないのか?」



知るかそんなの!?

いきなりここに来てたんだよ。



「す、すいません。そういうの全然知らなくて。

 あの、町とか知りませんかね?

 僕迷子で」


「迷子か。丁度いい……ならば」



僕の目の前に誰かが落ちてきた。


着地を決めて、持っている槍の穂先を僕に向ける。



「金目の物を置いていけ」



体つきは白い体毛に覆われている。

顔立ちは人間に近いが、鼻先が黒い。

目も赤い。牙もある。兎のような耳まであった。



「モンスター!?」


どこかの映画で見たような格闘のポーズを取る僕に、

相手モンスターは口笛を吹いた。


「素手で私とやりあうつもりか?

 良いだろう、かかってこい!」



ファーストバトルが始まった。


僕の装備は……ない!


ヒロインは自分で探し出すスタイル。ちなみにどうイケメンかについての話は後回し。なぜなら今の彼……パジャマ姿なので。

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