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深淵の捕食者  作者: ポンタ
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0003

俺は牢屋で一日を過ごした。そして今は見た感じ何もない荒野の中を馬車で揺られている。


「着いたぞ」


どうやら目的地に着いたらしい、俺は無言で馬車を降りる。降りた先には巨大な穴がありそこからは禍々しいとしか言いようがないオーラのようなものが溢れていた。


「ここは<深淵>と呼ばれているまだ攻略されていない迷宮だ、中は暗く、邪気が充満している。」

「さて説明も終わったし、何か言い残すことはないか?」

「…とくにねぇよ」

「そうか、ではな」


ドンと背中を押される、次の瞬間俺は吸い込まれるように穴に落ちていった。


───────俺は声にならない叫びを上げながら縦穴を落ちていた。まだゴールの見えない縦穴で俺はの中で黒い感情が湧き始めていた。


…暗い、寒い、怖い、なんで俺がこんな目に会わなきゃいけないんだ?中学の時からだってそうだ、なんで俺はいじめられていたんだ、なんで俺が標的だったんだ、俺じゃなくてもよかっただろう?なんで俺が咎人なんだ、別に俺は何もしてないだろう?なんでなんだ…ナンデナンデナンデナンデ


周りのどす黒い空気がオレにまとわりつく、最初はちっぽけだった黒い感情が心を浸蝕していく。


―――そうだ別に理由はない、あいつらは理由がないのに俺を嬲ってやがったのか…姫さん、リアーナとかいったか…あいつだって俺に邪神アルタリアの称号がついてるからって、それだけでこんなところに落としやがって…どいつもこいつもフザケテやがる。


いつかのアルタリアのように圭の心を黒いものが塗りつぶしていく。そしてついにその黒い感情は爆発した


―――ここは確か迷宮って言ったか?なら攻略も出来るはずだな…決めたぞ、おれはここを攻略して、あのフザけた野郎どもに必ず………


「復讐してやる!!!」




―――――圭が決意をしてから数分が立った時、


バシャァァァン!!!


突然何かに体を打ち付けられ、体に痛みが走った。


痛ってぇ!なんだコレ?息ができねぇ…暗くてなんも見えねぇけどこの感触は…水か?なら上に行けば水面にでられそうだ…


とりあえず俺は上に上がることにした。


「プハァ…ゼェゼェ…しかし落ちたのが水で良かったな、あの高さから地面に落ちてたら一発でアウトだったな」


俺はそのあと何とか陸地を見つけて上った。



しかしホントに何も見えねぇな、何とかならないのか?と思ってた矢先に…


ズルリ…ズルリ…


何かぼんやりと青く光ったものがこちらに向かってやってきた。


「ん?なんだ?」


俺は不思議に思いスキルを発動させた。


「【鑑定】」


そう、スキルだ。牢屋に入っていた時に偶然使い方が分かった。

この【鑑定】の効果はものを凝視するとその物の情報が表示されるというものだ。

ちなみにステータスも鑑定できるので見てみた、結果は以下の通り。


邪神(アルタリア)の加護】…アルタリアに気に入られた者に贈られる称号。この称号がついている物は種族を問わず取得できるの魔法が闇属性のみになり、扱える気は邪気のみとなる。



【捕食】…魔物を喰らうことによってその魔物のスキルや身体的特徴などを手に入れることができる。魔物は生きていても死体でも捕食可能


それであのひかる物体はなんだったかというと…


ロロロロロロ

【個体名】スライム

【種族】魔物

【称号】歴戦のスライム・一騎当千・風来坊

【スキル】再生・水魔法(中級)・発光・音探知ソナー・迅雷・融解

ロロロロロロ


おい!? 何かスライムのくせにいろいろかっこよすぎだろ!?称号とか全部かっこいいじゃん!スキルの迅雷とか!

心で激しく突っ込んでいると不意にスライムと目があった……気がした。

するとあろうことかスライムは俺のことを見て一瞬驚愕したように体をのけぞらせながら大きく膨らみ、ついで一本だけ触手のようなものを伸ばして「かかってきな」とでもいうようにクイクイッと先のほうを曲げた。

…いろいろあれではあるんだが、あいつのステータスは実に魅力的だ、特に【発光】と【音探知ソナー】・【再生】あたりだ、知っての通り俺には【捕食】がある、もしあいつを倒してスキルを手に入れられるのならかなり攻略につながると思う。

 いろいろ考えてる所を好機と見たのか、スライムは動き出した。


ビュンッ!


なっ 早い!

一瞬消えたかと思うとスライムは突然俺の前に姿を現した、そしてスライムは流れるように俺の脚に絡みつく。


クソッ!捕まった!


そう思った瞬間、足に激痛が走った。


「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


しかし次に目に入ってきた光景に痛みを一瞬忘れ、ついでどっと冷や汗が流れる。

俺はあまりの痛さに床を転げまわり、スライムを振り払おうと足を振り上げた時に俺は見てしまった…服はすっかりなくなり所々肉が剥げて骨が見えており、今もなお融かされ続けている自分の脚を。

 そしてスライムは、徐々に体の上に向かって進んでいく。


「うぐあぁぁぁぁぁぁ」


全身が焼けるように痛い。もう脚は全部融かされたのか、感覚がない、もがく気力もない。


…俺はここで終わるのか?


