久しぶりの神様。イケメンが通用する相手じゃない。
結果的に支払金額は3万blに収まった。
久しぶりのご馳走だから張り切ってしまったと、
アイリは酒で真っ赤になった笑顔で話していた。
アイリの背には、ふざけ半分で酒を飲ませた結果、
ぐったりとしてしまった鍋子が熟睡している。
飲ませたことを反省しているアイリだが、
貴重な情報を得られたことに感謝した。
今後、酒気の魔法とか使うやつが現れた場合、
鍋子はその場に居合わせたら不味いと分かったのだから。
「ふしゅー……すゅゆー……んにゅゅぅー……」
台詞にしたくないほど酷いいびきのアイリとは対照的に、
不思議に静かな寝息をたてる鍋子。
どうにか宿屋まで来て、2人はダブルベッドに眠った。
きちんと布をかけている鍋子と、
既に乱雑にはだけているアイリ。
豚と兎という妙な取り合わせだと思ったけど、
RPGとかでオークは定番だし、
兎はだいたい危険な魔物だ。
ひょっとしたらいつか、首刈り兎になるんじゃあるまいかと思っている。
「さて……二人共寝たな」
女の子が2人熟睡している部屋にイケメンが1人起きている。
寝こみを襲うのはイケメンでなくても出来るし、
僕にその気がない。
読者には残念だけど、
そういうサービスシーンは提供しない方針で行く。
「それよりもこれだよ」
僕はスクロール(巻物)を開いた。
まだまだポイントが有り余っているスキル取得表。
僕の野望のためには欠かせないものだ。
どういう仕組みか知らないが、
この紙は絶対に僕の手元から離れない。
さっき部屋に置いたまま外食に行ったけども、
食べている最中、気がつけば手元にあった。
「どうなっているんだこれ……」
スキルの一覧を開示するが、
膨大すぎて、未だに把握できていない。
「色々聞きたいことも出来たし、
……久しぶりに呼ぶか」
神様を呼ぶというのも変なことだけど、
瞬間、縁結びの神様が現れた。
「まだ呼んでないけど?」
「心から思ったのでしたら応えなければ。
ほら、フットワークが軽いと、即断即決しやすいでしょう?」
神様というよりも胡散臭い商売人と言ったほうが正しい、
この全身黒いローブ姿の男性(声で判断)こそ、
僕をこのマークシアに連れてきた縁結びの神様だ。
「どうでしょうか、最近の異世界生活は?」
「順調この上ないね。人間がいないのが気になるけど」
「結構じゃないですか。アナタの代わりに転生した方も、
男子校の生徒全員と関係を持つに至っていますよ」
聞きたくなかったよ神様。
「母さんはどうだ?」
「健康ですね」
なら良かった。
男子校はどうでもいいけど、
それだけは一番気がかりだったから。
「ところでこのスキル表なんだけど、
スキルってどれくらいある?」
「無限ですね。そのスキル表にあるのは、
人間が【欲しい】と願った能力の全てです。
アナタが最初に取得した転落耐性も、
落下中に願った者がいたから反映されました」
なるほど。スキルがなくても、願いさえすれば更新されるのか。
「探しづらいのでしたら検索機能もありますよ?
スクロールに必要な能力をおっしゃっていただければ、
直ぐ様最適なものを選んでくれます」
「へえ。それはありがたい……一度覚えたら消せない?」
「はい。基本的に消えません。
ポイントも戻りません。
ですので、ポイントは無くなる前に増やしてくださいね?」
「増やせるのか?」
「はい。一定条件を揃えれば増えます。
これについては秘匿なのですがね」
肝心なことがわからないのか……。
「それとこの世界……人間はいないのか?
獣人とかはよく見るけど、
人間がいない」
「いますよ。北の大陸に。
……まあこの世界は弱肉強食。
人間も魔物も同じです。
人間は負け、極寒の大地とされる北に逃げるに至りました」
ファンタジーRPGのように、
点在する町や村はないようだ。
「人間の調書はその知恵。二足歩行で、
道具を自在に使うことでした。
ところがこの世界の場合、人間型の魔物が生まれますので、
知恵と道具という利点が相殺されています。
身体能力では絶対に敵わない相手に、人間は為す術がなかったのです」
神様はにっこりと口元をゆるめた。
「『ですので涼太さん。あなたの活躍で、
この世界が生まれ変わるほど……世界もアナタも幸福になれる』
私はそう思っています」
「……? そうだな」
何を改まって言っているんだろう。
僕も幸福になれる? ……よくわからない。
「では。また会いましょうか。私を呼ぶ声が聞こえましたのでね」
「ああ。ありがとう」
感謝するよ神様。僕はまだ強くなれるって分かったからね。
「そうと決まれば検索だ」
僕は色々とスキルを探し、
組み込んでいった。
ハンティングスティール編開幕! といっても今回はその片鱗が見えない……。ヒントはウロコの人。遅速ながらだいたい3~4話の予定。




