どうイケメンなのかって? いずれわかるさ。
「来世はラノベ主人公でお願いします」
僕はそんな遺書をグシャグシャに丸めると、
自らの手でゴミ箱に捨てた。
深夜、わざわざ目にクマまで作って僕は何を書いているんだろうと、
腹ただしさと恥ずかしさに、本気で死にたくなってきた。
何がラノベ主人公だ。
僕の人生は理不尽だ。
あっちは理不尽だと叫ぶけど、
こっちはもっと理不尽だ。
成績優秀、バスケ部でも大活躍、
顔立ちも良い僕に、
皆羨望の眼差しを向けて、
バレンタインデーには5個のチョコが手元にあった。
義理チョコだろうと思っていた。
それから数日後の昨日、僕は高校の屋上に呼び出され、
そこには5人のチョコ人が待ち構えていた。
「この間のチョコの返事……聞かせてくれないか?」
「俺のチョコ……」
「誰が一番好きなのかい?」
皆、野太い声で、
僕よりも背が高く、屈強な体つきをしている。
ここは男子校。女子はダルダル腹の怪物教師しかいない。
僕は顔が良すぎた。人当たりもよすぎた。
よもや同性に告白される日が来ようとは、
夢にも、……悪夢でさえ思ったことはない。
先に夢で予習しておくべきだったのだ。
こんな最悪極まる事態に遭遇した時のパターンを。
「そ、そんな気は……僕は普通に、女子が好きなんだ」
「そんな!?」「馬鹿な……」「酷いよ!」「この想いがわからぬのか……」「うらめしや……」
微妙に面白い返しをして落ち込む5人を尻目に……したら危ない気配だったので、
クマから逃れるようにずり足で後退する。
もう、学校には行けない。
別の高校に、共学に逃れるべきだ。
そもそも家から近いという理由だけで選んだのが間違いだった。
ああ、失敗した……。
僕の人生はここで狂ってしまった。
大慌てで学校から帰宅した僕は、
母の心配を他所に部屋のベッドに引きこもった。
相談すれば良いじゃないかと思ったが、
「屈強な男5人にチョコの返事を迫られた」など、
言えるわけもない。
「ラノベ主人公は良いよなあ……どんなに顔立ち悪くても、
弱くても、キモくても、難聴でも、
誰もが皆女子にモテるんだから。
あーはいはい僕はハニーマスクだよ、
男も女も惑わすハニーフェイスちゃんですよぉだ、
あっきゃきゃきゃきゃ!!!」
狂った笑いを出してみたけど、
キャラじゃねえなとすぐに反省。
いやマジで、本気でラノベ主人公になりてぇ……。
実体はこのままで良いから、
なんか最強になってしまいたい。
でなければ消えてなくなってしまいたい。
まあ、こんな気持はどうせ、
明日になれば消えてしまうのだろうけどさ。
僕のメンタルなめんなよクソが。
心配しているであろう母さんを安心させるため、
僕は部屋の扉を開けた。
「母さん、僕転校するよー。
編入試験対策するから邪魔しない―――」
【で】の一言は、開け放たれた景色の中に消えた。
扉を開ければ廊下の壁が見えるはずなのに、
そこには真っ白……ただただ真っ白な世界が広がっていた。
奥行きも、高さも、不明。
「……」
そっと僕は扉をしめる。
僕は正常で、部屋の中は一切変わらない。
窓の先は真っ暗だ。そのはずだ。
「……」
そっと開けてみる。
景色は真っ白だ。踏み入ったら溶けてなくなりそうなくらい、
濃淡が見当たらない白一色の世界。
「なんじゃこれ……」
人間、信じられない出来事を前にすると、
腰が抜けるようだ。
「夢か……夢だよな……」
「いいえ、夢ではありませぬよ」
僕しかいないはずの部屋に聞こえる誰かの声。
振り返れば窓を割って、
誰かが侵入していた。
目深に被った黒のローブ。
口元以外の露出がない黒のローブ姿。
手には古木の杖を握っている。
声だけ聞けば20代後半程度。男性に間違いはない。
「夢じゃないなら何なんだよ?
