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ダンジョンは現場会社だった?! 最終的に出稼ぎ労働なイケメン



風呂漬けにした鍋子は風呂を気に入ってくれた。

今後はきっちり洗ってやろうと思うのと同時に、

間違った方向に突っ走らないように舵取りをしなければと思い立った僕。


その日は宿屋の食事でサラダ山盛りに驚嘆、

法悦、絶頂を極める鍋子。

僕は肉類を存分に食べる。



「何の肉?」


「フト―村の新鮮肉にございます」



シェフに拠れば品種は豚肉。

ふぅむ。焼き加減もいいけど、

素材も良いな。


今度寄ってみて食べてみようと思った。



「リョータ、これ、凄い。

 私のいた山森のなかじゃあ、見つけられなかったものばかり」


「良かったな鍋子」



イケメン……でなくとも、

満足気な鍋子を見て気を悪くする奴はいまい。


こういう生活が出来るのも、

ひとえにダンジョンのお陰だ。



「明日もダンジョン行くか。

 ただし今度は別の場所だ」


「うん! わかった! あんまーい」



そのままダブルベッドの中で、

何事も無く眠る僕と鍋子。


「……リョータ。こんなに安心して寝るのは久しぶりな気がする」


「だろうねー」


食べられないように警戒心むき出しで、

加えて掘っ立て小屋での生活だ。

安心なんかなかっただろうな。


最初に会った鍋子と、

今の鍋子はまるで別人だけど、

多分、今横でいびつな笛の音のようないびきをする鍋子が、

本来の姿なんだろうと思う。



「服だな。まず。……あと……」



僕が手に持ったのは、

ナイフと首輪だ。


ダンジョンで見つけたお宝。

鑑定スキルで判別できなかっただけに、

どんなアイテムなのか気になったが……。



「まあ、見た感じ危ないアイテムでもないし、

 使ってみれば分かるたぐいのものだろうな」



首輪は明日、鍋子にでも付けてやろう。

所有者(僕の仲間)という目印を付けないと、

掻っ攫われて食べられてしまうからね。





そして何事もなく翌朝になれば、

またしてもサラダを貪る鍋子。

ふふふ。いいぞ、モット食え。

僕はスープとパンを優雅に食べていた。





買い物風景は割愛!

アレ買うこれ買うくらいしかないから割愛だ。



現在のお金は、

25000bl―4000blー2500bl。

18500blだ。


僕の装備はこちら


 銀のサークレット(6000bl)

 赤い塗装強化型革のジャケット(3500bl)

 強化繊維マント(青)(1800bl)


11300blなり。



残る7200blで鍋子には、


 魔法結界つき黒ビキニ上下(6000bl)を購入した。



何故ビキニが売っているのだろうと考えたが、

鍋子のように体毛が温かい種族のためだと言う。

服なんか着ても熱い上に動きにくいのだとか。


まあ、裸でいるよりは断然マシだし、

防御力も申し分ないみたいだから良しとしよう。




店の主人に、ダンジョンは何処かと尋ねれば、

集落(以後、町と書く)から歩いて25分程度の場所にあるとのこと。


僕はナイフを持ち、

鍋子はいつもどおり槍を携えている。



「鍋子。昨日のダンジョンで見つけた首輪。

 付けてみて」


「ええ? う、うん」



首輪は赤く、留め金式だ。

付けやすく外しやすい。



「まあ、あの宝箱の中のものだし、

 いい効果だと思う。大事にね」


「わ、わかったわ」



町から出ればダンジョンまでは基本一本道だ。

踏みしめられて自然とできた道を、

定期便の馬車が通って行く。

僕と鍋子は普通に歩いて向かった。


それにしても、

日本の都会と違ってとてつもなく空気が澄んでいる。

空は快晴。木々も生い茂っている。


「魔物はいないのか鍋子」


「私も魔物だよ」


「……そうだったな」



こういうところはゲームと違う。

変な質問をしたと思っている鍋子は、

頭部にクエスチョンマークを出している顔をした。


僕は知らぬ顔で歩いていると、

ようやくダンジョンの入口に着く。

既に何十人(匹?)もいた。

皆各々の武器を持っている。


大きな剣。鎖鎌。魔力増幅の杖。

色々な武器を見ることが出来た。


ちなみにここのダンジョンの入場料は300bl。

足りて良かったと思う。



「兄ちゃん、初めてのダンジョンか?」


「2度目だよ。気合入れて稼ぐつもりなんだ。

 宝箱の争奪戦になるね」


ウロコびっしりの男(雄?)に答えると、

そいつはきょとんとして、笑った。


「争奪戦はねえよおぉお!

 ひー、ひー、だ、ダンジョンは異空間なんだぜ?

