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巻の七十八   巫女の姉妹(前)

巻の七十八   巫女の姉妹(前)


 大曲、横手、湯沢と山の中を辿ってきた直也一行は、鳥海山を木の間越しに眺めながら南下を続けていた。

 付近の山々は色付き始め、紅、朱、代赭たいしゃ、芥子色。色とりどりの木々が一行を見送っている。だが直也達の

足取りは遅かった。

「…大丈夫かい、汐見しおみ?」

「…は、はい、申し訳ありません…」

 それは汐見が旅慣れていなかったためである。鬼であった時の力は残っていても、長時間歩くような体力はないらしい。まあ、長の孫娘でもあり、閉鎖された土地で暮らしていれば無理もないが。

 加えて野宿もした事がないというので、寝床の確保にも苦労しているのである。秋の日はつるべ落とし、行動時間も短くなってきていた。

「…もう大分日も傾いてきたな、そろそろ今夜のねぐらを見つけないとな」

 直也が弥生に相談。その弥生は、聞き耳を立てていた。

「どうした、弥生?…何か妖しい気配でも?」

「いや、はっきりはせぬが、悪しき気配ではない」

 そう言って、確認するように弥生は振り返り、

「大丈夫じゃ」

 そう言って微笑んだ。そんな弥生を見て安心した直也達は更に歩を進めた。と、弥生の歩が止まる。

「…割合近くに人の気配があるのう…」

「本当か?…じゃあ集落があるのかな」

 山の中とはいえ、大分人里近くまでやって来ているはずだ。今夜は屋根の下で寝られるかも知れない。

「…おお、あそこに赤い物が見えるのう。…神社の鳥居のようじゃ」

 その言葉の通り、僅か進むと、古びてはいるがしっかりとした造りの神社が建っていた。赤い鳥居は稲荷社である。

「ここに泊めてもらうとするか」

 境内は清潔に掃き清められ、管理が行き届いている。弥生は境内に建つ庁舎(社務所)の戸を叩いた。

「…おかえり、遅かったじゃない」

 そう声がして戸が開き、巫女が姿を見せた。

「…あ、若菜わかなじゃなかったのね。失礼しました…旅の方ですか?」

「うむ、日も暮れてきたので、泊めてはいただけまいか?」

「お一人ですか?」

「…いや、連れが二人おる」

 そう言って弥生は後ろを振り向いた。巫女はその視線を追って、汐見と…直也を見つけ、

「…お断りします」

 冷たい声であった。

「なにゆえ?」

「わけを話す必要はありません。…この先に村がありますのでそこで泊めてもらうといいでしょう」

 そう言って弥生の鼻先で扉を音高く閉めてしまった。あまりの豹変ぶりに何かあるなとは思ったものの、日も暮れてきたので、教えられた村へと向かう一行であった。

「愛想のない巫女でしたね」

 汐見が不満げな声で言う。

「俺達…俺か?…を見て態度が変わった気がしたんだが、何かあるのかな?」

「まあ今は宿を見つけるのが先じゃ、…ほれ、灯りが見えた。あれがその村じゃな」

 そこそこ大きな村だ。察するにもう酒田は近いのであろう。一行は村に入ってすぐの大きな家に宿を乞う事にした。


 そこは村長の家で、一行を快く泊めてくれる事となった。

「まんず、よぐ来たのー。ままどおづけくれしがねぇがろぐだま喰ってけえ」

 村長は直也達を歓迎してくれた。稗混じりの飯と山草の味噌汁であったが、直也と弥生はもちろん、意外な事に汐見も何も言わずに食べている。空腹は最高の調味料、とはよく行ったものだ。ここのところ木の実中心の食事だったから無理もない。

