表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Syllable innocent

作者: 未夢

「かくとだに、の、かくはこの様に、だには打ち消しの意味で…ここまで良い?」

私が差し出した一枚のルーズリーフ。先生がさらさらと字を書いて行く。

和歌が苦手な私の為に態々時間をとってくれた先生。少しずつ説明を区切っては私に笑いかけて確認する先生。背中を駆け抜ける微熱に気付かない振りをして、いつもみたいに余裕ぶった笑顔で返す。

「よし、じゃあ暗唱してみろ」

「はーい。かくとだに、えやはいぶきの…」

昔の人が恋人の和歌に負けない様にって作った歌の一節。こんなにも思ってるけど、それを言う事なんて出来ないって言ってるらしい。

昔の人だって言えてないんだから、私だって言える筈ない。

「真剣だな、お前」

「…だって、テストヤバいから」

横目で私を見遣る甘い視線がどうしようもなくむず痒くて一瞬目を背けたら、先生はふっと笑う。

「へえ。一生懸命に成ってくれて先生は嬉しいですね」

頭の中の先生の字を追いかけて、歌の一節一節を唱えて行く。真ん中の節を過ぎて、そして、

「おう、覚えたな」

まるで自分の事みたいに喜んでくれる、私の大好きな人。

ごめんね、先生。


私、貴方に恋してるなんて絶対言えない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