記憶の中の記憶。
人は、自分の記憶の一部を失った時、どうなるのか。
まず、戸惑う。
恐らく分かっていた事、理解していた事、知っている事。
その一部を失ったら。
潮がひく様に周りから皆いなくなる。
簡単に。あっと言う間に。
そして、言う。
「嘘じゃないの? 」 「狂言、演技でしょ」
「かまって欲しいだけ」
違うと言えない。
頭の中、心の中を見せられないから。
ちゃんとできるじゃない。
やっぱり嘘だったんだ。
一部のみの記憶欠如。
混乱する頭。
分かってもらえない歯がゆさ。
忘れていない事もある。
でも、入れ替わる記憶。
この先の不安。
ストレスによる心理異常。
出された薬で治療。
つきまとう。
私は嘘つき?
相手にされないから、狂言言ってるだけ。
無理矢理に、自分を探す。
色々探す。
十年前の記憶。
数年前の記憶。
最近の記憶。
蘇る何か。
消えてしまう何か。
自分の気持ちの整理。
文章にあらわすこと。
じゃあ、普通じゃないか。
それは違う。
敢えて文章にする。自分の頭の中を組み立てるため。
リセットして、また組み立てる。
記憶欠如は、記憶のリセット。
新たに自分をあてはめられる。
大事な人の事、思い出など一時的だが失ってしまったけれど、また思い出す時がくる。
そしたら、新しい自分、気持ちで記憶を受け入れられるかも知れない。
普段と変わらない私、日常、時間のながれ。
でも普段と違う私、日常、時間のながれ。
恐怖と不安の中で、あてもなく彷徨う毎日を、過ごすしかない。
私が私に戻すまで。