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秋の夜長に短編夜話  作者: 三文士
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ジ・エンドロール

俺たちの住む場所はとても殺風景だ。



いつも黒か白、この二つが存在する色彩のほとんどだ。



けれど極まれに、違う色も紛れ込んでいる時がある。



それはとても珍しい本当に滅多にないんだ。



基本、俺たちの世界は黒。



闇、というのとも少し違う。



とにかく黒いんだ。



そこを絶え間なく白が流れ、通り過ぎてゆく。



大きな川の様でもある。



まあ絶え間なく、というのは誇張かもしれない。



終わりは毎回必ずくる。



だけど白が流れているのを眺めている時はそれこそ終わりなんかくるのか?と疑問に思うほどなんだ。



それくらい矢継ぎ早に流れていく。



俺たちはただそれを、ぼうっと眺めているだけだ。



ここは退屈な場所だ。



とてもとても退屈な場所。



俺たちの住む場所のずっとずっと向こう側にも、似たような場所がある。



似たようなというか実は全然似てはいないのだが、同じような造りをした場所だ。



詳しくは知らないが、あっちとこっちはどうやらまとめて一つの世界らしい。



だが向こうはえらく賑やかだ。



とても色彩豊かで何だってある。



なぜそんな事を知っているかって?



俺たちにも向こう側を見る事は出来るからさ。



遠目にだが確認出来る向こう側はとても美しい場所だ。



俺たちはいつも憧れている。



だが決して行くことはできない。



過去に前例はない。



聞いてところによると、昔は向こう側も俺たちの住む場所と同じように白と黒の二色しか存在しなかったらしい。



だがいつからか、向こう側だけは彩り豊かになりこちら側は変わらない白黒のまま。



なんて不公平なんだ。



だが俺は知っている。



なぜこうも不公平なのかを。



俺たちの住むこの場所は、いわゆる向こうのオマケに過ぎない存在らしいのだ。



悲しいことにそれは紛れもない事実なのだ。



だが同時に、こちら側がないと向こう側も存在しないということでもあるらし

い。



オマケでありながら必要不可欠な場所。



これも確かな事実である。



つま、こっちと向こうは表裏一体の存在というワケだ。



もちろんこっちが裏面。



大事な大事な裏方の世界。



それでもやはりここは退屈だ。



だがこんな退屈な場所でも唯一皆の心の救いと呼べることがある。



それは音楽だ。



俺たちの住むこの場所には、いつだって音楽が流れている。



その時々によって音楽の雰囲気は大きく違う。



ジャズやクラシックはもちろん、ポップスやインストゥメンタルだって。



ハードロックにレゲエ、ダブステップになんでもありだ。



ありとあらゆるジャンルの音楽が流れている。



俺たちは日々、そんな音楽を聴きながらただただ漆黒の世界を流れていく白を眺めて過ごしている。



音楽は素晴らしい。



だがやはり。



ここはとても退屈だ。








「そんな感じに考えてみたんだけど、どう?」



「え?なにが?」



「いやだからさ、エンドロールの中に住んでるヤツらがいたとしたらって話さ。あの流れてく字幕の世界に住んでるって設定でさ。」



「はぁ?なにそれ?てかそんな事考えながら映画見てたワケ?」



「だってこの映画クソつまんねえんだもん。」



「えーなんでぇ?結構良かったじゃん。」



「どこが?」



「えー?◯◯くんがカッコ良いとこ?」



「それ映画関係なくね?」



「じゃあ最後のシーンなんか良くない?超泣きそうだったんだけど。」



「あのラブシーン?あれ、×××って映画のもろパクリだぜ?」



「でも最後に流れる主題歌は良くない?アタシ欲しいかも。」



「映画に全然関係ない曲だけどね。タイアップでもなんでもない。」



「あーもうアンタと映画見るのマジつまんないわ。」



「同意見です。」





エンドロールも映画の一部。



上映中はお静かに。





芸術の秋。映画はお好きですか?実際のところ、季節関係なく映画館で観る映画はいい物です。まだまだ続きます。

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