スライムはついに俺の顔を覆った。


…いやまだだ、まだ終われない、俺は何もしてねぇじゃねぇか、落ちているときに決めただろ?あいつらに復讐してやるって、そうだ、復讐するなら終われない。


…てめぇごときにやられてる場合じゃねぇんだよ!


次の瞬間俺の頭にこつんっと何かがぶつかる感触があった、俺は目を開けた。するとそこにはフヨフヨとこちらをバカにするような動きで俺の前を漂っている深い青色の玉があった。


…そういえば小説とかではよくスライムみたいなゲル状の魔物は核があるのがお決まりだったか、そうするとこれは核で間違いないな…ククク、見ていろスライム、今からお前を…喰ってやる。、


もう感覚がない頭を、スライムの核に向かって動かす。スライムの核が口にそろそろ触れる所まで来たとき、俺は肉が融けて歯が半分以上さらけ出された口を開けて、


ベキャッ!!


核をかみ砕いた。

その瞬間スライムは全身を軽く震わせると、パンッと乾いた破裂音を出しながら弾けて消えた。


「カ…ウェ……」


しかし既に体を半分以上融かされていた俺は、はっきり言って死ぬ寸前だった。


《スキル【捕食】の効果により魔物のスキル【再生】を習得します。》

《スキル【捕食】の効果により魔物のスキル【迅雷】習得します。》

《【深淵】の魔物【スライム】を捕食したため、体が【深淵】に適応します。》

《【深淵】に適応したため、スキル【暗視】を習得します。》

《魔物を捕食したため職業が【捕食者】に変化します。》

《条件を満たしたので種族が【悪鬼】に変化します。》

《スキル【邪気】を取得しました。》


男とも女とも取れない不思議な声が脳内に聞こえたとき、俺の意識は闇へと沈んでいった。



――――――少し時間がたってから俺は意識が覚醒した。


「…う……アレ?死んでない?そういえば少し前になんか声が聞こえたような…」


気絶する前の出来事をだんだんと思いだし、あわててステータスを確認する。


ロロロロロロ

【名前】ケイ・クロダ

【種族】悪鬼

【職業】捕食者

【称号】邪神アルタリアの加護・咎人

【スキル】捕食・鑑定・再生・迅雷・暗視・邪気

ロロロロロロ


…悪鬼って何ぞ?人間じゃないの?ほかにもいろいろ気になるものがあるな…

とりあえず鑑定を使ってみる。


【悪鬼】…鬼の突然変異。鬼と違って角は持たない。

【捕食者】…魔物を喰らったものがなる職業。

【再生】…時間はかかるが、負った傷が完治するスキル。

【迅雷】…高速で地面を移動するスキル。

【暗視】…暗闇を見通すスキル。常時発動

【邪気】…氣の一種。


おい説明になってないよ

そう思って説明欄に鑑定をかけてみる、実は気になる単語があるとその単語に鑑定をかけることで意味や説明が出てくる。


【鬼】…種族の名称。姿は人族に近いが角が生えており、角の形や本数は個体によって違う。個体数は非常に少ないが戦闘能力が高く、筋力に優れている。

【邪気】…吸収することによって、生物を様々な形に変える。それは個体の種族を変えたり、また突然変異を起こしたりと本当にさまざま。一説では邪神(アルタリア)から溢れ出たものであるという説も。

 ふつうは吸収できないが、特定のスキルを持っていると吸収する。

【氣】…生物が体内で作るエネルギーの名称。鍛錬をすると自在に扱えるようになる。身体能力を上げるものを闘気、アンデット系や魔族の動きを鈍くするものを聖気、魔族や悪しき者が発するものを邪気という。邪気の効果は闘気と同じ。


なるほど…つまり俺の種族が変わったのは邪気を吸収したからなのか、意味わからん、種族が変わるってことは顔の形も変わるよな…俺ってばどんな姿になってんだろ、そういえばそこらへんに湖みたいなのがあったか…


俺は最初に落ちた湖に向かって歩いていく。


…しかし暗視が手に入ったのは幸運だったな。こうして普通に歩けるし、自分の姿も確認できるし。


そんなことを考えていると湖にたどり着いた。


「さーて どんな顔してんのかなー」


さっそく湖を覗き込んでみる、するとそこには髪の色は変わらず黒だが目は赤くなっており蛇のように瞳孔が縦長になっている。耳は少しだけとがっており、犬歯は前より鋭くなっている顔があった。


「…なんか、小説とかで出てくる魔族みたいな顔だな」


…俺鬼だけど


「顔は確認したから次は、スキルだな」


じゃんじゃん使ってみよう、まずは迅雷から。


「【迅雷】」


ビュンッ


「うお、本当に高速で動けんだな、スライムのあの動きは迅雷を使ってたからなのか」


あとニ、三回続けてみる、すると使っていくうちに迅雷の欠点を発見した。


「なるほど…基本縦と横、地面しか移動できないのか、空中で迅雷を使うことはできないと…将棋の飛車みたいだな、お次は…【邪気】」


発動した瞬間、俺の体から禍々しいものが出てきた。


「…なんかこれ、きもいな  身体能力の強化だったか」


軽くその辺の壁を殴ってみる。

ドォォォォォォン!


「すごいな邪気、悪鬼になったせいもあるんだろうけど」


残るのは【再生】と【暗視】か…暗視は常時発動みたいだし確認はいいかな、再生はちょっといいや…怪我しなきゃいけないし。


「さて、確認もあらかたすんだしここにいてもすることはないな、てことで攻略するために動きますか」


そういって俺は歩き出すのだった。



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