表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/64

謙虚に生きるだと? 僕みたいなイケメンは欲張ってハーレム作るのが義務だと思う。



『硬い盾』:防御力3。どう見ても木製。燃えそう。


『強めのナイフ』:攻撃力2。ただのナイフが少しだけ鋭利になった。


『スリッパ』:裸足よりかはマシ。かっこよさマイナス補正。


『爪とぎ』:ただのヤスリ。


『ホーリーのランス』:伝説のボケ老人ホーリーが「これは爪楊枝じゃないぞ、槍じゃ」と言い張った爪楊枝。


『乾いた雑巾』:即捨てた。


『干からびたりんご』:ネズミに食わせたら即死した。


『タンポポの髪飾り』:鍋子に付けてみた。顔を真赤にした。



等など。


見つけた宝物はこんな風にくだらないものばかりだ。



なるほど。何で冒険者が下層に行きたくなるのかが分かった。




いわゆるソシャゲのガチャみたいなものなんだなと思う。

僕達がとっているこの狩場は、いわばゲーム内通貨でのガチャ。

ゴールドとかに近い。


一方で、レアアイテムが欲しいのであれば、

課金……つまりはリスクを負ってでも、

下層に宝を求めるしか無い。

ソシャゲで言う結晶クリスタルとかみたいに。



さっきから出てくる魔物も、ネズミや蟻ばかりの大量投入型ばかりで、

質より量のせいで鍋子に瞬殺されている。

んで、何も落とさずに霧になって消えるばかりだ。

ドロップアイテムの見込めない敵など、どうしろと言うんだ……。



「鍋子。鑑定結果だ。金額の付くまともな品をかき集めても、

 300blにしかならない」


「むしろ300blもあるの?! ガラクタばっかりじゃない」



安全圏で小遣い稼ぎならこの程度か。

それでももう少し位欲しいところだが……。



「地下深く潜ればもっと狙えるな。

 ……食い殺されないようにしなきゃだが」



恐ろしさはあるものの、このままではジリ貧だ。

現在地下2階。下りの階段は目の前にある。



「行くぞ鍋子。僕も戦闘に参加すれば完璧だ。

 イケメンがいるパーティの士気は急上昇。

 つまり勝てる」


「無茶苦茶な理由ね……。

 (士気は上がっているけどさあ……)」



地下3階。そこに待ち受けていたのは、

……やっぱりネズミだった。


「あと罠とかもある……。

 けどネズミ取り用の罠だから……」



なんなんだこのダンジョンは。

いくら何でもショボいぞ。

だからボッタクリ価格なのか?


「もっと下に行くぞ」


「わかったわ」



気分爽快無双気分。

今の鍋子はすごく生き生きしている。

並み居る物量に息1つ荒げず、

槍、蹴り、投擲で大量のネズミを退治していく。


僕もそろそろかっこ良く魔法を使って倒したいが、

その出番はない。


いい加減、鍋子以外に使ったことがない火炎魔法と氷結魔法を使いたい。




 『ぎしゃあああああ……』



「……聞こえたか、鍋子?」


「ええ。この先にいる。

 でも、さっきまでそんな気配なかったのに?」



これまでのネズミとは違う。

なんだろうか……怖いものであることには違いないだろうが、

下り階段も見当たらない以上、

まだ行っていない場所に行くしか無い。



急ぎ駆けつけた先は、大きな部屋だった。

高さは5m。

広さはバスケットコート2つ分、

通っていた学校の体育館程度の規模。


その中心に魔法陣が紫色に煌めいていて、

中心には体長3m程度の……。



「またネズミかよ!!!?」

「またネズミぃいい!?」



黒黒とした体毛。

どこか禍々しいオーラのようなものをまとったその姿はまさに、

ネズミだった。まあとにかくデカイ。

で、小さなネズミも従えていて、

これらがまず襲ってくる。


「むぅん!」


決まった。帯状の炎がネズミをなぎ払う。

……そしていつもどおり霧が生まれ、

それは大きな化物ネズミに吸い込まれていき、

ほんのすこしだけ大きくなった。



「吸収した!?」


ネズミが雄叫びを上げる。

そのまま僕ら目掛けて突進した!


