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星の挽歌  作者: 石井鶫子
【書簡および補足、帝暦一〇〇年以前 2】
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ラウール大公宛書簡主、書簡、補足(3)

写影:共和暦25年2月5日

訳:バート・アネキス

【帝暦無し、日付2月4日 緑公閣下】


 審問をありがとうございました。書記官より転筆が参りまして議事録を拝読いたしました。我々が日々、苦悩とまではゆかぬまでも端々に感じるささやかな屈辱が払拭されたような気がいたします。イ元帥のことだけでなく、漢氏の一人として心より御礼申し上げます。

 その代わりということでもありませんが、以前よりご検討されておった(*1)ルリィの件のご連絡を別便で差し上げるよう手配してございます。終わりましたらご処分をお願いいたしますが、おおかた公のご指定に添うよう努力いたしました。先帝陛下が御崩御あってから既に20年近くを経過しております。潮時ということをそろそろどなたもご理解いただけると感じます。

 小職は公の忠実な手足でございます。どうぞ公のお考えのままお申し付け下さい。カラバグ公よりもシフォングル公よりも、小職が適任と心得ます。

【署名 馬梁桓、虎の紋章印】



【補記、手蹟はケイ・ラウールと同一】

 マレンファンは私の恐らく後継者となるはずである。国家の骨格は私が組んでから逝くが、肉をつけて服を着せるのには時間がない。彼は国の肉が何であり、服が何であるかを理解している。そして私と同じく結論を下した後は振り返っても引き返さない。

 ゆえにこの組合の件が完全に終了したら彼は私の元に戻さなくてはならない。残っている時間がどれくらいなのか私には分からないが、既に五十を越していればそれが多いことはないだろうとは分かる。

 無論ラウールの家はナクハルトが継いでゆくが国家と家門は分けねばならないし、彼は優しすぎる。エスラストのことは懸案で、あれは確かに陛下を堕落させることしかしないのであるが、とはいえ観賞魚を池から出したら死ぬだけで、決して歩き出して歌い出すものではない。引き離すと却っておかしなことになりはしないか心配である。


*1 メルリィの件

 現在のメーリン市。当時から商業流通の中心都市であり人口もほぼ帝都ザクリアと変わらなかった。

 メルリィの総領主ゲルクド公爵の妹は始祖帝の異母弟ユヒト王子の母親である。

 この豊かな経済を背景にもったユヒト王子はかなり発言権の強い旧王族であった。そのためラウール公に特に警戒され、帝暦33年に公開暗殺に到る。

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