苦難〜僕と蛞蝓〜
この小説は、企画小説です。「苦小説」と検索すれば、他の先生の作品を読むことができます。
小さい頃、でも、それほど小さくない小学生頃の話です。
小さい頃って一般的に夜が怖い人が多いと思うのですが、どうですか?ちなみに僕はその中の一人で、夜が怖かったんです。
そんなある日の夜に起こしてしまったんです。残酷なことを…。
今日も僕は夜一人でした。本当は一人は嫌だけど、大人の事情で両親は夜、共働きでした。
「しかたないんです。」
僕はそうやっていろいろなことを我慢していました。(そのせいなんでしょうか?あんなことをしてしまったのは…。)
それでも、夜、一人で我慢できないこともあります。一つは、夜トイレに行くことと、もう一つは、夜歯を磨きに行くことです。
明かりをつけて行くのですけど、やっぱり夜の廊下は怖いです。ギシギシ、ギシギシと板の悲鳴が聞こえます。怖くて足が進みません。
歯なら磨かなければいいのだけど、トイレはやっぱり行きたくて、仕方なく足を進めるのです。 そんなこんなでトイレにつくと急ぎます。ダッシュです。
だけど、ここまできたら歯も磨きます。お母さんに怒られますから…。後、虫歯になったら痛いですし、洗面所はトイレの近くなので少しは怖くないですから…。
そんな訳で僕が歯を磨いている時、ある生き物が洗面所にいました。ナメクジです。カタツムリの殻なしみたいなやつです。
僕はそれを見るとあることを思いだしました。 それはお母さんが、ナメクジを見て
「気持ち悪い、しっしっ、あっちいって」とお邪魔虫のように扱っていたことです。もちろん僕は気持ち悪いとは思いません。
僕は使命感というのか、悪戯心というのか、そんな入り交じった心をもってあることをしようと思いました。
わかりますか?そうです。塩をかけようと思ったのです。理科の先生が
「ナメクジに塩をかけるとちっちゃくなるよ」っていっていたことを思いだしてしまったんです。
僕は台所に向かい、台所の棚の上にある塩を取る為に背を伸ばしました。だけど、それでも塩はとれなくて、台所の椅子を持ってきました。見事に塩は取れました。
心の中は、使命感でいっぱいで、恐怖感なんて全くありませんでした。僕は洗面所まで急いでいきました。ナメクジが逃げてしまわないようにね…。
「いたいた」ナメクジは、前とほとんど同じところにいました。進んだ後はありましたけど…。
僕は、塩を親指と人差し指で摘みました。なぜか僕の心はドキドキです。
手が震えます。だけど親指と人差し指の感覚だけは鋭くて、血液が流れてくる感触までわかる程でした。
僕は、ナメクジの触角にそっと塩を振り掛けました。
するとナメクジは、小さく小さくなって、ダンゴムシのように丸くなりました。
「ほんとだ」
しかし、動かなくなりました。なんの動作もしません。指で突っついてみても、全く動きません。
僕は急に怖くなってベッドに走りました。そして、鍵をしめて布団の中に潜り込みました。
それでも怖くて怖くて仕方ありませんでした。眠りたいのに頭の中はナメクジの映像ばかり…、
あんなに怖かったはずなのに朝になっていました。僕は急いで洗面所に向かいました。洗面所に着くとすかさずナメクジを見ました。
ナメクジは昨日のままでした。
これが誰にも言えない秘密になったのはいうまでもありません。
子供って、ときに残酷だったりしませんか?
この作品は『重み』を知らないからこそ、無邪気に直進することができてしまう子供の残酷さを表現した作品です。
本当に大切なものは失った後に気づくものだとよくいいますけど、この僕は気づくことができたのでしょうか?
皆さんはどう思いますか?