「おわぁ!?」


情けない声だが非常時だから仕方がない。

横っ飛びで回避する僕。

鍋子もすんなり回避した。



 『ぎしゃあああああああああああ!!』



強そうな雄叫びだ。

如何にもボスだ。いい風格をしている。



「しかし所詮、ネズミはネズミだ!」


氷結魔法でネズミの片足を固定。

気を取られている間に察した鍋子が突撃して、

槍で攻撃をする。

大きく口を開けた瞬間に、


灼熱球ファイヤーボール!」


技を叫ぶ必要など無いのだが、

こういうのは雰囲気だ。


可視化した火炎の珠が化物ネズミの腹に投入される。

化物ネズミは苦悶に打ち震えて無茶苦茶に暴れまわるが、

予測不可能な攻撃でも標的にされない以上、

脅威ではない。


散火スプラッシュ!」


焼きつくした珠が炸裂してネズミの体内に散る。

各々炎上して、ネズミは活動を止めた。




「さすがイケメン。さすが絵になるイケメン……。

 僕の大活躍の前に、ネズミなど……ふ、ふっふっふ、

 ふはあははあははははあははあ!!!」


カッコイイ男子像の中には中二病もあった。

負けじと黒歴史ノート(シュレッダー処分済み)に記載しまくった、

技の数々。それが実現し、決まる愉悦が僕の口角をつりあげた。



「あ、なんか宝箱出てきた!」


「何ぃ!?」



大きい宝箱と、小さい宝箱だ。


装飾にもこだわりを感じる、豪華な宝箱だ。

これまでの「とりあえず宝箱だよー」感がどこにもない。



「……まてよ……そうか……そうだったのか……ネズミとは……」


「ど、どうしたのリョータ?」



「鍋子。僕の知っている昔話にな。

 『舌切雀』というものがある。

 最終的に大きいものと小さいものの、

 どちらかのおみやげをくれるというものだ。

 ……謙虚な人は大金を。

 そうでないひとは百鬼夜行を引き当てた」


「それ恩返しする気無いよね?!」


「しかしながらここはダンジョン。

 謙虚でいるよりも欲張って強いやつを引き当てる。

 そうすれば、更に大きな宝に巡り会える。

 ……そんな気がする」


「じゃあ、大きい方を開けるの?」


「そういうことになるな。

 さあ、ご開帳!」




出てきたのは、鬼。

いや、比喩抜きで鬼のような……鬼。

強そうだ。筋肉モリモリだし……。


『おでさば、おま゛えら、みいなころし』


「やってやらぁああああ!!」

「うぉおおおおおおおお!!」










それは、激しい戦闘だった。

鍋子の技。僕のスキル。

鬼の暴力にネズミの増援。

フレアランスの瞬間発火にも耐え抜き、

鍋子の必殺技『心臓ドッキュン突き』も耐えた。

心臓が鬼の額にあると判明し、

総攻撃を加えて倒した頃には、

僕たちは満身創痍だった。

1話丸々使えそうな物語だった。





『みごどぉ……おお、みごでぁえ……ぐふっ』


鬼は消滅し、新たな宝箱が現れた。

翡翠色の宝箱だ……。綺麗で美しい。

今度は1個だけだ。


「開けるよ?」


「頼む」



開けた瞬間……そこにはこぶし大の金塊10に、

首輪1個、羽のついた靴、1本のナイフがあった。


まさしく宝物だ。




「金塊は……1個2500bl。

 あいつに支払うだけの金はあるな」


「やった……やったねリョータ!」



飛びついて僕の顔に腹を押し付けてくる鍋子。

顔は見えないが、声からして喜びを抑えきれていない。



「ああ、これで帰れるぞ」



まあ、靴は……僕が履くには小さいな。

ナイフは……鍋子の手に収まりそうだ。


いずれも鑑定技能レベルが低いため、

鑑定できない。



「首輪か……ちょうど欲しかったところだから、脱出したらつけてみよう」



宝を回収し、僕らはゲートを使って外に出た。

(入ることは出来ないが、脱出には使える)







リザルト



妖精の靴

???の首輪

???のナイフ


金塊:25000bl相当




次回予告:パジャマ生活から脱出したリョータ。彼らは新たな装備を整え、近場のダンジョンを求めて行く。そこには、新たなる出会いがあった。最近流行りのポンコツヒーラー……ではない、しかしヒーラー。そして新感覚ヒロイン!乞うご期待! 次回ぶらりイケメン下車の旅『九州名物ラーメン』。この予告に、正解率は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