 食事後、笹の葉で作ったお茶が出された。それを飲みながら少し話をする。

「つかぬ事を聞くが、あの神社の…」

「ああ、若菜わかな宮古みやこですかね」

「…泊めてもらおうとしたら突っ慳貪に断られたんですが、何か事情でもあるんですかね?」

 村長は声を落として、

「…んだ、二人のだだちゃ(父親)はあそこの神主だったがね、宮古と二人で酒田へ用足しにえったどぎ、小さな事がもどで手打ちになっただ」

「…そうか、だから侍姿の俺を見て急に態度が硬化したんだな…」

「目の前で父親が手打ちになったのじゃ、無理はないのう」

 直也達も一応納得したのである。

「ばんげなたで、ゆっぐり休んでけ」

 粗末ではあるが布団で寝られるというのは有り難い。汐見は久々の布団、横になるとすぐに寝息を立て始めた。

「汐見も良く付いてきたよな…」

 感心したように直也が言うと、

「うむ。…正直言って、途中で音を上げて引き返すと思うていたが、なかなか芯の強い女子おなごじゃ」

 弥生も感心している。

「さて、我らも寝るとしよう。疲れを取らねばな」

 まだ少し早いが、山の中とて灯りは貴重、早々に寝る事にした。


 直也がうとうとと微睡んだ頃。戸を叩く音に目が覚めた。見れば弥生も目を覚まし、聞き耳を立てている。

 汐見まで半身を起こしていた。

「何事でしょう?」

「…しっ、村長が戸を開けたぞ」

 三人は声を殺し、聞き耳を立てた。

「…どした、宮古?」

「村長さん、…若菜が帰ってこないの。そしてこんな文が投げ込まれたの…」

「どんれ。…こ、これは…!」

「どうすればいいんだろう…」

「んむむ…うぢに旅の人が泊まられてる。相談してみっか?」

 そこまで聞いた時、直也は立ち聞きでは満足できず、障子を開けて上がり口へと出た。弥生と汐見も続く。

「あ、おぎゃぐさん、聞こえたかね、実は…」

 村長が言いかけると宮古はそれを遮って、

「そんな奴らに話さなくっていいわよ」

 宮古はそう言って背を向けた。村長は構わずに、

「こったらもんが投げ入れられたそうで」

 と紙片を差し出した。

「…『妹は預かった、無事に帰して欲しくば神社に伝わる如意宝珠と正宗の刀をよこせ。明日の朝、神社裏の大岩の上に乗せて置くように』…これは…!」

「如意宝珠なんて知らないわよ。それに正宗なんてとうの昔に領主さまに召し上げられたって言うのにさ」

 つまり、この手紙の要求を満たす事は出来ないという事である。それはそのまま、若菜の命が危ないという事。

「若菜さんを攫った奴等はどこにいるんだろう?…心当たりは?」

 宮古の妹、若菜がどこへ行っていたかがわかれば、攫った奴等の居場所も探しやすい。だが直也の問いに宮古は、

「…構わないで。侍なんかに助けて欲しくないわ。侍に頼むくらいなら何もしない方がましよ」

「宮古、おめえ…」

 村長が何か言う前に、

「馬鹿な事を言うな!」

 直也の怒声が響いた。

「な、何よ。…威張っちゃって。侍ってすぐそれなんだから。侍風吹かせば何をしてもいいと思ってんじゃない?」

 ぱんっ。

 乾いた音がして、宮古の頬が張られた。殴ったのは直也である。頬を押さえ、目を丸くする宮古に向かって直也は、

「いいかげんにしろ!…お父さんの事は村長から聞いた。不幸な事だった。…だからといって、妹さんを見殺しにするのか!?…君の意地だけで妹さんを危険な目に遭わせる気か!…だったら君に姉を名乗る資格なんか無い。姉なんてやめちまえ!」

「……」

 そして直也はくるりと宮古に背を向け、

「…やめた。もう聞かない」

 と吐き捨てるように言った。

「え、直也さま…」

 汐見が何か言おうとするのを遮って、

「…俺達は勝手にやらせてもらうさ。…そうだな… 」

 直也は手にしていた小刀を村長に差し出し、

「この刀は正宗ではありませんが、かなりいい刀です。万が一、俺達が間に合わなかった時はこれを岩に乗せて置いて下さい」

 そして弥生に向き直り、

「弥生、如意宝珠ってどんな物だ? 何か代わりになる物はないかな?」

 すると弥生は微笑んで、懐から一つの珠を取り出した。

「まあこれでも渡せばしばらくは誤魔化せるじゃろう」

 そこで直也は村長に、

「それでは俺達はその若菜さんを助けに行ってきます。万が一見つかっても、俺達は旅の者で、この村の人間じゃないから言い逃れられるでしょう。もし朝までに帰らなかったら、その珠と刀で時間を稼いで下さい」