 階段を降りてから1分経つと、

 別の空間にふっ飛ばされるんだ」


馬鹿にされてムッとしたものの、

この名無しのウロコは有用な情報をくれた。


ダンジョンは階層を昇り降りすることで、

全く違う異空間に差し替えられる。

それは時間経過にも依る。


例えば、僕が地下1階に降りてから1分後に鍋子が降りる。

その場合、居場所は同じ地下1階なのだけど、

僕は鍋子と合流できない。

鍋子のいる地下1階と、僕のそれは全く違うからだ。


昨日は一緒に昇り降りしていたから気にもしなかったが、

なるほど。ダンジョン内の魔物が階段を昇り降りしないのはそれが理由か。



それならば確かに、

宝物も別個になるから良いのだろうな。




「すみませ~ん……すみませ~ん……」



そんな僕の耳に入ってきた、気の抜けるような声。

鍋子は真剣な目で槍を手入れしている。


「私を~ダンジョンに~、連れて行ってくださ~い」



一目見て思ったのは、

丸い。丸々太った……贅肉がはみ出るほど太っている、女性……?


青と白が混ざり合わない配色の服装。

頭には安い素材の兜。

右手にはメイス(棍棒系統)を握っていて、

左手には『同伴願います』の看板を握って呼びかけている。


顔立ちはわりとすっきりしていて、

目も丸く口元も愛らしい雰囲気。

だが、鍋子よりもでかく僕よりも小さいその体には、

パンパンに膨れた腹肉と腕の肉があり、

重量面で言えばこの場にいる誰よりも高そうだ。


鍋子と違い、顔立ちも人間的容姿に近い。



「しかし何だあれ……」


「あ~、あの嬢ちゃんは昨日もああしていたね~。

 一緒にダンジョンに潜る相棒を探しているみたいだ」


さっきの名無しウロコが来た。


「何で?」「そこまでは知らん」


即答かよ。



「まあ、兄ちゃん気を付けな。

 ああやって誘って、ダンジョンの中で裏切っていく奴も、

 世の中多いみたいだからね」


ウロコさんありがとう。

君のことは今日くらい忘れないでおくよ。



「よろしく~、おねがいします~」



まあ、見た目からして勧誘するには抵抗があるな。

ここに来ているダンジョン探索者は、

その日の稼ぎのために働いている。


いわばサラリーマンだ。

それを新入り含めた稼ぎとなると、

分前とかの切実な問題になるんだろう。



「鍋子。どう思う?」


「わからない。ただ、あのピアスを見る限り、

 信用してもいいと思う」


「ピアス?」



へそに、確かに輪っか状のピアスがあった。

でべそかよ!? 隠せよ馬鹿!



「あれは出荷前の番号が書かれたピアスだよ。

 付けられているってことは、近々出荷されるんだろうね」



出荷……見た目豚……あ。


「僕が昨日食べたフトー村の肉って……」


「そうだよ。彼女のいる村の誰かの肉だったんだろうね。

 食物連鎖ってやつだよ。私達兎よりも部位もあるし味も美味しいから、

 村が丸々牧場ってわけ」


その村の食べられる子たちは、

食べられることを誇りに思っているのが普通なんだとか。

実際その品質によって、村に対する援助金もあるのだという。


「なるほど。把握したよ。

 知りたくもなかったけどね!」


でも美味かったし、また今度食べようと思った。

食育の授業はなかったけど、

食べ物って残酷なものなんだというのは知っているし。



「もしもしそこの子豚ちゃん」


「はい~?」



すっげえのんびりしているな―。



「君は、最後の思い出作りにダンジョンに行くの?」


「え~っ? 違います~、ダンジョンで~、

 パーティーに入って~、出荷されなくしたいんです~」



ダンジョン探索者の徒党。

つまりはパーティーに所属すれば、

フトー村では出荷免除されるらしい。


村の価値観は『美味く美味しく食されること』が全てのようだが、

たまに食べられるのを嫌う者がいるようで、

それがこの、のんびり豚娘だそうだ。



「いつ頃出荷されるんだい?」


「3日後です~。

 出来なければ、来世には虎さんに生まれたいです~」



既に死ぬ覚悟はできているのか。

こういう子がパーティーにいると心強いが……。


「君は何が出来る?」


「回復と~、あ。肉壁です~」



前衛か。

出来れば後衛がほしいと思っていたけど、

イケメンの僕が臨機応変に後ろに回ればいいか。



「わかった。じゃあ試しに僕達と潜ろうか」


「いいんですか~? やった~」



ぴょんぴょんジャンプするが、

若干、周囲が揺れた気がする。

鍋子は事の顛末を見届けて、


「私は鍋子。よろしく」


と、案外あっさりと友好の握手を交わした。

食物連鎖最下層組が握手した。


「自己紹介が遅れたね。僕は榊涼太」


「私は~、1401です~」



……出荷番号か。


OKわかった。

読者か作者に名前を考えてもらおう。


次回予告:やめて! 翼竜のドラゴニック火炎ブレスで焼き払われたら、豚子がただのチャーシューになっちゃう! お願い死なないで豚子! あんたが今ここで倒されたら、太め系ヒロインの最先端は誰が担うの!? 期限はまだ残っている、ここを抜ければ冒険者になれるんだから! 次回『豚子死す』お楽しみは、これからだ!

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