あと、あんた誰だよ、俺の母さんはどうした!?」
「質問は1つずつお答えしましょうかね。
まず、ここは夢ではなく現実です。
少々時の流れが止まっていますがね」
ラノベでこういう飄々とした奴は大概、
危険人物だ。逆らってはいけない。
しかし信用もしちゃいけない。
「そして私は、調整神とでも申しましょうかね。
縁結びの神様ですかね。まあお好きなように呼んで下さい。
最後の質問ですが、アナタの身内は健在ですよ」
「……縁結びの神?」
「はい。信仰の増加に伴いまして、
最近では私が介入できる範囲が世界……異世界にまで及びました。
あ、服装はおしゃれですよ? 神界では最先端の、
迷彩黒子服なんですよこれ、んふふふふ」
知ったこっちゃない情報をいちいち盛り込む自称神に、
反論する材料が見当たらない。
「それでですね。
縁結びの神としてはアナタに、
ご縁のある世界へと招こうと想いましてね。
こうして参った次第です。はい」
「な、何が目的だ!?
そういう異世界転生とかは間に合っているぞ?!
俺は十分リア充だからな!」
「男にモテる人生でも、ですか?」
「あがああああああ!!?」
男にモテる人生……。そう。
そうだ。
僕は生まれつき、男にモテる。
さっき嘘をついたけども、女にモテたことはない。
男にモテているという事実を目の当たりにし、
皆が皆、遠慮して、倦厭してしまったのだ。
僕は正直、男が憎かった。
たくましい体からは致死レベルで暑苦しい熱気が噴出し、
吐く息は臭く、野太く心地悪い声で、
僕に気に入られようとすると本気で気持ち悪い生物に変わる。
あれは害獣だ。
僕に関わる男は害獣に決まっている。
「ご安心下さい。
私は縁結びの神様。
あなたと、ご縁のある世界にご案内しましょう」
「だ、だが僕が消えたらどうなる?
母さんも、友達も寂しがるし」
「心配無用です。
交換ですからね」
「交換?」
自称神は、空中に何か図を書き始めた。
アニメとかでも見た景色だが、
実際見ると摩訶不思議っていうレベルを超えている。
描かれたのは2つの球体。
そこにそれぞれ立つ2人の人形だ。
「片方は地球。
もう片方は異世界です。
異世界には先日、あなたと似た悩みを抱えた方がいらっしゃいましてね。
『もうメス相手にモテるのは嫌じゃあ!』という、雄々しい悩みを持っていました」
話が見えた。
つまりそのガチホモと僕を交換し、
WIN―WINの関係を築こうというのか。
「あ、気付いた顔ですね?
そうです。で、アナタに関する記憶などは全て、
その方との物に置き換わります。
アナタの痕跡は一切、綺麗サッパリなくなるのです」
……あのガチホモ達とガチホモをかち合わせる。
僕は異世界へ。そして。
「女の子にもってもてに……」
「はい」
「み、見返りはなんだ? 金か?」
「神様は金ではなく信仰がほしいですねえ。
まあ、日々私に感謝してくれれば、
それで十分です」
即決以外の選択肢は……なかった。
僕はその契約を結び、
白い地平へと飛び出した。
ただ感謝だけすればいいとか神か、
神だったわ。
ありがとう縁結びの神様。
僕はモテる!
新たなる地平で、
僕は、モテる!!!!
……多分続く!
転生もので攻めてみよう。自分なりに書いてみようと思って瞑想すること5分間。見よ、そこにはホカホカの『ど◯兵衛』が! ……というくらい適当な滑り出し。見切り発車。実のところ現時点で世界観もヒロインも決まっていません! 続くか否かもノープランです! とりあえずキャラは大事にします。はい。