「おぎゃぐさん…わかりましただ」

 村長は頷いて珠と刀を受け取る。直也は弥生に向かって、

「それじゃあ弥生、急いで出かけよう。あまり時間もないし」

「直也さま、あたしもお供します」

 汐見も名乗りを上げる。

「よし、それじゃあ行こう」

 そう言って戸口へ向かう直也の袖を引いた者がある。振り向けば宮古であった。

「…あ…あの…」

 口ごもった宮古は、けれども思い切って、

「…ごめんなさい…若菜は…奥社…北の山へ行っていたんです」

 そしてぺこりと頭を下げ、

「若菜の事…お願いします」

 と言った。直也は頷いて、

「うん、任せてくれ」

 そう言って闇の中へと飛び出していった。


「北の山、か…」

「思えば、ここに来た時に感じた人の気配が、そやつらの物だったかも知れんのう」

 そう言いながら、狐火を灯す弥生。汐見もこれまでの旅の間に、弥生が狐であることを自然に受け入れていた。

 歩くこと一刻、北の山へ近付いた。と、弥生が立ち止まった。

「…この先に大勢いる気配がするのう」

「おそらくそいつらが賊だな」

 直也が応じる。弥生は腕組みをして、

「どうやって助け出すか、じゃな」

「若菜って子が人質だからな」

 その時汐見が、

「あの、…わたくしが旅の者を装って奴等に近付きます。多分わたくしを捕まえ、若菜さんと一緒に閉じこめるか何かするでしょう。縛られた縄くらい、わたくしなら簡単に切れます、頃合を見て若菜さんを助け出します」

「うむ…危険じゃが、若菜に近付くには良い手じゃな。…若菜を見つけたら、儂等に知らせよ。直也と儂で奴等を片づける。そなたは若菜を守ってやるがよい」

 汐見は眉をひそめて、

「でもどうやってお知らせすれば…」

 そこで弥生は髪の毛を一本抜くと、汐見の右手、その薬指に巻き付けた。

「これを切るがよい。それが合図じゃ。…よいか、くれぐれも気をつけるのじゃぞ」

「はい。…それでは直也様、行ってまいります」

 直也は頷いて、

「うん、気をつけてな」

 汐見が闇へ消えた後、直也は弥生に、

「弥生、何で汐見に行かせたんだ?…確かにいい手だけど、弥生の術ならもっと安全に取り戻せるんじゃないか?」

 弥生は笑って、

「ふふ、そうじゃな。…じゃが、汐見、あの娘は、お主の役に立ちたくて仕方がないようじゃ。その気持ちをむげには出来まい?」

「そういうことか…」

 そして二人は闇の中、待機するのであった。

 

 一方、汐見。木の間を透かして見える明かりを目指す。近付いてみればそれはやはり、山賊達の焚き火であった。

「…旅の者でございます、道に迷って途方に暮れております、どうかお助けを」

 そう言って男達に近付いた。男達はいきなり闇の中から人が現れたので一瞬驚いたものの、それが若い女だとわかると、ほくそ笑んで手招きした。

「おお、じぎすんな(遠慮するな)、火のそばさあべ」

 そうして初めは優しくして、粥をすすらせたりしていたが、隙を見ると三人がかりで汐見を捕まえ、縄で縛ってしまった。

 汐見は予想していたので手向かいもせず、大人しくされるがままになっていた。

「よし、あのばっち(女の子)と一緒にころがしとけ」

 案の定、捕まっている若菜と一緒にされるようである。汐見は心の中で読みが当たったことを喜んだ。

「ほれ、おとなしくしとれ」

 奥の暗闇、そこに立つ太い木に、若い娘が縛られている、それが多分若菜であろう。同じ木に汐見も縛り付けられた。

 特に見張りも付けられてはいない。これだけ厳重に縛ってある縄を娘が解いて逃げるとは思っていないのであろう。

 それにしても、と汐見は思う。男達は統制がとれていない。寄せ集まりのようだ。まあ相手が弱いのは良いことであるが。

 ぐったりとしている若菜に向かって、小声で話しかける。

「若菜さん、若菜さん?」

 その声に僅かに首を上げた若菜は、

「…あなた…は?」

「私は汐見。お姉さんに頼まれてあなたを助けに来たの」

 そう言って、汐見は後ろ手に縛られたまま、薬指に巻かれた弥生の髪をもう片方の手で探り当て、それを引き切った。


*   *   *


「直也、行くぞ」

「おう」

 闇の中、弥生が駆ける。直也もその後に続いた。

「何だ? おめら」

 見張りらしい男が誰何したが、弥生が無言で鳩尾みぞおちに拳を叩き込むと、そのまま男はくずおれる。

「あっけないのう、素人のようじゃ」

 そう言いながら奥を睨む弥生。

「一番奥、ぼんやり見えるあの高い木、あそこに縛られているようじゃ。...儂は一足先に行っておる」

 そして弥生は姿を消した。直也は心得たとばかり、

「よし、わかった」

 大刀を抜き、

「山賊共、人質を返して貰いに来た」

 その声に、火の周りにいた十数人が直也の方を見た。

「若僧一人か、ほえづらかぐな」

 そして一斉に打ってかかる。得物は鉈、山刀、棍棒などである。咄嗟に直也は刀を峰打ちに持ち替え、受けて立った。

「ぐえっ」

「ぎゃっ」

「あだっ」

 あっさりと賊を薙ぎ倒していく直也。何とも手応えがない、と直也は思った。

「こ、こいづ…手強いぞ…用心ようずんすろ」

 そう言って遠巻きに取り囲む。だがその格好は、まるでなっていない。直也は心中、苦笑した。

「ぎゃあっ」

 取り囲んでいた男達の一人が悲鳴を上げた。汐見が手にした杖で殴りつけたのである。汐見の杖は一見檜の棒であるが、中には鉄の芯を通してある。それで殴りつけられた男は一撃で気絶した。弥生は若菜を守るように立っている。

 背後から汐見に襲われた男達は完全にうろたえた。好機と、直也も打ってかかる。

 いくらもたたないうちに賊は全員叩き伏せられてしまった。若菜を加えた四人で全員を縛り上げていく。賊は総勢十五名であった。

「ありがとうございます、何とお礼を言ったらいいか…」

 深々と頭を下げる若菜に、

「お礼はいらないよ、それより姉さんが心配している、早く帰った方がいい」

 そんな直也に弥生は、

「直也、こやつらはどうする?」

 と、そろそろ気が付いて身じろぎを始めた賊達を見やった。

「放っておきましょう。狼が始末してくれるでしょう」

 汐見がそう言い放つと、

「…た、助けてくんなせえ…」

「おらたつがわりかっただ...」

「ほんの出来心で…」

 等と口々に叫び出した。直也はその一人、髭面の男に近付くと、

「なぜこんな事をした?」

 と聞いた。その問いに男は、

「…おらたつはもっと東の村の百姓でしただ…」

 と話し出した。


 男の話によると、この一団は、東、つまり陸奥の国の山奥で百姓をしていたが、昨年の日照りで年貢が払えないため、逃散ちょうさんした村の者達だという。しばらくは木の実草の実で食いつないでいたが、冬になって飢え死にしそうになった時、今のお頭に拾われて、今回のような簡単な仕事をするようになった、というのである。

「去年の日照り…」

 それはしずと出会った時のことであろう。あの時、みちのくはひどい旱魃に襲われていたのだった。


 髯男の話をまとめると、「おかしら」と呼ばれる男が、この元百姓の一団を飢えから救い、その代償として山賊働きをさせていた、ということらしい。もっとも山賊としての仕事とは言っても、今回の誘拐の他は、小さな盗みが二件ほどであったようだ。


「そのおかしらという奴を捕まえねばなるまいな 」

「ああ。こんな事をまた他でさせるわけにはいかない」

 頷きあう直也と弥生。そこに汐見が、

「…こいつらはどうします?」

「うん、…逃散ちょうさんしたお百姓ということは…」

 当時、農業生産力の低下を嫌った支配層は、一揆と共に逃散を厳しく取り締まっていた。元の土地にはもう戻れない。

 また、軽いとはいえ、罪を犯したわけであるから、無罪放免というわけにもいかなかった。

「直也様、この者達、わたくしどもの里で預かりましょうか?」

「うん、そうして貰うのが一番いいんだろうが…大変だぞ? この人数を連れて来た道を戻るのは」

 心配する直也に汐見は、

「直也様のお役に立てるのでしたら喜んで」

 そう言って微笑んだ。

「そうか、それなら…」

 と直也が言いかけた時、

「それには及ばぬ。…鉄山てつざん殿、鹿角かづの殿、そこにおられるのじゃろう?」

 と声を掛けた。二人とも、かつての化鬼あだしおにの里で汐見に使えていた剛の者である。

「ええっ!?」

 驚く直也と汐見。彼等の前に、旅姿の鉄山と鹿角が現れた。

「鉄山、鹿角…」

「直也様、汐見様」

 膝を付き、礼をする二人。

「いったいどうして…」

「そなたが心配だったのじゃよ。のう、二人とも」

 弥生が鉄山と鹿角に笑いかける。

「はい、我らは汐見様にお仕えする者、陰ながら見守ろうと…」

「儂にもしばらくは気配を覚らせなんだのは見事じゃ。じゃが昨日はへまをしたのう。汐見が心配じゃったか」

 頭を掻く二人。

「二人とも…わたくしはもう子供ではありません。直也様達と一緒なのですから護衛など必要ないのに…」

 そう言うと、

「はっ、それはわかっておりますが…」

「汐見殿、このお二人にとってそなたはまだまだ世話の必要な子供なのじゃよ」

 弥生に言われ、汐見は顔を赤らめた。が、

「…二人に命じます。この十五人を里に連れて行き、里の者としなさい」

「汐見様、それは…」

 渋る二人に、

「そなた達にしか頼めないのです」

 そう言って頭を下げる汐見。それで二人はようやく承知した。


 元山賊のお百姓衆の処分が決まった今、残るは「おかしら」である。その本拠は不明であるが、今回の仕事が上手くいった時には戦利品を持って、更にこの東にある山の上へ届けるよう指示が出ているという。

「よし、そこへ出向くとしよう」

 夜が明けたら、直也、弥生、汐見、鉄山てつざん鹿角かづのの五人で「おかしら」を捉えに行く事にする。

 その後、鉄山と鹿角はお百姓達を連れて杜人もりびとの里へ帰ると言うことになった。

「それでは、私と鹿角は、このまま山向こうから山頂を目指します」

「うん、俺達は若菜さんを連れ帰ってから向かうよ」

「山頂で落ち合うのは日の出後、二刻後としよう」

 そう簡単に打ち合わせをして、直也、弥生、汐見は若菜を連れて神社へと戻った。若菜は初めは汐見の陰に隠れていたが、帰る道々、段々と話をするようになってきた。

「あの山賊の人達も可哀想な人達だったのですね…」

 優しい心根を覗かせる若菜。そんな彼女に直也は、

「若菜さん、俺の一存で彼等を半ば許してしまったけど、君は…」

 そう言うが、

「いいえ、私も、別にひどいことされたわけでもありませんから、あれで良かったんだと思います。それより、直也さま、その「おかしら」という相手…気をつけて下さいましね」

 そんな気遣いも見せる若菜であった。

 書いていて巫女の姉妹ということでどうしても某柊姉妹が浮かんで仕方なかったです…まあそれほど違和感ない気がしますが。

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